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【SS】雪

 ふと目が覚めた。遮光カーテンを締め切った部屋は薄暗く、うすぼんやりした意識でスマホの電源を入れる。

 6時35分。アラームを設定している時間よりも25分も早い。

 もう少し寝ようとごろりと寝返りを打つ。布団が少しめくれ、むき出しになった肩に感じた空気の鋭い冷たさにぞっとした。

 そういえば、夜にかけて雪が降ると天気予報で言っていたような気がする。

 気になった私は意を決して起き上がる。上半身を包む冷気にめげそうになりながら、厚手のルームソックスを履き、上着を羽織ってベッドから出た。

 まだ寝ている宏樹を起こさないように、静かに寝室のドアを開けて廊下へ出る。足音を殺して、リビングへ入る。カーテンを少しだけ開いて外の様子を確認すると、一面粉砂糖を振るったような銀世界が広がっていた。

 感嘆の吐息が窓を曇らせる。どおりで寒いわけだ。

「菜々……?」

 背後から聞こえた寝ぼけた声にくすりと笑う。

「見て、雪がこんなに積もってるよ」

 眠そうな宏樹を手招きする。彼はゆっくりとこちらへ歩いてきた。

「雪? ……わぁ!」

 私と同じ反応にまたくすりと笑った。

「綺麗でしょ?」

「うん。こんなに積もるの何年ぶり?」

「どうだろう? ずっと見てられるね」

「俺は寒いからもう良いかな」

 そう言って宏樹はリビングの暖房をつけた。

「というか、寒すぎて目が冴えちゃった」

「私も」

 お互いくすくすと笑いあう。

 こんな寒い朝には、愛しい恋人へココアを淹れてあげよう。

「座って待ってて。今、お湯を沸かすから」

終わり

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