マガジンのカバー画像

怪力乱神事典

21
妖怪・UMA・宇宙人等の情報を主観的にせつめいする事典です。
運営しているクリエイター

記事一覧

沼御前

 福島県の沼沢沼に巣食う大蛇の妖怪。昼は美しい女の姿だが、夜になると大蛇の正体をあらわすのだと言う。

 世はまさに大鎌倉時代。当時の会津を仕切っていたのは佐原義連という豪胆な武将でした。彼は神奈川の族あがりで、かつての全国抗争(源平合戦)では源氏の特攻隊長を務めた伝説の男です。どんくらいのレベルの伝説かというと、一ノ谷の合戦の「鵯越の逆落し」では、べつに頼まれてもいないのに急勾配の断崖を先頭切っ

もっとみる

一目坊

 最上山中に根城をかまえる単眼の妖怪。
 みんな大好き『老媼茶話』にはこんな話が載っているよ。

 辻源四郎という侍が病を得て塔の沢の温泉で湯治をしていた時のこと。お風呂で博学な老僧と仲良くなり、諸国の珍しい話など聞きながら楽しく過ごしておりました。その老僧が寺に帰る前夜、源四郎にこんなことを言いました。
「寺は宿の近くにございますので、よければ遊びにいらしてくだされ。目の前の谷川沿いに登りつめ、

もっとみる

舌長姥

 敵1体を身ぶるいさせて1ターン行動不能にし、さらに守備力を激減させる「ひゃくれつなめ」を使う長い舌の妖怪。こいつに舐められた男は肉という肉をねぶられ、最終的には骨だけになってしまうという。ハードコアだね! ひゅー!

『老媼茶話』にはこんな話が載っているよ。
 二人の旅人が諏訪千本の松原付近の街道から大きく道を外れ、道に迷ってしまいました。きっと彼らはガーディアンメダルねらいのingressエー

もっとみる
塩の長司

塩の長司

 加賀の小塩の浦というところに谷口ジローが作画したような風体の長者が住んでいて、「塩の長司」と呼ばれておりました。
 この長司先生、昔の日本人には珍しく肉食を愛する孤独のグルメで、死んだ馬の肉から自家製塩漬け・自家製味噌漬けを作っては食べていたそうです。

 しかしある晩の夕餉。膳には大好物の馬肉が並んでいませんでした。
 もぐもぐ。
 早く馬肉こないかなあ。
 白めしといった馬の肉だろうが。
 

もっとみる

座敷わらし

 青森、岩手、秋田などに伝わる子どもの姿の妖怪で、棲みついた家をスピードワゴン級に速攻大繁栄させるという業界随一のお役立ちスキルを有しています。その代わり、座敷わらしが去った家は急転直下の没落コースをたどるのだとも言います。

 座敷わらしに会える宿として、金田一温泉郷の旅館「緑風荘」がつとに有名ですね。原敬や本田宗一郎、松下幸之助などといった錚々たるレジェンドの運気を大いに向上させたということで

もっとみる
火車

火車

 仏教でいうところの「火車」というのは轟火をまとった荷車で、これに乗せられて罪人は地獄へと運ばれていくんだそうです。いっぽう妖怪の「火車」といえば獣のような風体の妖怪で、一般には化猫がその正体と言われています。

 さて、悪行妖怪「火車」は一体いかなる悪事をはたらくものか、みなさんはご存知であろうか。君はわりと陰気で幸うすそうな顔をしているから、よそ様の葬式に参列する機会もそこそこ多かろうと思い

もっとみる
溝出(みぞいだし)

溝出(みぞいだし)

 ある貧乏人が亡くなった時のこと。残された身内もとうぜん貧乏人なわけで、葬式をあげる金もないという貧困スパイラル。貧すれば鈍すとはよく言ったもので、せめて簡素な墓でも建ててやればよいものを、貧乏遺族どもは故人の死体をつづらにつめこんで無課金のフリースペース(道ばた)に投棄してしまいます。今も昔も、えてして貧乏人は無課金が無課金たるゆえを考えようとしない。いやはや、じつに浅はかなものです。

 後日

もっとみる

寒戸の婆

 柳田国男先生の名著『遠野物語』に収録されている話。

 ある時、松崎村の寒戸という土地に住む女の子が梨の木の下に草履を脱ぎ捨てたまま行方をくらましてしまいました。近隣住民は鉦鼓を叩いて大騒ぎ。隣家の婆なんかもメイちゃーん、なんつったりして必死で探し回ったもののとうとう見つからず、あの子は神隠しに遭ったに相違ないわい、ということになったのでした。

 そして三十年後。原書には「親戚知音の人々その家

もっとみる

肉吸い



 熊野山中に現れる妖怪。

 姿かたちはハイティーンの女子。やたら美人なんだそうです。その美人が、人気のない夕間暮れの山中で「ホーホー」と笑いながら道ゆく男に近づいてくる。そんな女、どう考えても怪しいですよね。しかし男子はかわいい女子の前だと思考が停止する生物なので「ウェーイ、チスチス、ウィーッス」などとカタコトで気さくに挨拶を交わしてしまうのですが、これがよくない。まじでよくない。

 先方

もっとみる
タラスク

タラスク

 二千年前までフランスのローヌ河沿いの森に棲んでいた怪物で、上半身はヤマネコ、下半身は魚、カメの甲羅に六本の脚、ドラゴンの体を持ち、毒息を吐き、燃えるうんこを脱糞し、いつも静かに笑っている。そんな怪物です。とにかくわやくちゃな造形なんです。

 ジェノヴァ大司教の著した殉教者列伝『黄金伝説』やWikipediaには次のような伝説が伝わっておるよ。

 ネルリュク(黒い森)付近に現れる怪物タラスクは

もっとみる

コサメ小女郎

 和歌山県日高郡龍神村のオエガウラ淵に棲んでいた妖怪。その正体は年経たビワマスだかヤマメだかだそうで、こいつがまた悪いやつなんだ。何をするかというと、淵の近くを非モテ男子が通りかかると美少女に化けて水の中へと誘惑する。非モテ男子は女子の誘惑に耐性がないもんだから「えっ? どこ? あそこの淵? あそこの淵に落としちゃったの? スク水を? え、拾ったらお礼に? 着替えてくれんの? この場で? えっ? 

もっとみる

鰻男

 岩手に伝わる妖怪伝説。
 雫石村にやたら可愛い女子がおりまして。その女子のもとに、いつの頃からか若い男が忍んで会いに来るようになりました。娘が男の氏素性を尋ねても男は一切返事をしなかったのだけど、彼女にとってはそれがむしろミステリアスな男の魅力として好意的に解釈され、娘はますます男に惹かれてゆきます。そしてある晩、燃え上がるような二人の恋は、ついに彼らを肉欲という名の惑溺の淵へと深く沈めるに至っ

もっとみる
長壁姫(おさかべひめ)

長壁姫(おさかべひめ)

 姫路城の天守閣に棲みつく妖怪。お城の一隅を占有する家賃代わりに、年に一度城主と面会して城の運命を教えていたそうです。
 その正体は妖狐の類と言われていて、猪苗代城の妖怪姫「亀姫」は長壁姫の妹であるという設定もあります。全国の各お城にきゃわいい妖怪姫が住んでいるなんて、最近の萌え系ソシャゲとかにありそうな設定ですよね。人類はまるで進歩していない。

 むかしお城のみんなで「妖怪のいる最上階までおし

もっとみる

油ずまし

 むかし熊本の草積越という山道を婆と孫が歩いていた時、婆が孫に言うわけですよ。「そういえば、ここらには昔油瓶下げたのが出たそうじゃ」みたいなことをね。そしたら草むらからガサガサと妖怪が出てきて、「今でも出るぞー!」と怒鳴ったんだそうです。とまあ、そういう地味な話だけが伝わっている妖怪です。

 しかし「草積越には油瓶下げた奴が出たそうじゃ」って言われても、孫的には反応に困ると思うんですがどうでしょ

もっとみる