退去費用、6万円取り返した話③リサーチ

前回までのやり取りで協議(のつもりだった)が平行線をたどり、ブッダ(管理会社の担当者)との戦いを決意した私。まずは先方の主張の何がおかしいのか、色々と調べました。

原状回復費用の問題点

以前の記事にも書きましたが、請求された原状回復費用や先方の主張について、ここはおかしいだろ、という部分をチェックしました。ちなみに、主に参考にした情報源、窓口は以下の通りです。

1.国交省の出しているガイドライン(原状回復をめぐるトラブルとガイドライン)

2.消費生活センター

3.弁護士の無料相談(消費生活センターから紹介:自治体と連携)

4.司法書士の無料相談

5.宅建協会 一般相談窓口(事業者用ですが、是正要望ということで問い合わせ)

※賃貸人、管理会社、大家、オーナーなどは全て「大家」、賃借人、入居者は「入居者」に統一しています。

ルームクリーニング:44,000円

個人の見解:契約書には書いてあるので払わざるを得ないかもしれないが、事前に金額がわからず、いくらでも請求できるような形になっているのはおかしい。金額の交渉余地くらいはあるかも?

・賃貸借契約書の特約事項に「退去時、室内のクリーニングは入居者の負担とする」との記載あり

・ガイドライン:本来、ルームクリーニングは大家側が負担すべきもの。あくまでも次の入居者を募集するために行うもので、入居者は通常の使用の範囲を超えた汚損でなければ、負担義務はない。事前に金額の定めがなければ、クリーニング費用の請求を無効とする判例もあり。

・消費生活センター:金額は妥当なものなので、払ったらどうか?(個人的な考えを伝えたところ)不当だと主張することはできるが、当事者間で解決するほかに手段がない。最終的には訴訟となる。

・弁護士:事前に金額の明示が無ければ無効

ちょっと見解が割れたものの、「え?払わないでも済むかも?」というのがまずは驚き。金額が一番大きいので、これが認められるならかなり大きいですよね?

エアコンクリーニング:5,500円

当初の個人的見解:立ち合いの際には提示されず、後出しなので拒否できるのではないか?そもそも、エアコンは2台あり、1台は自費でクリーニングし、もう1台は退去数か月前に新品に入れ替えている(大家側にも連絡済み)。どちらにしてもクリーニング代を取るのは筋違い。

ガイドライン:大家が次の入居者のために行うものであり、入居者に負担の義務はなし(通常損耗を超える場合は賃借人の過失を認める場合がある)

消費生活センター:大家と話すか、それが無理なら訴訟するしかない

弁護士:大家が、「後から調べたら問題があったのだから、これは請求できる」と言えばそこは反論できない。ただし「こちらは汚した覚えはない」と言えば、大家側に立証責任がある。

クロス張替:7,920円

個人の見解:経年劣化分を差し引いた金額しか負担する義務はない。新品価格を請求されているので金額は下がるはず。また、私たちが入居した際にすでに古かった可能性もあり、そちらも起算時期を明確にしなければ請求できないはず。

ガイドライン:クロスは新品の価値が年数に比例して減少し、6年で価値が1円になるので、経過年数を差し引いた金額が入居者負担分となる。また、張替が必要な最低限の面積のみ請求することが望ましい。

消費生活センター:経年劣化は主張できるのはないか

弁護士:写真で確認し、次の入居者が不快に感じるレベルか、本当に張替が必要な面積のみ請求されているかを大家側が証明する必要がある。ただし、入居者の過失であれば経年劣化は考慮されない。


・クロス洗浄:3,300円

個人の見解:たばこのヤニが原因ということであれば入居者には負担責任なし。

ガイドライン:合致するような記述はなし。ただし、室内の汚れという考えに立つと、通常損耗であればルームクリーニングと同様、大家の負担になると類推できそう。

弁護士:算出根拠、負担の根拠とも不明なので入居者が負担する義務はない

・賃貸借契約の特約について

ちょっと面白い指摘があったので、こちらも書いておこうと思います。

問題になったのは以下の2点。

・退去時のルームクリーニングは入居者が負担する(個別の項目でも書きましたが)

・室内状況を確認後、原状回復負担割合を大家または大家の指定する者が決定する

弁護士:そもそも入居者に不利な内容なので無効。クリーニング費用についても他の費用についても、無条件で大家が支払い金額を決定できるような一方的な契約は、無効を主張できる。

ガイドライン:本来の責任範囲を超える義務を入居者に課す特約の場合、以下3件の要件を満たしていなければ、裁判で争点になる場合もある(全体を意訳しています)

①特約の必然性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること

②賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること

「契約書に書いてあるから」は、通用しないこともあるんですね。個人的には目からウロコでした。

また、なんだかんだで「すべての項目について、無効または金額を減ずる主張ができる」ことが分かりました。とはいえ、この時点では「争う余地がある」という感触だったので、ひとまずこれでブッダにもう一度話し、見直しをさせてやろうという程度の気持ちでした。

各窓口に相談した感想

色々な窓口に相談したので、さらっとですが各窓口に相談した感想、長所、短所をまとめました。

消費生活センター

ひとまずまっさきに相談したのがこちら。ただ、転居した時に住んでいる自治体も変わってしまい、なぜか転居後の市の窓口に相談することに。担当者からすると自分の自治体とは無関係な案件なので、なんか気が乗らない様子でした。そりゃそうでしょ、と納得。

とはいえ一通り話は聞いてくれて、さらなる相談窓口はいくつか紹介してくれました。また、今回のような相談事は一般的で、残念ながらこの手のトラブルは昔からあるとのこと。自分の抱えている問題について、一般的な見方を知ることができたということは良かったと思います。

残念なところは、この窓口がトラブルの解決に乗り出してくれることはないということ。現場を見ているわけでもないので一般論でしかコメントできないし、管理会社との間に入って仲裁をしてくれるわけでもない。

最後には「何とかしたければ訴訟しかない」という結論になり、「んなことは分かってるんじゃ!」と思ったり思わなかったり。

弁護士の無料相談

一番期待が大きかったが、一番がっかりした窓口。結論から言うと、ガイドラインにまとめられた内容を超えるアドバイスはなく、有料で頼んだら間違いなく弁護士費用の方が高くつくのが分かりました。当たり前ですが、こういう高級職に仕事を頼むレベルの話じゃないんですよね。

役に立ったのは、少額訴訟の方法について教えてもらえたこと。ある程度の価格感や段取りのイメージを聞き、もう少し自分で動いてみようと思えました。

司法書士の無料相談

弁護士よりもやる気がなかった。基本的に無料では大したことを答えてくれず、電話でのやり取りだったので弁護士の時(こちらは直に面談した)ほど話がスムーズに伝わらず、特に見るべきところもなく終了。

宅建協会の一般相談窓口

まあこちらも筋違いだったので仕方ないかもしれませんが、ここが一番対応がひどかった。最後まで話を聞かず、「お宅はそれでどうしたいんですか?うちは管理会社に連絡はとれないし、何も強制力のあることはできませんよ?」で終了。クレームを入れるという主旨自体が通じず、敢え無く退散しました。

次回、ちょっと短くなると思いますがブッダとの第1ラウンドをお送りします!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?