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入院とミルク珈琲とチョコレート

私はチョコレートが大好きだ。あると際限なく食べてしまうから、普段はあまり買わないようにしている。だけど入院することになってから、塩気の足りない病院食では物足りないからと理由をつけて、2箱も買ってしまった。

本もたくさん持ち込んだ。14冊あるけれど、全部は読み切れないだろうな。持ち込んだ本のうちのひとつに、河出書房新社「おいしい文藝」シリーズの『うっとり、チョコレート』がある。これは色々な作家がチョコレートについて書いたエッセイをまとめたアンソロジーだ。まあこんな物を読んだら、チョコを食べたくなるにきまっている。一話読んでは一つ食べ、一話読んではひとつ食べを繰り返していたら、目と口から摂取したチョコレートが澱のように溜まって、頭がぼうっとしてくる。

チョコレートを食べる(または読む)時のお供は、絶対に珈琲でなくてはならない。ミルクが入っていてもいいけれど、砂糖はかえって体内の澱を増やしてしまうので入っていてはいけない。ただ残念なことに私はカフェイン過敏。コーヒーを飲むとお手洗いが近くなり、手に力が入らなくなって使い物にならなくなる。でも今は入院中。ある程度使い物にならなくなっても問題なかろう。それでも私は珈琲を飲みたい。今。Now。澱の溜まったぼうっとした頭で、ふらふらと珈琲を買いに行った。

1種類だけ売っていた温かい珈琲を無事手に入れ、ほくほくしながら部屋に帰り、ボトルのキャップを開けた。ふわりと珈琲の匂い。これを我慢しなくていい幸せを全身で感じながら、ボトルに口をつけた。

すっっっっっっっごく、甘い。

今の今まで全く気づかなかったが、自販機に唯一売っていたのは思いっきり甘いミルクコーヒーだった。いや、甘い珈琲自体は好きなんだけど、さすがにチョコと一緒に飲む物ではない。だって、とっても甘いミルクコーヒーは甘いけども少し苦くて、チョコみたいな味がするから。

ミルクコーヒーとチョコレートを一緒に食べながらチョコの本を読むと、頭が一層ぼうっとしてしまった。多分この味は、私にとって「入院の味」になるんだろうな。

読みたいと思っていた本と撮影用の衣装を買うために大切に使わせていただきます。