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内向型人間はリーダーに向いているのか【研究から考える】

内向型リーダーシップ開発に着目し、実務家として現場の課題解決に携わりたいと決心してから1か月が経ちました。向き合うライフテーマが決まったばかりのタイミングだけど、「やもっちの念いに共感するよ!」と反応をくださる方が(初対面の方も含めて)想像していたよりも多く、嬉しい気持ちになりました。

欧米の研究ですが、アメリカ人の三分の一から二分の一が内向型であり、沢山の人が "外向型のふり" をしているとのことです(Cain 2013)。この比率については、日本でも同じか、それ以上のことが言えるのかもしれませんね。

内向型リーダーシップ開発の探究に向けた念い・ビジョンは、先週の投稿で書かせていただきましたので、こちらも合わせて見て頂けると嬉しいです。

今回のnoteでは、内向型人間についてどのようなことが明らかになっているのか、研究や書籍を引用しつつ、皆さんと一緒に好奇心の海に飛び込んでみたいと思います!


内向性は生まれつきなのか?

内向的とは、関心が自己の内面に向かう「態度」のことを指します。先日のnoteでも触れたジェローム・ケーガン教授の定義を踏まえると、刺激(社会的な刺激も含む)に対して高反応を示すのが内向型であると言われています。

内向型と外向型とでは、うまく機能するために必要な外部からの刺激のレベルが異なる(Cain 2013)」 - 高反応=既に脳が覚醒しているので、そこまで大きな刺激を必要としないということですね。

先天性の気質は4~5割程度を占め、残りの5~6割は後天的に培われるパーソナリティに付随すると言われています。内向型=静かな人 なのではなく、関心が自己の内面に向かう傾向・好みがあるため、結果的に「静か」「控えめ」「深さにフォーカス」「落ち着いた」「思慮・注意深い」といった "傾向" が見られるとのことです。

また、内向的・外向的は黒か白かのような二元論的なカテゴリーではなく尺度(度合い)であるため、当然全ての内向型が上述の態度を備えている訳ではないとされています。

多くの刺激を必要としないという意味では、例えば自分の話で言うと、実はオープンオフィスが苦手です(笑)。安心できる壁に守られておらず、常に誰かに見られている気がして、実際に予測していないタイミングで話しかけられることもありました。

Cain(2013)によると、オープンオフィスは生産性を減少させ、記憶力の低下や、スタッフの離職率を高めるといった調査もあるようです。刺激が必要な外向型はその限りではないと思いますが、内向型が高い成果を出すうえでは、静けさや、プライバシーも必要なのではないでしょうか。

余談ですが、国別で見ると、フィンランドは内向型が多い国で知られているそうです。前職の同僚がフィンランドに関する書籍を翻訳していることもあって、これを機にフィンランドのことをもっと知ろうと思いました!
“世界一幸せな国”フィンランドの幸福度が高い秘訣はSISU(シス)にある! フィンランド流SISUで逆境を乗り越える力(レジリエンス)を身につけよう! | 株式会社方丈社のプレスリリース (prtimes.jp)

外向性とリーダーシップとの相関関係は大きくない?

内向型に関する研究は心理学が主体になっていますが、経営学やビジネスにも関連する内容として、米・ウォートンスクールの教授、アダム・グラントの発見が興味深かったです。

第一に、「外向性とリーダーシップとの相関関係は大きくない」ということでした(Grant 2013)。状況によって、内向型のリーダーが適切である場合もあれば、外向型のリーダーが適切であるという点において、シェアド・リーダーシップの考え方に近いかもしれませんね。

シェアド・リーダーシップはリーダーシップ論の一つであり、「職場のメンバーが必要なときに必要なリーダーシップを発揮し、誰かがリーダーシップを発揮しているときには、他のメンバーはフォロワーシップに徹するような職場の状態」と定義されています(石川 2016)。

またGrant(2013)が、内向型と営業職のパフォーマンスの関係性について論じている点も興味深かったです。加納(2022)のレビューも参照すると、外向性の度合いと、売上高が逆U字の関係になっていて、営業における圧倒的ローパフォーマーとハイパフォーマーが内向型の傾向にあるとのことでした。

ただし、加納(2022)も注意喚起をしていますが、こちらの調査では内向性の度合いが不明瞭な点や、外向型の仮面を被った内向型の存在にも意識を配る必要があるとのこと。どの研究にも言えることかもしれませんが、鵜呑みには注意したいところですね。

ちなみに、リーダーシップとは直接関係ないかもしれませんが、Cain(2013)によると、うまく "自己表現" ができるかどうかも重要とのことです。シリコンバレーでは、自分自身をうまく表現できない人は、"リーダー" ではなく、"都合の良い労働力"とみなされる(Cain 2013)。これは今後の日本(特に都心部)においても、必要なスキルになる予感がしています。

また、多くの企業活動や研修プログラムでGroup Work*が取り入れられています。*Group Workとは、数人のグループで議論や製作を行い、成果物や結論を作り出す活動を指します。

普段研修講師をしていて感じることでもありますが、Group Workといいつつ、外向型が "Group" のパートを、内向型が "Work"のパートを担当することが多い様に思います。内向型は組織において "都合の良い労働力" として見られていないかどうか、改めて自問する必要がありそうです。

DE&Iと内向型リーダーシップ

以前にジョンソン・エンド・ジョンソンで働いていた時の話ですが、Diversity, Equity & InclusionにおけるEquity(公正)の考えに初めて触れた時に、衝撃を受けたことを今でも覚えています。

Image source: Robert Wood Johnson Foundation

平等(Equality)は、個人の違いは視野に入れず、すべての人に同じものを与えること、公正(Equity)は個人の違いを視野に入れて、目的を達成するために適切なものをそれぞれ与えること、と棲み分けることができます。
DE&I(ダイバーシティ、エクイティ & インクルージョン)多様性を認め合う企業文化 | ジョンソン・エンド・ジョンソン | ジョンソン・エンド・ジョンソン (jnj.co.jp)

女性活用推進や、ハンディキャップを抱えている方だけでなく、内向性・外向性といったテーマにおいても、参考にできることがあるかもしれません。

冒頭でも触れましたが、一般的に外向型は刺激を必要とし、内向型は刺激を避けようとする傾向にあります。そのような "個人の違い" がある中で、"平等" にリーダーシップ開発を行うこと、一律にタレントマネジメントを行うことは、果たしてフェアなのでしょうか。

リーダーの立場にいる人は、日々多くの刺激に晒されます。その刺激を欲する人と、その刺激を負担に感じる人が平場の勝負を行った場合、どのような不都合が考えられるでしょうか。

公平なリーダーシップ開発とは何か。内向型を外向型に変えることを是にするのではなく、内向型がコンフォートゾーンを抜けて効果的なリーダーシップを発揮するとはどういうことなのか。HINOEで向き合いたい命題です。

内向型人間はリーダーに向いているのか?

最後に、本記事のタイトルである「内向型人間はリーダーに向いているのか」という問いについて、持論を述べたいと思います。

リーダーの定義・職務記述書の内容、"向き" "不向き"の定義に当然よりますが、内向型人間は素晴らしいリーダーになれますし、効果的なリーダーシップを発揮することができると考えています。

リーダーを決めること、リーダーシップの発揮そのものは "目的" ではなく、組織やチームが目標を達成するために必要な "手段" ではないでしょうか。目標に向けてメンバーに働きかけ、能動的な心理状態やアクションを引き出すことは、外向・内向に関わらず可能なことです。

私たちのビジネス環境はとても複雑です。外向型のリーダーシップスタイルが歓迎される会社もありますし、日本国内では問題なくても、グローバルの環境下で「頼りない」「なぜ会議で発言しないのか」「社交性が低い」と一方的に判断されてしまうこともあります。そこに多様な人材をマネジメントする(時には英語を必要とする)といった変数も加わると、コンフォートゾーンを超えて働きかけるということは、(外向型であれ内向型であれ)とても負荷がかかることです。

一部の目立つ優秀な人だけでなく、一見大人しいけど優秀な人にも光を当て、組織・チームが認知型ダイバーシティを経営インパクトに繋げられているような、そのような経営環境の実現に向けて、皆さんと一緒に頑張りたいと思います。


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