ヒ マワリ
陽が登る。
たった一つわかっていることは陽が沈んで行くにつれて、
僕も薄まって行くと言うこと。
陽が登り、僕は気がついた。
空が少しずつ白いで行き、夜が薄まる。
陽から身を隠したものを夜と呼ぶならば、小さくなった夜は僕の足下にも居て、いつもその帳を空まで伸ばすことを心待ちにしている。
周りも明るくなって来たけれど、まだ夜の寒気が僕を包む。
僕の一部にも陽が当たり始めた。
あたたかい
全身に陽が当たるのが待ち遠しく、
微かに感じられる、僕を包んで居た夜の名残さえ恋しく感じる。
陽が登ってからは退屈なものだった。
時々香りを運んでくる風は、僕にまとわりついてうっとうしく話しかけてくるほこりを取り払ってくれる。
けれど、風が語りかけてくれる噂話は、早く、僕が返事を考えているうちに過ぎ去ってしまう。
さっきまで暖かさに乗せられて、赴くままに空を滑っていた風が、
冷たさに追いやられて駆けて来た。
空がオレンジに染まる。
僕は言葉を失った。オレンジに染められる前の水色は何て美しかったんだろう。
退屈なことなんて一つもなかったじゃ無いか。
返事を待たずに、過ぎ去ってしまう風ではなく、そばにいようとしてくれた
ほこりの話にもっと耳を傾けばよかった。
僕の何もかもが薄まって行くのを感じる。
返事を考えうつむくのじゃなく、もっと水色を仰げばよかった。
音も聞こえなくなり、視界もぼやけ始めた。
ただ薄れて行くとしても今は目の前のオレンジに染まりたい。