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『あぁ寒さが身に染みる、日野RDがミス、反則連発で今季初黒星』

 油断大敵である。これまでの両チームの試合ぶりから、「今日は絶対、勝つ」と日野関係者は自信の笑顔を浮かべていた。

 だが、勝負に絶対はない。それこそ、前節で花園近鉄ライナーズに敗北していた三重ホンダヒートは激しい闘志でかかってきた。とくにトンガ王国出身のNO8、ヴィリアミ・アフ・カイポウリの気概たるや。

 そういえば、試合前、日野のCTB、トンガ・モセセらトンガ王国出身者が、赤色のトンガ国旗を一緒に掲げてグラウンドに入場してきた。海底火山の大規模噴火で被害を受けたトンガ王国に連帯を示すためだった。

トンガ国旗を掲げる選手たち

 さて、試合である。日野は、ホンダの圧力にハンドリングミスを続発した。押し込まれるから、どうしてもタックルした選手がその場から離れないノットロールアウェイなどのペナルティーも犯してしまう。

 試合後のオンライン会見。箕内ヘッドコーチ(HC)は「非常に残念な試合だったと思います」と声を落とした。

 「80分を通して、自分たちのミスであったり、ペナルティーであったりをして、最終的に、自分たちで(首を)絞めてしまった」

 試合としては、強みであるスクラム、ラインアウトを軸とし、キックで陣地を稼ぎ、相手スペースを見つけてはトライをとりにいく『アタック・ザ・スペース』を目指した。箕内HCは「とくに接点のところに注力してきました」と漏らした。

 実は、ホンダも接点勝負を狙っていた。昨季までトップリーグでもまれていたチーム同士だもの、ブレイクダウンは激しさを増した。勢いは互角。ただ日野はペナルティーを何度もとられた。レフリングとの相性も悪かった。

コンタクトエリアで激しく身体を当てるアッシュ選手

 「ノーペナ! ノーペナ!」

ノーペナ(ノーペナルティー)との選手の声が寒風に乗ってスタンドの記者席まで届いてきた。つまり、選手も注意していたようだ。だが、結局、ペナルティーの数は相手(8)の倍の16を数えた。ひと言でいえば、ディシプリン(規律)の問題だった。

箕内HCも規律不足を嘆いた。

「反則の繰り返しであったり、ハイタックルであったり…。もちろんチームとして、規律という部分については、練習の中からも、ミーティングを含めて、話してきました。今日の試合に対しても、ミスを少なくしていこうとも。でも、こんな形になってしまって」

結局、イエローカードによるシンビン(10分間の一時的退場)は2人出た。ハイタックルと反則の繰り返しだった。80分間のうち、4分の1の20分間は数的不利な状況での戦いを強いられたことになる。その20分の間に2つのトライを奪われたのだった。

確かにディシプリンを徹底するのは難しい。だが、選手全員が戦術の共通理解を深め、意識を高めればペナルティーも少なくすることができよう。大事なことは、この敗戦から何を学ぶのかである。もちろん、「勝って反省」は理想だが、チームや人は、いつかは負ける。そこで、どうするか。

堀江恭佑キャプテンは「勝ちにいったんで、結果は残念ですけど」と語気を強めた。

「まだリーグも始まったばかりですし、これからも試合があるので、これ(敗戦)がまた成長するきっかけになるんじゃないか、いや、しないといけないなと思います」

とくに反省点として、スクラム、ラインアウトの改善を挙げた。

試合後記者会見の様子

ところで、この日は日野自動車の小木曽聡社長が今季初めて応援に駆け付けた。黒色のコートの下には日野カラーの赤色のウエアを着こんでいた。熱心に試合を見つめていた。ありがたいことだ。

ただ、遠路はるばるラグビー場に駆け付けた日野ファンにとっては、寒さが一層身に染みたのではなかろうか。

(TEXT BY 松瀬学)

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