【詩】錨

背中に砂の柔らかさを感じ
腹に水の重みを感じ
水底に横たわる身体
遠い地上の光りがゆらゆらと揺れ
伸ばそうとした腕は
水の重みに抗えない
目蓋は熱く
ゆるゆるとまばたきをする度に
体液が水に解けていく
誰も気づかないで
誰も思い出さないで
悲鳴に似た祈りを
重たい水が抱き締める
早くこの二本の足の爪先から
燃え上がる火柱のように
泡となって消えてほしい
私のいなくなった世界は
きっと今より煌めいて(色褪せて)いるから

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