高野山(2)
高野山に向かって登り始めたケーブルカーの車内を、黄色いチョウは、ひらひらと頼りなげに飛び回りました。
スイス製の車体の、大きくうがたれた窓に何度もタッチ・アンド・ゴーしながら、高低差328メートルの天空を目指して移動していきます。
ご婦人が、小さく開かれた窓の方向にチョウを誘導します。けれどチョウはいつまでも、内と外の間で難渋しています。
すぐそこの出口に気付けないチョウは、どこか私たちのようで、私たちは、もどかしくそれを眺めていました。「うまくいかんねぇ」。ご婦人もいいました。
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