雲の上、空の下〜Part2〜


前回のお話は上で見られます。以下、前回の続きです。

1. 雲の下

 バスが速度を落としたときに感じる慣性力で目を覚ました。高速道路を降りると、降車のアナウンスがあった。僕は目的地の成田空港第二ビルで降り、身軽な小さなスーツケースを引きずりながら中へと入っていく。成田空港へは帰省をするときによく利用するが、国際線はめったにこない。空港の中は、同じ日本の建物とは思えないほど綺麗で、照明も明るく、光が上からも下からもスポットライトのように当たり、目がチカチカした。入口近くの電光掲示板を見ると、僕が搭乗する予定の便のチェックインはもう始まっていた。自動チェックイン機でチェックインしようと思い、操作してみたが上手くできず、結局カウンターまで行った。グランドスタッフにパスポートを見せ、預入荷物に危険物が入っていないか、ビザを取得しているか、滞在先はどこだ、行き先はどこだなど色々と事細かに聞かれたら、無事搭乗券を手にできた。もう既に、沢山のことを聞かれたので出国審査をした気分である。搭乗開始時刻まで二時間あったが、特にすることもないので保安検査場へと進む。空港内は平日だからか、人はまばらであった。大きなスーツケースを持って歩いている人もいれば、空港名物の大きなスーツケース用のカートに、これもまた僕は空港でしか見たことがない大きなスーツケースを何個も積み上げて移動している人もいれば、対象的に僕みたいにリュックサック一個で移動している人もいた。人の数はまばらであったが、それでも時々人と対峙してしまったときには、僕の周りのみんながお互いにぶつからないように、言葉を一言も交わさず、お互いの進む方向を姿勢だけで主張していた。一方で人がそれほど多くもないのにも関わらず、自分の行く方向を主張できないでいる僕は、時々人とぶつかりそうになり、申し訳なく顔を伏せるので、すぐ後ろの人と目を合わせることができず、またぶつかりそうになる。僕は、人混みを縫うように進むのが苦手だ。東京駅のような、人が多い場所では誰かが進むべき道を作ってくれるので、前の人についていくだけで良い。しかし、こうも人がまばらであると、自分の道は自分で作らなくてはいけない。それは、僕が人生において最も苦手なことの一つであった。大人になればなるほど、周りにいる同世代の人間は少なくなり、最終的には一人になってしまうのだ。そのときに自分で自分の進む方向を見つけ、周りの人とぶつからずに、上手くすり抜けられるかはとても重要なことであると思う。たとえ、ぶつかったとしても謝って済ませるのか、逆ギレするか、はたまたガチンコ勝負するのかも、とても重要なことであると思う。保安検査場までに敷かれたレールの上に乗ると、どこかホッとする自分がいた。

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