127 / ゆっくり急ぐ

「職業としての小説家」という村上春樹さんの本を読み終えました。TSUTAYAまで歩いて行き、立ち読みして、疲れたなと思ったら本についてある糸を挟んで元の位置に戻して帰る。

翌日また立ち読みに来る。そんなことを繰り返して、3日間かけてこの一冊を読み終えました。はい。わかってます。この本は将来ちゃんと購入させていただきます。

ぼくはこの手の本は一言一句漏らさず隅々まで読みたい人です。面白い本ならなおさら。ビジネス書だったり、自己啓発のようなものなら、自分なりの速読テクみたいなものを使って30分ほどで一冊読み終えることはできます。

しかし、効率を求めてそのような読み方をすることは、あまり自分にとって良いものだとは思えなくなりました。何事においても、速度によって得られるもの、失うものが変わる。そして、現代人、というより少なくとも今の自分は、あえて速度を落とすということの方がメリットが大きいのだと、ぼくは強く思います。

特に最近は、ゆっくり噛んで食事。ゆっくり歩く。ゆっくり呼吸する。ゆっくり本を読む。いろんなぼくの1日の活動の中で、あえてゆっくりを意識することが増えました。

最近読んだ精神科医の方の本には、「早歩きばかりしていると、常に交感神経が優位になり、自律神経の乱れを招いてしまう。」と書かれてありました。ゆっくり呼吸をすると副交感神経が優位になるというのは知っていましたが、副交感神経というのは、歩く速度にも影響を受けるほど敏感なものらしいのです。

これまで作家として数々の賞を獲られている浅田次郎さんは、「音読と同じ速度でしか本が読めない」らしく、毎日4時間で一冊読み終えるのが日課なのだそうです。

大量の本を読むのも仕事のうちと言える作家さんが、ぼくよりもゆっくりと、それもかなりゆっくりと読書しているという事実を知り、ぼくは驚きました。

そしてこの「職業としての小説家」を、意識してゆっくり読んでいたので、三日間もTSUTAYAに通うことになったわけです。新鮮な体験でした。明らかに、ちゃんと読んでいる文章が自分の血肉になってくれているという感触を得ました。

人生焦ることばかりですが、もしかしたら、焦ることなく、あえて決断を先延ばしにしたり、速度を落とした方が上手くいくという類のものもたくさんあるのかもしれないなーなんて思う今日この頃。

というわけで、ゆっくりと朝散歩に行ってきます。



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