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2020年度に創作した詩

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有島緋ナとして、初めて有料で公開した詩のマガジンです。 作者である私がラジオ配信で朗読したものございますので、あらかじめご了承くださいませ。 ヘッダー画像について https:…
すべてオリジナルで、今後の更新頻度は二週間に一度を目標にしております。 マガジンをご購入いただきま…
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#詩

遥か彼方で

長すぎて 本当に生きていたのかわからない 思い出が 時間ほど浮かんでこない それでも たどり着いた この場所には 感じる 選ぶ 好き 守りたい があった 永遠にないものと 何度も絶望した 悪夢を見ているのだと 思いたかった 半世紀は 遥か彼方のはずが 少し前に 追い越して ずっと後ろ キミを見つけた 7年前の夏の日には つながること ひとつも 知らないで ゆっくり 見えないほど 細い線を たどってみたら この新しい場所

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雨音

風が抑揚をつける雨 防音サッシで静かに過ごしたい 猫が気にする 廊下の音と 同じぐらいに 入り込む雑音 どれがきれいで どれがうるさい 決めていいなら 今日は後者 部屋の空気を混ぜる扇風機 なくてもいい部屋に住んでみたい 夜 気になる階上の音と 同じぐらいに 響く雑音 どれが風雅で どれが低俗 決めていいなら 今日は後者 明日の空は 白になるとか 風が響かなければ それでいい どの日が好きで どの日が嫌い 決めて良いなら 明日は前者で 弱い音が ときどき流れ

途絶

頼りなく歩くのに 元気に見えるって たぶん 自分がそうしてきたから 基準がおかしくなってる 外の世界と自分とが 違いすぎているんだ やんわり聞こえたこともあるけど 消えないものは消せない 痛そうですか 辛そうですか すみません わからないです どちらも無視されたから おかしな仕草は隠し 普通に見えるって 矯正して ごまかせるから これが ただ一つの特技 そこにあった環境が 違いすぎているんだ 社会へ出てから気づいても 自分で作り直せない 痛そうですか 辛そうですか

誕生日

縮こまる 風の怒り 雨の悲しみ どうして バリアの中まで 刺さってくるの 文字も 言葉も 痛くて 誰とも 話したくなくて チョコを食べ過ぎた 明日は 何十何回目の 誕生日といういうものらしい いったい誰の? 乾いた部屋 エアコンの音 静電気が盛り上げた冬毛で走る 三毛猫 足りないものが わからない ひとりで ただひとりでいたいと 願った 明日は 何十何回目の 誰かの記念日だったっけ いつ落としたの? 昨日と今日と同じ明日 作り笑顔で過ごせば 翌月お金になる より

ベッドメイキング

カーテンの隙間は まだ暗い 明け方の静けさ 眠れなかった 弱さ強さ 迷ってから気づく 灯りをつけ 文字を追おうか まぶたはだるく 上がらないけど カーテンの隙間が 少し明るい 動き始めた世界 ほんの少し前の自分みたい 何も知らずうれしく 重力に逆らい 起き上がれば 強い風に揺れる サッシの音 埃をとり 匂いを消して もとどおり カバーを美しく掛けた

宝石箱

扉を開けてみて 溢れ出す キラキラしたもの 描いた夢の 欠片だったり 探した理想の 切れ端だけど いつのまにか 磨いていた いつのまにか 光っていた さあ 安心して追いかけて あなたがみつけた星だから

明け方の夢

たどり着く公園で 芝生を 軽やかに歩く 明日も晴れる? そんな問いを投げかけて 芝生を 軽やかに歩く 透明な靴を預けて 答えは 明日の風の中 届いたら 開けてみて 誰も見たことのない 心を 贈ったから

ファンレター

思い出した あなたからの手紙 遠い記憶を掘り返して 話したんだ 画面の向こうへ 不器用で 制服のまま ただ 一緒にいたかった 毎日通った ライブハウス あなたの声 あなたの音 思い出せる記憶の場所は まだ すぐに蘇るほど 近すぎて せつないよ

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クリスマス配信

リクエストどおり ノンアルコールの微炭酸 画面の向こうで「聞こえる?」 確認してる 君の横顔 センスの良い配置 後ろの飾りつけ 普段のニットが似合うね そして 乾杯をした いつもの年なら 会えない 見えない笑顔を 分けてもらえた 今夜は 特別な クリスマスイブ 甘えた鳴き声が 画面の中で小さく響く 普段の音を聞かせてくれる 落ち着いた 君の声 せつない思い出話 BGMはSE いつか聴いた音が流れ そして 温かい瞳 これまでの年なら 知らない 意外すぎる本音 教えてく

新しくない世界

聞こえなくなったサイレン 慣れてしまったのかな あんなに人がいない街を見て 変われるかもしれないと思ったのに 良くない戻りかた 底に溜まった不安が叫び出す どんな考えも自由でいい 信じたいものを信じればいい 押しつけなければ 巻き込まないなら その駅の中央改札前では 怒鳴っていた「騙されている」 大きな声は 耳を塞ぎたい 聞きたくないよ 怖いだけだ 私がいないところで 好きなだけ 威嚇すればいい どんな考えも自由でいい 信じたいものを信じればいい 脅さなければ 捻じ

対照

きれい は どんな色 きれい は どんな形 大丈夫 手が届かないし 私は なれないから きれい は どんな匂い きれい は どんな音

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九つのあなたへ

明け方 ぼんやりとした空気 肌を刺すいくつかの痛みの前で 今日も 変わらず 上り 沈む ある一面だけの天体 身を包めと誘う 忘れろと説く 感覚を零下まで 解放できると 色も温度も移り変われば 小さな自分が 消えると信じた 永い記憶は 失われて きっと 美しく羽化するのだ 凍えていた ひとりの夜を思い出す 皮膚の痛みと 寂しさの痛みの前で その夜も 変わらず 上り 沈んだ 美しい姿を保つ 狂ってしまえと誘う 逃げろと説く ほんのわずかな羞恥心を 捨てられず 色も温度も

モンブランケーキ

君が好きだと知る前から ずっと昔から 好きだった 酸味のあるイチゴではなく 甘さが重なっていたから 好きだと言えなかった 言いたくなかった ある人が好きなものだったから 絶対に 好きじゃない 複雑で 単純で 忘れてしまった いったい 本当は どんな気持ち どこにも居なかったような 空白の年表が 目の前にあるような 君が好きだと知ってから ずっと昔から 好きだったって いくつも食べられない今 やっと 気がついたんだ

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冬晴れ2020

ここは2階なのに 電線のない空が見える 今の私の小さな広い世界 あのころのあの場所にはつながらないけど どこかにいる君には見える 鳥が鳴けば ベランダへ出て 借景の椿の満開を眺め 誰かがバルコニーでタバコを吸う フィルムのように 流れていく ここは街中なのに 足音は 廊下だけで響く 今の私の小さな小さなお城 歩くのが好きだったころには戻れないけど 万の一つ コメントならできる 会場に入ると SEが流れた 機材が配置された舞台を眺め スマートフォンの電源をそっと切り