退去費用、6万円取り返した話④第1ラウンド

前回は、地味~に下調べした内容だけだったので、今回はヤツとの第1ラウンドについて書きたいと思います。

色々と調べた結果、「やっぱブッダおかしいわ。ちゃんと証拠も含めて叩きつけたろ。そうすりゃさすがに考え直すでしょ」と決意を固めた私。さっそく、今回の件について「専門家にも話を聞いたので、きちんと話し合いましょう」と申し入れました。

会場はブッダの勤務する管理会社事務所。基本的にはガイドラインに則って主張するのが通りも良かろうと思い、今までこまごまとやり取りしていたメール、ガイドラインで該当する部分をプリントアウトして出向きました。

事務所に入ったら電話中だったブッダ。私は小さな事務所のカウンターに座り、プリントアウトと、説明する内容のメモを出して見直しながら電話が終わるのを待ちます。

ほどなく電話を終えたブッダ。いよいよブッダと求道者との問答の開幕です。

まずは話し合いの前提を確認。

私:今回の話し合いは、お互いの見解が食い違う部分について、双方の主張の根拠を明確にしたうえで解決を図るものです。まず、議論がある点については、同様のトラブルに関する指針をまとめた「ガイドライン」に則って話し合う、ということを大前提と考えていますが、それでよろしいですか?

ブッダ:まあ私としては、契約書の特約事項に沿って考えていまして、ガイドラインは無視はできないけれど、それが全てとは思っていません。

私:(あれ?さっそくピンボケ?)ブッダさんが契約書、特に特約を前提と考えていることは分かりましたが、少なくとも契約で細かな定めがない部分はガイドラインに沿って協議するということでいいですよね?

ブッダ:いや、ガイドラインが絶対ではありませんし、全てではないんですよ

私:(やばい。さっそく絶望感)じゃあ私もガイドラインは無視して自分の希望を全て要求しますがよろしいですね?

ブッダ:それはダメです(だから根拠をさぁ・・・)

私:(落ち着け、落ち着け)お互い話す根拠をはっきりさせましょうよ。ブッダさんのおっしゃる契約、特約については分かりましたが、そもそも契約書の内容にも問題があることが分かりましたのでそのこともお話しします。また、契約書で具体的に取り決めていない部分があるからこうして食い違いが出ていることをまず認識してください。

今回、契約の記載だけでカバーできない部分はガイドラインを参照すれば一般的な回答が導けることは確認しています。ガイドラインの話になると「それが絶対ではない」で話をはぐらかされてますが、じゃあ何を根拠にするんですか?まさかご自身の主観ではありませんよね?

ブッダ:じゃあガイドラインに則るってことでいいです(いいんかい!!!)でも特約が優先します。

はあ。前提で、さっそくつまずく禅問答。

ここからは綺麗に議論にできなかったので、可能な限り論点をまとめて箇条書きにしました。実際には小一時間ギャーギャー言い合ってたんですが、再現に堪えないのでまとめということでお許し下さい。

契約書、特約について

すでに説明している内容ですが改めて。特約事項は以下の2点です。

・退去時のルームクリーニングは入居者が負担する

・退去後の室内状況を確認後、原状回復負担割合を大家側が決定する

私:そもそもこの定め自体が入居者に一方的な不利益を強いる内容であり、本来は無効。具体的な費用項目や金額についての取り決めがないため、実効性もない。

ブッダ:特約に(クリーニングも原状回復も)入居者が負担すると定められているので、それが全て。

ルームクリーニングについて(44,000円)

私:事前に費用が具体的に定められていない場合は、特約で定めていても、入居者に負担を強いることはできない。

ルームクリーニング費用は大家側が負担すべきもので、今回の特約は入居者の利益を不当に制限する内容で、無効を主張できる。

※正直、私も契約の内容は見ているので、今この話を蒸し返さなくてもいいと思っているが、契約書に書いてあるからすべてが正しい、という考えは成り立たないことをまず自覚してください、とこの時は説明しました(この時は本当にそう思ってた)。

ブッダ:クリーニング費用は入居者の負担と特約に書いてあるんだから正当だ。あなたも契約書を読んでサインしたはず。

金額は退去時にならないとわからないから事前の定めはできない。

ガイドラインにも事前に金額を「決めなければならない」とは書いていない。

金額は妥当なものだ。私はそう思っている!(1回目)

敷金の額を超えていないのだから正当だ(これ、後で解説します)

クロスの費用について(7,920円)

私:減価償却分(6年で残価が1円)を差し引いた分が入居者の負担分になるはず。私たちの入居年数は(会社契約と個人契約合わせて)5年以上になる。

減価償却の起算点は壁紙を購入した時点、それが確認できないならば少なくとも壁に設置した時点とすべきであって、今回は新品価格を請求されているのでこれはおかしい。

ブッダ:減価償却は入居年数で決める。新品かどうかは関係ない(でも請求額は新品の価格)

本当に貼り換えが必要な面積しか請求していないから正当だ。私はそう考えている!!(2回目)

(私が入居した時点で)クロスは新品ではなかったが、いつ貼り換えたかわからないんだから年数も計算できない。だから減価償却はしない(このセリフと同時に、私の脳ミソが沸騰する音が聞こえました)

特約で、原状回復の負担割合を大家側が決める旨を定めているから減価償却は考慮しない。

ガイドラインは強制ではない。特約が優先する(以下ループ)

この価格は不当に高くはないから正当だ。私はそう考えている!!!(3回目)

エアコンクリーニング(5,500円)

私:立ち合いの際にこの項目は提示されなかったのだからそもそも原状回復に含まれるはずがない。

ガイドラインを見ても「大家側が次の入居者のために行うもの」で、入居者が負担すべきものではない。

エアコンは2台。1台は我々が自腹でクリーニング済み、1台は数か月前に新品を入れ替えたばかり。クリーニングする必要もない

契約書にもエアコンクリーニングに関する取り決めはない

ブッダ:退去立会の際にあなたは原状回復の費用リストに署名をしなかったのだから、その時に載せていなかった内容が出てくるのは当然だ。

クロス洗浄(3,300円)

私:これも、大家が負担すべきもので入居者には負担の義務がない。

立ち合いの際にはたばこのヤニによる汚れがついていると言われたが、私たちはたばこを吸わないし、来客に家で喫煙させたこともない。立ち合い業者も、入居者が喫煙者なら臭いで分かるので、私たちのせいではないと明言していた。

念のためだが、通常の使用による汚れ(通常損耗)については入居者の過失は認められない。私たちには過失が無いにもかかわらず請求されているので不当。請求する根拠を明確にしてほしい

ブッダ:問題はタバコでも過失でもない。5年間住んでいたのだから請求できるのだ。

53か月(私たちの入居期間)入居されていた中でクロスにかかる費用を負担していただく入居様分として請求する(この意味わかりますか?私は100年間考えたけど理解できませんでした)

私はガイドラインが全てとは思っていない!(もう、それいいよ)

特約に原状回復費用を入居者が負担することを定めているのだから正当だ。金額も妥当だ。私はそう考えている!!!!(ラスト4回目)

議論のまとめと今後の進め方

今回(も)、話し合いは全て平行線。けっこう時間をかけて自分で納得いくまで調べただけに、徒労感は大きいものでした。

小一時間のやり取りでしたが、同じ言葉がループしてること、用意した論点もガイドラインも何するものぞとの無視っぷりに、1,000年の輪廻を感じた一幕でした。

また、ブッダにとっての真理は「特約」と「私の考え」であり、ガイドラインに何を書いていようが、この2つに勝るものはないということを思い知り…

もうほんとに、天上天下唯我独尊。

てか、今までよくこれで問題起こさなかったな(起きても懲りずにこのまま来たのか?)。

これ以上ブッダと向き合っても解脱できそうにないので、お互いの主張は全くかみ合わなかったことを確認した後、これでは話にならないので大家と直接話をさせてくれと申し入れしました。この時はブッダ、嫌がりながらもいったん大家に話してまた連絡する、と答えました。

「でもオーナーはこの件、私にすべて任せて下さってますから」と、誇らしげに張った胸を正拳突きして潰してやりたい衝動を必死に抑え、「では、早々にご連絡をお願いします」と伝えてその場を後にしたのでした。

おまけ

ブッダの超理論(特約浄土)は論外として、他の業者でも使う論法かもと思ったのが、「敷金の範囲内ですから」という主張。

個人的には全く正当性を感じませんが、「一度大家に渡した金だし、退去時に差し引かれるものだし」というそこはかとないそれっぽさは感じる方もいらっしゃるかもしれません。

でも預けてるだけで自分の金ですし、どういった費用であれば(原状回復に)敷金を充てて良いかはしっかりした線引きがあります。とにかく、判断に困ったらガイドライン。費用項目ごとに大家と入居者どちらの負担とすべきかが詳細に書かれている上、過去にその問題を争った判例集も載っているので、本当に目を通しておいた方が良いです。

さて、論戦が噛み合わずに「責任者(大家)出せやあ!」になった第1ラウンドですが、第2ラウンドは戦いが激化します。

近いうちにちゃんと書きますので、少々お待ちください。


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