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#エモいってなんですか?〜心揺さぶられるnoteマガジン〜

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理屈ではなく何か感情がゆさぶられるそんなnoteたちを集めています。なんとなく涙を流したい夜、甘い時間を過ごしたい時そんなときに読んでいただきたいマガジンです。
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2020年3月の記事一覧

小説   『センセイ』

4月、わたしはセンセイを嫌いだった。 3月、わたしはセンセイとキスをした。夕方の理科室で、14年の人生で初めてのキスをした。 区で一番ダサいと言われた制服のプリーツスカートが揺れていた。身長145cmのセンセイの茶色いボブヘアに、そのとき初めて触れた。 あの春、確かにわたしとセンセイは恋をしていた。 * 月曜日の22時すぎ。シンクにたまったお皿を見て、腕まくりをする。 子ども用のウサギの絵の皿に、カラフルなスプーン。無印で買った木のお箸が、白いマグカップにいくつも刺さっ

現実とフィクションのあいだを甘い酒に繋いでもらうよるに。

きみが泣いているのを初めて見た。 正確には、音声通話なので「聞いた」なのだけれども。その光景は私の眼前にあり、それでいて触れることが叶わないくらい遠くだった。耳に押し込めたイヤフォンを、更にぎゅっと押し当てて、私は彼の小さな息遣いが、どうか聞こえるようにと願った。 頭の中で素早く計算する。日本の時間では、3時23分。彼は未だ眠っていなかった。最初に、短いけれど乱暴なほどに自棄な言葉の並んだテキストと、追いかけるように今度はやけに弱々しい言葉が並ぶ。こんなにへなへななきみは