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U from 竜とそばかすの姫

大好きな細田守監督の作品で2021年公開の
「竜とそばかすの姫」
一度 映画館で観て
主人公の歌声に痺れてしまったわたしは
2度目は IMAX で観た。

映画のあらすじは
50億人以上が集う仮想現実の世界(インターネット)Uに
アバターを使って参加した主人公が
その歌声で世界的に注目されるという物語。

現実世界では、田舎の冴えない風貌の女子高生。
だが、日常の中に散りばめられた仲間の思いやりのエピソードは美しい。

「ちっぽけなわたしのちっぽけな行動なんかで世界は変わらない」
ほんとうにそうなんだろうか?
と、つくづく考えさせられた映画。

この映画の中で女子高生すずの声を演じ
主題歌、挿入歌を担当した中村佳穂さんの
オーケストラと一緒に歌っている映像を
たまたまYouTubeで見つけて
素晴らしかったので、ほぼ毎日聴いている。


U from 竜とそばかすの姫

https://youtu.be/UzBgImCGrsg



指揮者、演奏家、歌い手
全員がひとつになって作り上げたこの音楽には
鳥肌が立ちっぱなしで魅了される。

聴いていると、わたしの魂が呼応して震えているのがわかる。

最初に思い出したのは
「麦の光」という言葉だった。

「麦の光」は
詩人 斉藤倫の「せなか町からずっと」に登場する。
小さな小学校の音楽室にある「麦の光」という楽器の名前である。

「麦の光」という楽器は古く昔から小学校にあるにもかかわらず
誰もその演奏の仕方を知らない。
先生も知らない。町長も知らない。
図書館で調べてもわからない。
その楽器を担当する子どもは、演奏中はずうっと
「麦の光」を持ったまま立って居るしかない。
でもそれでいいんだよ、それしかできないんだから…

しかし、物語のラストで
「麦の光」は子どもの手の中で回り始める。

「麦の光」に音は無かった。
周りの楽器の演奏を誘い出し、音を躍らせて
天にも届くような美しいものを引き出す役目。

このオーケストラの中心にも
「麦の光」が回っているような気がして、幻想的に見えた。


中村佳穂さんの歌声は憑依型のように思える。
わたしたちが追い求めている「何か」を受け取って表現しているかのような
自由で野性的な人間の根源に触れるような
孤独なまま生まれ、孤独なまま死んでいく運命を享受するかのような
荒々しさと繊細さを感じる。


映像の中で次々にクローズアップされる指揮者や演奏家の表情も
否応なく高みに巻き込まれていく渦を楽しんでいるように見える。


こんな歌唱を目の前でされたら
もしもわたしが歌手だったなら、一瞬、絶望するだろうなぁ。

神の与えし才能の前には、ひれ伏すしかない。


いったいどうすれば
神様のギフトの箱を開放することができるのだろうか?
羨ましい限りである。



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