見出し画像

アメリカ横断自転車 1日目 パトカーに乗る

1日目
空港のベンチで起きる。
朝8時。天気は晴れ。

意外と寝心地のいい空港のベンチ



チャリを組み立ててサンフランシスコに向かう。

チャリは順調に完成していく。
しかし、ここで初めてのハプニングが来た。

自転車に必須なパーツがない。
おそらく飛行機の中で落とした。

探すのは無理、調達するしかない。
ネットで急いで探す。

この部品が取れたのは初めてのことだ。
知らない土地で知らないパーツを買う。

何とか見つかった。

届けてもらう住所がなかったが、街中にAmazonロッカーが沢山あったので、そこを指定した。


次の課題は空港からの脱出。
自転車を含めるととても1人で抱えられない荷物と共にどう移動するか。


しどろもどろしてると、近くのおばちゃん達が話しかけてきてくれた。
どの国でもピンチを救ってくれるのは優しいおばちゃんだ。

しかし、具体的な解決策が浮かばないまま、おばちゃん達が乗るウーバーが到着してしまう。

(ウーバー‥アメリカの個人タクシーみたいな感じのサービス)

するとおばちゃんの1人が駆け足で空港スタッフに駆け寄り、何かを伝えて帰ってきた。

「スタッフに警察を呼ぶように言っておいたわ、警察に助けてもらいなさい」

そう言いうと、財布から20ドル札を出して握らせてくれた。
そして「good luck 」と言って車で空港を去っていった。

20ドル札を握ったまま、しばらく立っていた。いきなり、最高の出会いをしてしまったような気がした。

間も無くして、お巡りさんがやってきた。

「なんか困ってる?」

事情を説明すると、お巡りさんは「金はあるか?」と私に聞き、この量の荷物が積めるタクシーがあるかをタクシーカウンターに聞いてくれた。

「積めるらしい、サニーベールまで155ドルだ」

(サニーベール‥空港から40キロくらい離れた地域。そこに知り合いがいる)

ありがたいが、さすがに高い。
失礼ながら「電車で行きたい」と言ってみる。

「うーんちょっとまって」

困ってるところに別のお巡りさんも来た。
もう完全に犬のおまわりさんと迷子の子猫状態だ。

するとお巡りさんが、結論を出して伝えてくれた。

「荷物を積んでパトカーで駅まで送ります。そこからあれこれ乗り継いでください」

その結論に驚きながらも、お巡りさんに急かされて荷物をまとめる。

パトカーが到着し、半ば強引に荷物を詰める。自転車は組み立てて途中のまま、後部座席に突っ込んだ。


連れて行ってくれたのは、空港に隣接する駅だった。
丁寧に乗り継ぎまで調べてくれて、駅員さんにも話をつけてくれた。



最後に「ありがとう」というと、お巡りさんは少し照れくさそうにしながら手を合わせて「アリガトウ」と返し、去って行った。

これでとりあえずサニーベールまでいける。
知り合いのところに荷物を置かせてもらって、明日部品が届くのを待とう。

そんなことを考えながらチャリを袋に詰める。

すると今度は、また違うおばちゃんが話しかけてきてくれた。

詳しいことはわからないが、

「自転車で困ってるの?近くの自転車屋知ってるからウーバーで行きなさい」

と言っているようだった。

立て直しの見通しが立ってたので遠慮しようと思ったが、もうウーバーを手配してくれたらしい。しかも25ドルほどの費用はおばちゃんが持ってくれた。

「困ってる時は助け合いだよ」

そんなことをいうおばちゃんに、ひたすらお礼をいった。

ウーバーが到着し、荷物を積む。
別れ際に国旗に名前を書いてもらった。

「ありがとう」と日本語でいうと、おばちゃんは嬉しそうにしてくれた。

これで、ようやくの空港脱出である。

自転車屋に到着しても、該当する部品がないのではと心配したが、案外あっさり欲しい部品にありつくことができた。


色々あったが、これでチャリを組み立てられる。

正直、これまでで一番感動したかもしれない。
もちろん、運良く自分に良くしてくれる人に連続で巡り会えただけで、全ての人がこうではない。
でも、それと同じように、人種差別、銃やクスリの脅威、そこから来る治安の悪いイメージ、それもアメリカの一側面に過ぎないことを実感した。

そしてこの時、初めてこの国を3ヶ月間旅することができる気がした。

チャリが組み上がり、これからサンフランシスコに向かう。

長い長い道のりの最初の一歩、かなり遠かったが、ようやく踏み出すことができた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?