#2106227
「新社会人おめでとう」。ベッドで寝返りを打ちながら、昔、入社式でいわれた言葉を思い出す。明日、目覚めた自分はもう、「社会人」ではないんだナ、と。
定年後の居場所探しという、ありがちな難問を解く本には、「外に何かがあると探すのではなく、自分の今までの人生と向き合う中に答えがある」とあった。
自分の、今までの人生。ページを遡ってはみても、それらしい答えはない。漠漠とした気持ちで本にしおりをして、それでも明日に備える。
丁寧な下書き。それがこの一生だと思えば、何だかそれも悪くない。眠りの沼にはまりながら、Kさんは、そう夢想していた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。何らか反響をいただければ、次の記事への糧になります。