自分の体に納得のいっていなかったぼくへ
なんかよくわからないけれど、自分が女だと言われることに納得がいっていなかったぼくへ
なんかよくわからないけれど男性器がないことに納得がいっていなかったぼくへ
朝起きたら、体が男になっていますように、と本気で願ったぼくへ
足の毛を剃らないでいたら、そのまま男になれるのではないかと思って、全ての体毛を放っておいたぼくへ
みんなと一緒が嫌だから、という理由で緑のランドセルを選んだけど、本当は女の子は赤という固定概念と、その「女の子」に自分が含まれているのが嫌だったぼくへ(最近気づいた)
男になったよと言われているようで嬉しくて、男子トイレに入れるからトイレ掃除が好きだったぼくへ
男の子といるのが好きだったぼくへ
でもキラキラしたシールも、手紙交換も、かわいいペンも、顔のいい男の子も好きだったぼくへ
英語でいろいろな考え方に触れて、よくわからなくなってしまったぼくへ
英語でも日本語でも、たくさん話してたくさん書いてくれたぼくへ
自分の中のメチャクチャな欲求に困って壁に頭をぶつけていたぼくへ
そして何より、そういうぐちゃぐちゃな自分に戸惑っていたぼくへ
全てのことは時間が解決します。
お薬を飲んだり、体が加齢と共に変化したり、恋をしたり、好きなものが増えたり、もっといろんな考えに出会ったり、そういうことが時間の経過の中でたくさん起きます。そういうことの全てがあなたを助けます。
道中、苦しくて暗闇で泣いたり、お風呂で体を眺めて悲しくなったりします。先は結構長いです。まあよく考えたら、ここまでくるのに15年くらいかかっています。いや長いか。長えな。
あなたを苦しめているのはホルモンです。
あなたの体の中の物質のせいで、心はずっとめちゃくちゃです。本当に長いと思うし、きついと思うけれど、持ち前の好奇心と、あふれるほどの自信で26歳まで絶対にたどり着いてください。これがあなたのせいではないこと、あなたの気持ちに寄り添う言葉や存在があることが徐々にわかっていきます。だから、死を選ばずに「知」を選んでほしい。体を必要以上に傷つけないでほしい。
26歳のあなたが生きている世界では、人々が「性器と性別」の話をしています。それが法律にまで話が及んでいます。自分の中の気持ちを整理するのに必要だったことが、みんなによって論じられています。そういう議論を見るのはたまにしんどいけれど、あなたが悩んでいたポイントは決して間違っていない。何もおかしくない。その悩みは尊いものだったと、今となっては思います。ぼくはぼくだけの性別にたどり着いて、それを愛せるようになりました。
今でもたまに「朝起きたら声が1オクターブくらい低くなっていたらいいのに」とか思うし、いろんな気持ちや欲求にめちゃくちゃになったりします。でも、自分のモチモチの体を愛せるようになります。足はツルツルの方がいいなと思うようになります。まあどっちでもいいか、と思える日が来ます。
あなたはこの世に一つだけある「絶対」を信じています。
それは「人は必ず死ぬということ」です。
だけど、未来のぼくから言える「絶対」がもう一つあります。
「あなたはあなたの性別を愛せるようになります」
のらりくらりと、液体のように人生をやってね。
2023年のぼくより
P.S.
あなたがもがきの中で生み出した作品を、ぼくとその仲間たちは今でも愛しています。その日々には価値があったと、本気で思っているので、安心してね。ていうかその時のあんたが建設した壁が高すぎて超えらんねえよ。笑
いただいたサポートでココアを飲みながら、また新しい文章を書きたいと思います。