【詩】花を食む
花は甘い。
蜜の味がする。
大地の力をいただき、私は生きている。
退屈な箱庭。
幾度となく繰り返したチェス。
退屈すぎてあくびが出るけれど、私の根は地面の奥深くまでしっかりと張っていて、ここから出たら死んでしまう。
二人でここから逃げよう。
花は私が育てるから。
手を取り合って箱庭を出る。
汚い空気に肺が悲鳴を上げた。
血を吐き倒れる私。
あの子は泣いて、私も泣いた。
二人きりで生きられたあの箱庭に帰りたいけれど、もう力がない。
そばにいると繋がれた手は、無慈悲にも引きはがされ、私は一人箱庭へ。
花がまずい。
腐った蜜の味。
もうほとんど大地の力を感じない。
あぁ、あの子がいないと私は死ぬのか。
それも美しい。
私はかびた匂いのする花を食べ、そしていつしか幻覚を見る。
あの子と過ごした退屈な日々。それは、有限の煌めく宝石だった。
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