見出し画像

里芋の煮っころがし

映画 男はつらいよ 寅次郎シリーズの中で
印象的だったシーンのひとつに
妹のさくらちゃんとおばちゃんが
「里芋の煮っころがし」を作るというエピソードがある。

主人公、寅さんの幼馴染の女性(その映画のマドンナ役)が
病気で、命が危ないと医者に言われている床で
「ああ、おばちゃんの里芋の煮っころがしが食べたいわぁ」
と言うので
寅さんは、大慌てでおばちゃんの所に走り戻って来る。

「あいつが里芋の煮っころがしを食べたいって言ってるんだよ!」
「早く作ってくれよ!早く!早く!」
「早くしないとあいつが死んじゃう。間に合わないだろう!早く!」

鍋に水をはるおばちゃん
里芋を流しにゴロゴロと出す さくらちゃん。
「早くしてくれよ!」
と傍で言う寅さんに、さくらちゃんが
「里芋を煮るのって時間がかかるのよ。皮をむいて…茹でて…」

わたしはこのシーンが大好きで
じんわりと涙が出てしまう。

結局、里芋の煮っころがしは、マドンナに食べてもらうことはかなわず
「彼女が息を引き取った」という伝言が寅さんの元に届く。


料理をしたことのある人ならみんな知ってるけど
人の心に残るような美味しいものを作るには
時間がかかるのよ。

なんでもない作業に見えるのかもしれないけど
そこには丁寧な作業がいくつもあるのよ。

ある日の夕飯にふと出される箸休めにも
食べるひとは「時間」という愛情を感じるから
後で懐かしく感じたり
「おふくろの味」になったりする。

わたしも
「ひとの心に残るもの」を残していけるように
頑張ろうって、思えた1シーンでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?