好きなひと
愛おしさと憎らしさのはざまで、うまく息ができないときがある。
わたしの好きなひとは爽やかじゃないし、スマートとも言いがたい。また、クールでもないしキュートでもないと思う。
どれだけ、わたしの好きなひとはどんな人だろう…と考えても、うまく言いあらわせないのだった。
それでも今日もコーラはおいしいし、あげたての唐揚げは灼熱で、まんまと舌を火傷した。そういう、なんでもないことを伝えたくなるひとだな、とは思う。
少なくとも正義のひとではないが、悪人でもない。寡黙ではないし、雄大でもない。また、臆病である。
たぶん、彼を知る人にとってそれは意外なんだろうな、と思う。あいらしいクリオネが肉食であるように、コーギーが中型犬であるように。
わたしはそれがうれしいのです。
そんなことを眠れない夜に吐き出してみる。
わたしは好きなひとがとても好き。そして好きなひとも、わたしのことをいっとう大切におもってくれているのを分かっている。
けれど彼は口下手で、筆不精だから、なんだかとっても傷ついてしまうことがある。そしてわたしは口達者で、フリック入力の達人だから、矢継ぎ早に彼を傷つけてしまうことがある。言葉は子犬のようだね…、だからわたしたち、傷つけあってしまうんだよね…。
わたしは好きなひとが愛おしい。
けれど、ときどきひどく軽蔑する。
このきもちが共存していいのかどうか、まだわからずにいる。いつかわかるのか、それが終着なのか、永遠なのかもわからずにいる。
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