韓国グルメ「へジャングッ」二日酔い解消
※2023年8月にOFUSEにて配信されたコラムを編集し再掲したものです。
”楽園楽器商店街/ナゴンアッキサンガ / 낙원악기상가”を出たあとは食事。
(前回の記事はこちらから)
鐘路3街駅の街並み
”鐘路3街駅/チョンノサムガ/종로3가 “の周りは歴史ある街並みと再開発された場所が入り混じっていて不思議な雰囲気がある。
散歩をしていてフラッと偶然で来る場所というよりは、情報を知っていてここををめがけて行くところのように感じた。
大通りにはオシャレなカフェやホテルもあり、路地に入るとスンデクッパ横丁や屋台街、焼肉通りなど飲食店もたくさん。
タプコル公園周辺
僕が歩いたタプコル公園の周辺で目にするのは御年配の方が多かった。
路上に椅子を持ってきて座ってたり、タバコを吸ってたり…とかなり自由な雰囲気。
公園の周りにズラーっとテーブルが置かれていてみんな日向ぼっこをしてたり将棋を指していたり。
青空将棋は日本ではもうあまり見かけない光景だ。
ルールを知っていたらやってみたかった。
カメラを向けられなかったから写真は無いけど、何組も対戦していて周りを何十人もが取り囲む。
勝負手のときは声を出しながらパシーン!と指していた。
周りも指し手を見てオォー!とか唸る。
とても賑やかで楽しそうだった。
韓国の1000円カット(?)
さらに周辺には床屋がたくさん。
日本で言うところの”1000円カット”みたいな雰囲気。
6000wの床屋さんがたくさんあった。
おそらくちょっと前までは5000wだったんじゃないだろうか。
日本も今は1200円など値上がりしているし。
この地域は食事も安くて日本でいうワンコインランチ的な店が多い。
昔からやってる老舗もたくさんある。
店先に豚の頭をたくさん積んでる店が連なっているところは豚骨ラーメンみたいな匂いがしたから、きっと鍋料理みたいなのを食べさせる店なんじゃないかなとか想像したりしながら歩く。
(調べていて知ったがここがスンデクッパ横丁だったようだ)
どこの店も美味そうだった。
しかし僕にはお目当てがある。
本題”噂の家”の酔い覚ましスープ
前置きが長くなってしまったがここからが本題。
せっかく楽園楽器商店街に行くのだから、食事もディープなところに行ってみようと色々と調べた。
ネットで探したところ日本語メニュー無しの現地の人でもおじいさん達しか行かないような渋い店を見つけた。
それが”噂の家/ソムンナンジッ / 소문난집”だ。
創業60年以上の老舗食堂。
まず店の名前からしてすごい。
“噂の家”だ。
おそらく最初は店名なんて無かったのではないだろうか。
スープを出すのが評判になりあの店とかあそこの店とか呼ばれていて、自然と周りで噂になっていって…
ならばそのまま“噂の家”って名前でいいか!
みたいな。そんな気がする。
営業時間
営業時間は
朝4:30から夜22:00(ネット情報)
までとかなり長い
僕が行った時は
男性率100%
御年配率も100%
ほぼ1人客
だった。
ファッションも市場や釣り場にいるような雰囲気の方が多い。
僕はそういうファッションのおじいちゃんすごく好きだ。
メニューは1つだけ
老舗で朝早くから夜遅くまでやってるがメインメニューはなんと1つしかない。他メニューは目玉焼きがあるのみ。
そのため入店したら勝手に料理が運ばれてくる。
(ご飯大盛りが欲しい場合は”大盛り”と言いながら入店するらしい)
まず出てくるのが店先の大鍋でグツグツ煮込まれている”へジャングッ”と呼ばれるスープ。
和訳すると”酔い覚まし”や”二日酔い解消”という意味らしい。
それと”カクトゥギ”と呼ばれる大根のキムチ。
そして白ごはん。
提供されるのはその3つのみ。
あとは卓上に塩と唐辛子があるだけ。
飲んだ帰りや二日酔いの朝にサッと食べる食事なのだろう。
潔いメニューでたまらない。
へジャングッの具には”ウゴジ”と呼ばれる白菜を乾燥させたものや”シレギッ”と呼ばれる大根の葉っぱを乾燥させたものが入っている。それと豆腐が2欠片。
店先に大量の大根が積まれていた。
葉っぱはスープに入れ、実の部分はカクトゥギに使うのだろう。
(右に見える”オモニ/お母さん”が大きな鍋からスープを注いで持ってきてくれる)
汁にご飯を入れて食べる。
大根キムチを合間にかじる。
見た目はサッパリした薄味そうな雰囲気だがおそらく動物系であろう出汁がしっかり効いていて辛味もありとても美味しい。
卓上に塩があるが絶妙な塩加減なので使う必要はなかった。
量もたっぷりとある。
値段はなんと約300円
ちなみに値段は3000wだった。
コロナ前は2000wだったらしい。
つまり200円〜300円くらいと超激安価格。
日本ではまず見た事がない価格だ。
牛丼チェーン店やマクドナルドなどにモーニングメニューでそういう価格帯の料理もあるが、1から調理されたものはおそらく無い。
一番近しい業態は駅構内にある立ち食い蕎麦屋さんだと思うが、天ぷらなどのトッピングメニューが豊富だしカレーライスやカツ丼なども置いているので雰囲気はだいぶ違う。
お酒は自己申告
ちなみに酒が飲みたければマッコリ(ドブロク)やチャミスル(焼酎)が冷蔵庫に置いてあり勝手に取って飲んで良いらしい。
後から自己申告でお金を払う。
汁とご飯と漬物だけで大ボトルのマッコリを1人で飲むってかなり上級者向けだ。
でも飲んでるおじいちゃんは結構いた。かっこいいなあ。
キムチの味
かなり酸っぱめで塩分控えめなカクトゥギもすごくよかった。
滞在中に様々な店でキムチを食べたがどこも美味しかった。
そういう店を選んで入っていたのもあるが、韓国には専門店が多くて日本にある韓国料理店のように焼肉もチャーハンもうどんもチヂミも海苔巻きもフライドチキンも置いているファミレス的なお店は少ない。
なので鶏の出汁が自慢なら早朝から煮込んでいるその出汁にうどんかご飯を入れるの2択しかない店や、タッカンマリしか置いてない、生肉しかない店など。
前回も書いたがレバ刺し&ユッケ屋さんでは焼肉はやっていないのです。
日本人からすると不思議だけど、焼くメニューは無くてひたすら生肉だけを食べて酒を飲む。
1つの店で扱ってるメニューが少ないのです。
そうなるとそのメイン料理に合うようにキムチの味も調整されているわけです。
日本でスーパーマーケットに並んでいたり、チェーン展開しているところのキムチだと何にでも合うようにしてあるので基本的に旨味が強く、あとは甘めか辛めくらいの違いくらいしかない。
単体でも美味いように作られている雰囲気というか。
それはそれで素晴らしい。
しかし韓国の飲食店で食べたキムチは料理が濃い店はサッパリ目で酸っぱかったり、逆に薄い店はニンニクが効いた味付けになってたり。
副菜たちがその場所でその味で出てくることに意味があるようにチューニングされているように思えた。
優しい対応
店内にクーラーがないのと汁がジワジワと辛いのもあって水が飲みたいのだがシステムがわからない。
ウォーターサーバーがあるのだがコップが見当たらず困っていたら店員さんが
“ムル?”
と聞いてきてムルが”水”を意味する単語なのは知っていたので
“ネー ムル チュセヨ(そうです。水をください)”
で無事にもらえた。
僕からすると取り皿にしか見えていなかったカクトゥギが入っていたのと同じような平たい白い皿が水入れだったようで、それに注いでもってきてくれた。
なるほど、これが文化の違いかと感じた。
そして水を持ってきてくれたあとマシンガントークしてくれたのだが、韓国語がわからないので全く理解できず。。
たぶんだけど外国人なんて滅多に来ないから
“なんでこの店に入ってきた?どこからきた?味は口に合うか?辛くないか?量は大丈夫か?他に必要なものはあるか?”
みたいなことを聞いてくれたんだと思う。
なんと答えていいかわからず返答に困っていると
”ケンチャナヨ?”
と聞いてきて
それが”大丈夫”という意味なのは知っていたので
“ケンチャナヨ(大丈夫だよ)!”と返したらニコニコして去っていった。
お会計して帰る時に日本語で
”美味しかったです”
と言ったら
”オイシカタ”
とニコニコしておうむ返ししてくれた。
以上、噂の家で朝食を食べた話しでした。
人にすごくオススメするかって言われたら難しいけれど、僕は素敵なお店だと思った。
また行きたいし、ずっとあって欲しい。
あともっと値上げして良いと思う。
ブラザー、シスター、楽園ここにあり。
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