バイト帰りの飲食チェーン店めぐり

高速バスで仙台に通いバイトする生活を始めて、だいたい3ヶ月になる。
作業量によってばらつきはあるが基本18時退勤。帰りのバスの最終便は19時半ごろ。元々田舎暮らしだった自分にはチェーン店の看板が眩しく映る。地元に存在しない店ならなおさら。地元時代は家族でチェーン店で食事をした記憶はそう多くはない。主に幼稚園から小学生の記憶で止まっている。勉強がてらファミレスによく行っていた姉はもっと違う印象を持っているのだろうが、あいにく私が高校生だった頃は567で自ら外出することはできなかった。大学生になり十数年ぶりにマクドナルドに行ったレベルだ。幼少期、確か小学校低学年ほどまでは近所のイオンにマックがあったが少しして閉店した。現在は隣町、自家用車で通る範囲の距離にしかない。家族とたまに行くレストランは小規模かつ少し豪華なものが多い。窯焼きピザとか。それはそれとして、もちろん大好きだけれども。
チェーン店は学生には有り難い金額帯で、手軽に満腹感を味わえる。地元でも旅行先でもメニューやシステム、支払い方法は基本同じなので下調べする手間が少なく入りやすい。行ったことのない店に入るのが少し怖い私のようなタイプでも、見知った土地で得た経験を活かして都会でも安心して入店できる。だからなのか旅先でご飯に困ると真っ先にチェーン店を探す癖がある。小規模の人気店より(経験と混み具合の観点で)入りやすく、私の場合旅行にかかる費用を交通費と美術館等の鑑賞代に全振りしているのも大きい。まあ旅先で食べるものに関しては様々な価値観があるので──。多少はその土地の美味しいものを食べたいという欲はある。もちろんある。けれども我慢お金ないから。

バイトを始めてから初めて入ったチェーン店について少し書いてみる。メニューを熟知してるわけではないので実際のものとの齟齬があるかもしれないがそこはご容赦願いたい。
あと食レポではないです申し訳ない。食レポの感覚がなさすぎて「全部美味しい」になってしまう本当に申し訳ない。
◯すき家
よく通っているのは2つの階段で分かれていて、上り階段のほうがマクドナルド、下り階段で半地下になっているほうがすき家、という建物の構成になっている店舗だ。外観にははじめ非常に驚いた。あと田舎では高い看板の頂点で見るようなマクドナルドの「M」の字がこんなに近い距離で回っているのにも(すき家関係ない)。液晶パネルによるセルフ注文には感動した。複雑なオプションを画面上の誘導でサクサク注文できるのは嬉しい。レジカウンターのみで対応していた頃もあったのだろう、その頃を少し見てみたかったかも。食費の関係で豪遊できないのだがセット商品でサラダを付けられるのは有り難い。ご飯普通盛りのオプションが有るのも。味噌汁が美味いのであっという間に食べ切れる。資金がないと言いつつもジュースをつけるのは許容範囲としている。
◯サンマルク
正確にはバイトを始めてから行った店ではない。同居人と東京遠征をした折り、モーニングを食べる場として利用した。ネットで聞いていた通りチョコクロワッサンが美味しかった。サンマルクを知ったのがTwitterの某インフルエンサー兼Webライターが原作を担当している漫画だったため、「実在するんだ」と本気で驚いた。いやあの作品2割くらいはエッセイだからそりゃあ、するだろうけれども。地元にサイゼリアが存在しないため大学生になって初めて行った時、「安くて美味しいとか名前論争でTwitterで話題になるのってここかあ!」と納得したものだった。Twitterの見すぎ。
◯吉野家
今日初めて行ってきた。事後報告。
大都市仙台の駅前という立地の関係上、カウンター席のみが存在する店舗だった。雰囲気としては立ち食いそばが近い。丁度近くには立ち食いそば屋や立ち呑み屋がある。端の席に座ったため背後でちらりと見ただけだが、中年の男性しか居なかった。時間帯の問題だろうか。気まずさが凄まじかったが気にしないことにした。私が座った席はレジがゼロ距離で見える。すぐ目の前で女性店員が会計をしていて、左手に見える出口──入口と出口は標示で厳重に分けられている──から食事を済ませたお客さんが出ていく。冷蔵庫で保存されているサラダ、レジスターに貼られたテプラ、女性店員のスマイル。全部見える。視界が色と文字と情報で埋め尽くされている。それでは集中できないだろうという人もいるかも知れない。けれども一人での食事中にスマホが気になる悪癖がある自分にとっては、目の前のものが新たな発見に溢れているというのは非常に有り難い。おかげで一度もスマホに手を伸ばすこともなくあっという間に食べきった。
初めて入ったお店、特に変わった構造のものはよく観察したいという衝動に駆られる。悪癖なんだろうとは思う。なんか知らないが時々店内をキョロキョロ見回す眼鏡だなあ──と思われてるだろなあ、そう思考を巡らせている。
今日は牛さば定食をいただいた。ごはんと味噌汁付きで税込み688円。ズボラ飯を極めすぎて体内のご飯と具あり味噌汁の成分が足りないからしばらく通うかもしれない。普段の食生活については聞かないでくれ──。
◯PRONT
夜メニュー「キッサカバ」の時間帯は純喫茶に出てきそうなメニューが楽しめる。メロンソーダにコーヒーフロート、固めのプリンなど。私は下戸なので無縁だがお酒も飲める。店内にはカフェのような──というか昼間はカフェなので──テーブル席やソファ席のほか、バーカウンターのようなエリアもある。キッサカバの開始時間は店舗によって異なり、私の通っているところでは18時30分からスタートする。バイトを始める前からキッサカバに寄るチャンスはあったのだが時間の都合で逃すことが多かった。通勤しだしてからは「今日めちゃくちゃ頑張ったしたまには贅沢していいだろ!へっへっへ」の精神で通うようになった。それでも頻度は月に1度くらいだけども。職場に近いところにあるからつい寄っちゃう。欲に弱い。食欲だけではない、シンプルなような複雑なような、とにかくいろんな欲だ。
キッサカバ飯においてタコさんウィンナーは欠かせない。というかそのために店に入っていると言っても過言ではない。何故かって?推しの大好物だからさ。勘の良い人なら「あああのキャラか」と分かってくれると思う。作品開始当初からTwitterで話題になっていたから。なんだかんだ私がこのバイトを始めるきっかけも、もとを辿ればこの推しのおかげなのだ。普段は(大学の専攻もあるので一応)絵描きを名乗っているが、推しの動画がどうしても作りたくて専門外だった映像制作に手を出した。そこから映像自体に興味を惹かれたりサークルのツテからの誘いを受けたりして今に至る。阿呆かな?阿呆ではある。何が起こるか、自分に向いているか分からなくても、とりあえず飛び込んでみるものだなあと今は思う。
脱線した。タコさんの話に戻そう。
私が注文するのはもちろんタコさん10匹だ。20匹食べる食欲は流石になかった、ごめん。タコさんが盛られている皿にはいつもケチャップとマヨネーズが付いてくるため味変は容易。タコさん10匹とメロンソーダで少食の腹は簡単に満たされる。炭酸でお腹いっぱいになっているという意見には賛成する。要予約のタコさん500個、オフ会に参加することがもし、もしあれば、一度はその場のみんなで食べてみたいものだ。
PRONTのキッサカバはバイト初日に行った。記念として。アニメ版放映終了の告知が出た日にも行った。忘れられない日になった。3月1日、歯を食いしばりながらタコさんをバク食いするとは思っていなかった。公式Youtube生配信の日、仕事が珍しく上手くいきルンルン気分でタコさんとメロンソーダを注文し、料理が来るまでの間実況が流れているはずのTwitterを確認したらあんな阿鼻叫喚が待ってるなんて思わないだろう普通。その作品(メディアミックス作品なのだが特にアニメ版)きっかけで自分はここにいて仕事して、タコさんを食べている。なのに。
タコさんウィンナーはしょっぱかった。
あんな事があったから簡単に気持ちが冷めてしまうかもと考えた。嫌いになってしまうのかもしれないと恐れた。推しを見ることを。推しを描くことを。推しの動画を作ることを。仕事帰りにキッサカバに寄ることもなくなるのかもしれないと。けれども実際、気持ちはそう簡単に変化するものではないらしい。表向きは全く触れなくなったとしても、心の底では、無意識では。就活で忙しいからとか理由を付けることは簡単だけれども、自分はそうやって我慢できるほど感情を抑えつけられる人間ではないらしい。そういう意味では不器用なのだ。
多分私は今でも。
推しの動画を作ることを。推しを描くことを。推しの姿を見ることを。
諦めていない。嫌いになっていないと思う。

嗚呼。
きらいになれなくて、よかった。

そして私は。
今でもあの薄暗い、大人な雰囲気が漂いつつも賑やかな空間で、私はひとりタコさんウィンナーを口にする。
さて。
私は未練たらしいのだろうか?