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振り向いたら座敷わらし【第一話】

はてさていつからだろう。
会社をでた直後か?それとも帰り道の途中で寄ったコンビニでか?
まさかこんなことになっているなんて。

私の後ろに座敷わらしがついてきたのである。

会社からの帰宅途中、後ろから人の気配がして、なんだかずっと気配を感じるなぁと振り向いてみたら、年は5、6才ほどの子供がちょこんと立っていた。
一瞬思考が停止して、少しの間二人して見つめあってしまった。その子の目は何だか不思議な感じがして、そのまま吸い込まれてしまいそうだった。

ハッとして取り敢えず話し掛けた。
「君、お名前は?」
「座敷わらし。」
また思考が停止してしまった。いったいこの子は何を言っているのだろうと。
「座敷わらしって…あの…座敷わらし?」
座敷わらしはコクンと頷いた。
(座敷わらしって…え、えー…)
私はどうすればいいんだと途方にくれてしまった。

迷子を見つけたときに行くべきところはどこだろう?正解は交番である。丁度近くに交番があったのでそこに行くことにした。
「どうされました?」
「この子迷子らしいんですけど…」
「この子ですか…。どの子ですか?」
お巡りさんは不思議そうにこちらを見ている。
「だからこの子ですってば。この子。」
私は自称座敷わらしが立っている場所を指差した。
お巡りさんの表情が怪訝な表情に変わっていき、ため息を一つついた。
「あのねぇ。警察も暇じゃないんですから遊びに付き合ってる暇はないんですよ。」
私は言葉を失ってしまった。もしかしてもしかしたらこの子のことが見えない?まさか本物の座敷わらし?
私は座敷わらしの方を見ると、座敷わらしはコクンと頷いた。
「もう気はすんだでしょ。ほら、帰った帰った!」
結局追い出されてしまい、私は暫し呆然としてしまった。

座敷わらしが私についてきている…。私は何故か咄嗟に会社のマニュアルを思い出していたが、勿論座敷わらしがついてきた時のマニュアルなどあるわけもなかった。
「と、とりあえずうち来る?」
座敷わらしはまたコクンと頷いた。

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