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猫記録3-① マイクロフト(キジトラ)


息が苦しい。お腹が空いたよ。でも動けないんだ。もうこの状態でどれくらいの時間がたったのか?助けてお母さん。ここはどこなのか?

立ち上がろうとするけれど、体中が何かにくっついて取れないんだ。トイレはここでするんだよ、って教えられたのに、立ち上がれないからそこにもいけない。戻ろうとしたけど、もうどこがなんだかわからない。木の匂いがする。最近覚えたのだけれど、良い匂いだと思っていた。時々遠くでエンジンの音がする。なんかこのまま眠くなったので寝ようかなと思う。

目が覚めた。痛くも苦しくもない。でも変なものを口に入れられていて立ち上がることはまだできなかった。初めて嗅ぐ匂いだ。なんとなく白いその部屋には白い服を着た人がいた。あの、ここはどこですか?声をだしたいけれど出せない。

ある日、女の人がその白い部屋へやってきて、僕をカバンに詰め始めた。もう大丈夫だからね、と言いながら。又人間の家へ来た。そこには結構な人数の人がいて、出たり入ったりしていた。その人たちが取っ替え引っ替えやってきて何か言ってきたりグリグリ触ってきたりした。嫌じゃなかったが、夜は静かな部屋へ行き、僕がミャって話しかけると静かにしてね、と言われた。

数日が過ぎ、またカバンに入られ車に乗せられた。今度はとても静かな家のようだった。どうやら他にも猫がいるようで声が聞こえた。実はそれが怖った。でもその猫たちに会うことなく部屋へ連れてこられた。そこにはベットもトイレもあって、おもちゃもある。他の猫匂いがしたが、静かで安心な感じだった。その初めて見る女の人はごはんをくれて、トイレも変えてくれた。ごはんがたくさんあった。すごくうれしい。

ただ一日の大半はその人が家にいなくて、ご飯はお腹いっぱい食べられたけれど、先住猫の声におびえ、さみしかった。お腹もちょっと痛い。それでも何かにくっついて動けなかった日々を思い出せばとても心地いい。

そんなある日、又別の女の人が部屋に入ってきた。
開口一番、
「小さいねエ。」
とびっくりしている様子だった。僕は小さいのか、自覚はなかったけど。ただ、その人からは暖かい空気を感じて、すぐに近くへ行ってみたら、その手で僕をグリグリしてくれた。それがとても心地良かったから、座ったその人の膝の上へ乗ってみた。それにびっくりしているみたいだった。いしょに行こうねと又カバンに入れられたときは、又かよ、と思った。

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