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掃除の仕事のこと

突然ですが、前職では掃除の仕事を本当によく頑張ったなと思い出してしまったので、ちょっと書いてみたいと思います。


まず初めに、お掃除の仕事といっても皆さん色々想像するシチュエーションは違うのではないでしょうか。
ビルの清掃、マンションやアパートの共有部分の清掃、オフィスやレストランの清掃、公園など公共施設の清掃、自宅の掃除の外注など。
その中でも、私は宿泊施設の清掃を7年近くさせていただきました。

このお仕事を選んだ理由は明解で、子供の学校の時間帯に働けたからです。
英語が得意ではなく専門性も特にないため、門戸の広いホスピタリティ業界は、私のような求職者にはありがたい存在です。しかし、幼児を抱えた私は早朝やディナー時のお仕事では困る。
このお仕事を発見した時は、
「よしっ!」
となりました。

子供が小さいうちはスタッフのプライベートを重視した勤務が可能で、学校行事の参加のためのお休みなども取りやすい職場でした。同じような理由で働いているママさんも沢山いましたよ。

私が勤めたホテルは、ペアではなくソロで掃除をするタイプで、一人なので自分のペースで仕事をすることが可能です。
そのため、ある程度仕事や仕組みにも慣れてくると、どんどん欲が出ます。


普段からもっと綺麗にしたい!


客室の掃除は、時間との戦いです。
一度掃除をすると、綺麗になったエリアは結構きれいなままの状態が続きます。
時々、信じられない汚し方をする人もいますが、比較的まれです。
なので行動を起こせば結果が目に見えます。

しかし、繰り返しますが時間が限られています。

チェックアウトも使用中の部屋も混ぜて、12部屋で5時間というのが業界の目安だと教えられました。
よくあったのは1日14−15部屋で半分がチェックアウトという組み合わせ。

新しいお客様を迎える掃除は、部屋の全てをきれいにします。
しかし、絶対にすべき箇所とそうでもない箇所というのはあります。
(あと危険回避のため、普段は掃除ができないエリアなども存在しますが。)

必ずきれいにしなければいけないのは、具体的にいうと、人が汚したところです。

ベッドシーツ、テーブル、トイレ、お風呂、床、冷蔵庫、ティーセット。
キッチンは無かったのでありがたかったですが、正直ここを掃除するだけでも予定の時間なら手一杯です。

ここに、人が直接汚した訳ではないけど、時間と共に汚れていくところも存在します。

窓のサッシ、エアコンフィルター、家具の内側、スカーティングボートの上部、換気口など。
ホコリが溜まりやすいですね。

私の職場は、働いた時間だけお給料が発生しましたので、あまりにも予定された時間を超えてしまうと、管理者と面接があったりします。つまり、ここで葛藤が発生します。

1・最低限をとって、早く終わらせるか。(個人の記録としても残る)
2・気になる場所の掃除もして、時間は押すけれどきれいにするか。(お客様のためにはなるが、管理者は困るかも)

私は後者の道を選びました。
(チェックインの時間を過ぎてしまうと、お客様を待たせることになるので、きれいの全てに正義があるわけでもないのですが…)

ホテルの研修では「どんなことをすればお客様に喜んでもらえるだろう」ということについて考える機会を度々与えられますが、結局私たちの役目は

「きれいな部屋を提供する」

これに尽きると思っていました。
逆を言えば、これがなければお客様は特別なサービスを受けたとしても
「ここ、汚いじゃん。ガッカリ〜、減点」
となるのではないかと。

もちろん、フレンドリーな接客は前提として。

短い時間で、最大限の掃除をする!
と、言うは易し、行うは難し。

自分自身のキャパは、そう簡単に増すものではない。

なのでその時にできる最大限を目指して行動し、ルーティーンを定着させる。
余裕ができたら新しい作業を追加することを繰り返しました。

この流れを、私は密かに
「当たり前化」
と呼んで、家族にだけこっそりと自慢したりして。
(一応全部の掃除ができてると思っていても、あとから「これもあったな」というふうに発見して追加していったというのが現実でしたが。)

明らかな努力が実を結ぶのが、掃除というしごとの良いところですね。


なお、私の頭の中には、この図のようなものが描かれていました。

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左側のラインを起点として、Aの時点では同じ回数掃除をしているが、キレイの状態を提供できた期間は違う、という図。水色の期間がキレイな状態、黄緑色の期間は、汚れが気になる期間を表しています。


長い間、自分のフロアというものを受け持っておりませんでしたので、毎日違うフロアの部屋を掃除しました。
「よし、この部屋の窓のサッシ、キレイにしたぞ!」
などと思っても、翌日受け持つのは薄汚れたサッシのある部屋だったりするわけです。
「昨日と同じ部屋だったら、この作業、飛ばせたのに」
と思いながら、また時間をかけます。

正直、砂浜に水を撒く気分でした。
確かに水は存在するかもしれないが、もう見えない。実感がない。

それでも、同じフロアが続いたりすると、運良く前回頑張ってキレイにした部屋が回ってきたりするのです。
そうしたらもう、そういう所は撫でるだけでキレイになります。
YES!

最後の1年は、自分のフロアをいただきましたので、夢のよう。
自分なりにキレイを保つ実験を、正々堂々行うことができました。

毎日、同じフロアの18部屋のうちのどれかを掃除します。いくつかは違うフロアの部屋もあてがわれますが、自前でチェックリストを用意して、部屋ごとの状態を把握する、という作業が有効に働く状況です。

もう砂に水を撒いているのではなく、土に水を撒いていると実感しました。
植物も育っちゃうよ!

同じ場所を同じ意識で掃除し続けると、結果は「いつもキレイな状態の部屋」にたどり着きます。
多分もう自己満足かもしれない、と思いながらも、毎日、「当たり前化」で増やしたチェック項目をこなして、キレイの流れを掴んでいきました。

古くさい部屋のデザインとか、テレビが小さいとか、ペンキがはげてるとか、カーペットに染みがあるとか、普段の掃除ではどうしようもないところは目をつむっています。
私たちができることの範疇外だから。  

しかしそのあとすぐに部屋のリノベーションが始まってしまったため、「キレイ」な状態になった部屋たちは、一旦新品の状態へリセットされることとなりましたとさ。




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