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第13話「閉じろ、その地獄の釜の蓋を」(策謀篇・8) 西尾維新を読むことのホラーとサスペンス、ニンジャスレイヤー、そして批評家の立場と姿勢の話

前回はこちら。

(ご注意・画像と本文は一切関係ありません。また、登場人物や組織の実名は伏せられている場合があります。そして、明かしづらい内容は不明瞭な表現となっている場合があります)


(これまでのあらすじ・男は語る。地雷でしかない人物の策略と、その末路を)

秘密は死んだ
重圧は去った
零年より巣食いし
悶える芋虫の囀りも
今は、あなや
時代の渦中へと紛込み
盛衰の幻夢境を
ただ筆の
切々たる陰影深くに
残すのみ
、、、、、、、、、、
秘も重圧も
感じ得ぬ地平に
我々はいる

高橋けんじ氏
ささぐ。


これは実話である。体験談であると言い換えてもいい。だが先に述べた通りあくまでも一方の当事者としての視点であって、そうでない当事者・関係者がどのように感じ、知らされていたのかは、推測するしかない。

以下にその推測を述べようと思う。


「過渡期の人」(仮称)の計画と僕への対応

1.前提

・比那北は自分の弟子になりたがっている。時々そこそこ使える事を言うし、使ってもらって感謝しているようだから、手元に置いて便利に使いたい。

・比那北のネタは業界人にウケが良さそうなので、弟子にする事を持ち出して密かに人脈を広げ、有力者と強いコネが作れそうだ。

・無事に事が運べば比那北を利用して裏人脈を「九龍」(仮称)そのものや関連施設での活動に引き込み、更なる発展が見込める。

2.仕込み

・時折送付される文書を利用し、「弟子にするつもりだし、向こうもその気だ」とアピール。思惑通り裏人脈が出来始めた。

3-1.弟子化

・なかなか会いに来なかったが遂に来た。俺が立派に指導してやろう。代わりにネタを差し出せ。

・諸々のリスクは他所に押しつけるから、お前はここで俺の薫陶を受け、恩に着ろ。

・俺に洗脳されろ。

・俺に相談しろ。指導してやるし裏人脈に信頼の証しとして報告するから。(ここまで会見1日目)

・お前はこういう場でのルールが分かってない。俺が厳しく指導してやる(会見2日目)

・鈍いお前もどうやら初日に俺が言わせたい事が分かったようだな。厳しく指導してやる(会見3日目)

3-2.離脱後

・おい、どうした! 俺の弟子になりたいんじゃなかったのか! あのくらいの指導でめげるな!

・お前は俺の意を汲め! 俺の思い通りに動け! 俺の思い通りに動く俺の弟子になって俺に一生尽くすんじゃなかったのか!(註・推測です)

・早くしろ! 裏人脈に言い訳するの大変なんだよ! このままだと俺のせいにされるだろ!(註・推測です)

・もう駄目だ。お前のせいで俺は酷い目に遭った。嫌がらせしてやる!(註・推測です)


……僕自身、書きながら閉口する内容なのだが、気を取り直して。

これまでの展開から見ても分かるように、僕と彼との間にはいくつものすれ違いがある。彼に関するウワサが誇張・真実・過小・デタラメなどの場合に備えてフレキシブルな対応を考えていたことや、必ずしも弟子になるつもりはなく、それどころか決裂さえ視野に入れて複数のプラン・選択肢を検討・用意して会見に望んでいた事などがそうだが、最大のポイントは、僕が彼と会見する以前に、既に裏人脈の存在に気付きつつあったということだろう。

会見前からひとりふたり確実視している人物がおり、それが広く裏人脈として築かれつつあったことは後に知ることであるが、まさか僕がその裏人脈に気付くで済ますどころか逆手に取って追い詰めるための交渉材料に利用してくるなどとは露程も思わなかったらしい。会見自体が常に周囲に無関係な者乃至九龍内部の関係者(だからこそ耳に入れたくない事もあるだろう)がいる状況でのものだったため、匂わせるにも仄めかせるにもチラつかせるにもなかなか困り、まず初日の洗脳発言以降は最良のシナリオで当方が納得できる条件でのビジネスライクな関係構築、ベターで決裂・無関係化ではないかとジャッジの基準を定め直したこともあって、弟子化するトゥルーエンドまっしぐらな行動チョイスしかしてこないインタラクティビティの喪失したコミュニケーションスタイルをキープし続けるプレイヤーとのマッチングではスタイル変更や前提のリコンフィグを婉曲的に要求しようにも高度な技術やそれ以上に強引さや厚かましさが必要な上に相手の強引さと図々しさが較べるのも馬鹿馬鹿しいくらいに僕を遥かに凌駕していたため、つまり裏人脈に気付いていることを知らせる気が失せた。

結果には満足している(何しろベターではあるので)、と言いたいところだが、このような出来事が思わぬ事態を招いて招いて呼び込みまくっている事情がある。まさかそんな風に転がるとは思ってもみなかったので、僕のあずかり知らないところで何かが起こっているのだろう。

そんな風に僕に感知できる事柄が生じている理由の一端を探る意味でも、以下に推測を記しておく。


過渡期の人(地雷)と裏人脈とのやりとり

・上記「2.仕込み」により、人脈が形成される(個々に彼を信用する)

・上記「3-1.弟子化」の段階に入る。「順調に指導している」「信頼できる人物を紹介した」「至らない点もあるが、向こうも素直に聞き入れているようだ」などと報告。(進捗は順調だと理解)

・会見2日目の様子と指導の状況報告が続くが、3日目が終わり僕が(突然)「離脱」して状況が一変。

・上記「3-2.離脱後」の段階に。裏人脈から殺到する状況報告と対応の要請に慌てて対応する(しているつもりで効果なし)。

・一向に好転しないので裏人脈に不信感が漂い始め、詰問が厳しくなる。

・対応の甘さに不満が出始め、裏人脈から案が出されるが、それこそ彼自身が絶対に避けたい「調教前に知名度を与えること」なので断固として断るものの、打開策なし。

・かねてからの不信と対応能力のなさに呆れ、憤慨し、あるいは冷静に失敗と見做し、裏人脈が崩壊・離散が始まる。

・計画の破綻により過渡期の人(地雷)の精神状態が目に見えて悪化。惑乱してくる。

・計画失敗が明白になり、裏人脈が個々の思惑に戻っていく。過渡期の人(地雷)が責任転嫁できず追及を逃げ切れなかったことを逆恨みし、僕に嫌がらせ。

(以降、個別に展開)


推測ではあるが、こうしてみると、僕と彼との交渉という観点からみれば、弟子になる気のない僕と弟子にする気しかない彼との間で一致する点はない(妥協点としての「とりあえずビジネスライクの関係から徐々に発展させるオプションがあるか探る」という落とし所もない)。彼から裏人脈への説明は都合良く歪曲されたものと思われるが、事実が露見すれば反発は必至であったろう。彼の報告からしか状況を知りえない裏人脈をたばかることは容易いので、首尾よく弟子にできさえすればこの作戦は成功し、弟子と人脈を得てその後の展望もさぞかし明るくなったことだろう。だから急所は「僕を弟子にできるか」のただ一点のみであって、そのために彼は総力を上げなければならなかったはずなのだ。むしろ弟子にしてしまえば人脈など後からでも十分に形成できただろう。先にそうせず隠れて人脈を広げたばかりに、将来展開を担保にした信頼関係は崩れ、失敗者として信用を失うこととなった。それだけではない。彼の対応は裏人脈に対しても強烈なものがあったようで、どうやら彼を挟んだあちら側から直接僕に向けてなんらかのメッセージを送らんとしてる様子から見て、事態を表沙汰にでもしようかという意図があるように思えるのだ。彼は随分怒りを買っているらしい。経歴からすればそれも当然、といった印象でもあるのだが。

彼は僕を弟子にする事について、いや僕に限らず、弟子を取る事や指導することについて、真剣に考えたことがあるのだろうか。信頼し合う事や相手を伸ばすことを。それともやはり形式的にしか捉えていなかったのだろうか。「アナウンサー=滑舌」のように。

とにもかくにも迅雷風烈、彼を挟んであちら側とこちら側から、ぎこちなくも連動して挟撃するかのような態勢が整いつつあった。

誰一人、一度たりとも望んだ事のなかろう態勢であったが。


(第14話に続く)

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