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【第15回】毎月300字小説企画参加作品『風桶』

こちらに参加した作品です。


『風桶』

テーマ:酔う
作:やまこし

 信号待ちをしているときにふと右を向くと、小さな白い花が鈴なりにたくさんついている木が目に入った。これは確か、アセビだ。漢字では「馬酔木」と書く。馬が毒のあるアセビの葉を食べてしまうと、酒に酔ったようにフラフラと歩く様子が由来らしい。と教えてくれたのが誰だったかはもう覚えていないが、そうとも限らないだろ、と思ったことはよく覚えている。

 アセビの葉がおいしいから馬が葉を食い尽くしてしまう。それを見た飼い主は、焦ってその場から馬を走らせて逃げる。馬が疲れて酔ったようにフラフラと歩く、なんて。風と桶の距離感より近いな、随分と面白くないことを夢想したものだ。気づいたら信号は何度目かの青になっていた。

(了)

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