見出し画像

今年の5冊目

今年の5冊目、三崎亜記著『となり町戦争』、読みました。

舞坂町が「公共事業」としてとなり町と戦争を始めます。町民は、そのことを役場の広報で知らされます。でも、町にはこれといった変化がありません。 

そのうち、広報の中にある「町勢概況」の死亡(数)の項目の後に「(うち戦死者○人)」が加わり、その数は、広報の度に増えていきます。

戦争が起きている実感を持てない中で、どこかで誰かが「戦死」していく不穏さ。それは、最近の新規感染者数、重症者数や死者数に重なります。

三面記事に毎日並ぶ数に慣らされてしまった私たちは、まるで株価か気温のようにその変動を眺めます。数の羅列の向こうにある戦場には思いを寄せられずに。

見知らぬ人の笑顔も 見知らぬ人の暮らしも
失われても泣かないだろう 見知らぬ人のことならば
ままにならない日々の怒りを 物に当たる幼な児のように
物も人も同じに扱ってしまう 見知らぬ人のことならば
ならば見知れ 見知らぬ人の命を
思い知るまで見知れ
顔のない街の中で
顔のない国の中で
顔のない世界の中で
(中島みゆき“顔のない街の中で”)


この記事が参加している募集

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。何らか反響をいただければ、次の記事への糧になります。