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【地方学生の美大進学日記】 志

 高校1年生、6月。美大を志望していると、絵の先生に伝えた。

 決断は他の人より早かった。親にも志望を伝えていた。何故美術系に行こうと決めたのか、何故そう早くに決めたのか、理由を聞かれてもちょっと困るけれども。

 デザイン職に就きたいとか、アーティストになりたいとか、就職について一直線に決めていたわけではなかった。けれども美術系に行くのは、中学の時から考えていた。確かイラストレーターになりたいとか、それが駄目だったらせめて美術教師になりたいとか、そう考えていたのは覚えている。その考えが発展して、こう考えていたのかもしれない。

 絵を学びたい。学びたいと思えるのが絵だった。何となく、何となくだけれども、それを言わなかったら後に後悔するのではと思った。ありきたりな表現しか出てこないのが悔しいけれども。

 絵の先生は、私が中学の時に絵画教室でお世話になった方だった。加えて、美術系の職業で生活している方だ。私が志望を伝えたとき、先生はなんと返答されていただろうか。緊張と、アイスコーヒーを飲んだことは覚えている。

 その後、絵の先生にデッサンを教わることになった。

 これは上の話より少し前のことだが、部活の技術顧問にも、その志望を伝えるときにも、やっぱり緊張した。自分の通ってる学校の場合、美術系に行く人の割合はかなり少ない。だいたいの年は一定数居るけれども、人数はまばらだ。

 緊張はしたけれども、その時点では迷いはなかったと思う。

 実際、自分で決めて、ひとに伝えて、デッサンなどの美大進学のための勉強を始めて。

 後悔はない。志望を伝えたことで広がった、友人たちとの交流がある。デッサンを教わることで知った、絵の先生の好みもある。同じ美術系志望つながりで、仲良くなった子たちもいる。それだけでも十分に、決めて良かったと思える。美術系進学をOKしてくれた親にも感謝だ。

 今のところ希望しているのは地方の美大だ。地方学生の美大進学はなかなか情報が少ないと思う。場所によっては、デッサン講習会さえ少ない、それか全くない。私がデッサンを教わることができたのも、ひとの力が大きい。すごく。

 この文章が少しでも誰かの役に立てばと思う。

 風は冷たいけれども、日は温かい。