「ととのう」サウナ


夜の10時。バイトが終わり、退勤のタイムカードを刻んだあと、最近の私は真っ直ぐ帰らない。
行くところがある。


サウナだ。しかも貸し切り。


というのも、私はホテルで働いている。
このバイトの良いところのひとつは、退勤後、温泉に入ることができることだ。

時間が遅いのでお客さんもほとんどおらず、日によっては貸し切り状態になることもある。

最近は寒いし、何より私は風呂に入るのが苦手(入ると決めてから実際入るまで何時間もかかる)ので、バイト先でさっさと風呂を済ませて帰ると心も体もホックホクで就寝できる。
なので、はやくあがれた日はお風呂に入ることにしている。


そんなわけで今日も、温泉にはいってから帰ることにした。

洗髪洗体


広い脱衣所で手早く全裸になり、そそくさと中に入る。
湿度の高い湯気がモワンとたち、大浴場に引き戸の音がガラガラ……と響く。

どうやら、お客さんはひとり。寒空の下、露天風呂にいるようだ。


うちの温泉はとろとろヌルヌルした質感なので、床が滑りやすい。
でもこのとろとろ感がすごく気持ちいいんだよな、と思いながら髪を洗う。

シャンプー・リンスは備え付けのものでもいいのだが(むしろ匂いは好き)乾かしたときにきしむのが気になるので、今日は携帯用シャンプー・リンスを持参してみた。普段使っているものではないから、匂いも新鮮で良い。

ザーっと急いで体を洗う。なぜ急いでいるのかというと、温泉利用の終了時刻が残り35分と迫ってきているからだ。
髪を乾かすなどの身支度を考えるとあと20分であがらなくてはならない。

そう、あと20分でサウナで整えないといけないのだ。

ちなみにここのカラン(体を洗うあの場所のこと、蛇口の意味らしい)は、温泉水が出るところと、水道水が出るところの二種類あって、なんとなく前者をいつも選んでいる。水道水のところも使ったことはあるが、違いは不明。でも蛇口から温泉水がでるって特別感あっていいよね。



スピーディーサウナ


果たして、20分ごときでサウナに入って気持ちよくなれるものなのか。

サウナ経験も知識もほとんどないが、なんとなく、サウナ12分→水風呂→休憩→サウナ→水風呂、、、みたいな流れが王道とされていることは知っている。

一般的には、10分程度のサウナ→水風呂→休憩(外気浴)を3セットほどが良いらしい。


どう考えても時間がない。
しかし、なんとしても達成しなければならない。

今日はサウナにはいると決めたのだから。


速攻でサウナ室に入る。
中の注意書きを見てはじめて、体の表面に水分がついていてはいけないことを知る。体表面温度が下がるからだそうだ。そりゃそうか。
とりあえず6分入って水風呂に行くことにした。

温度は83度。じわじわと体がほだされていくのを感じる。あつい。これは修行だ。
先ほどのお客さんはもういなくなり、この遅い時間にサウナに来る人はもういるまい、と私は歌を歌ってカロリーと時間を消費する作戦に出た。
今考えると謎の行動だが、暑い中じっと黙って耐えるのは苦痛なのだ。


そして水風呂。これを1分半くらい。

胸まで浸かるには勇気がいるが、これは勢いでいくしかない。
小学校低学年のときの、プールの授業で、消毒用のプールに30秒浸るあの感覚に近い。みんなで浴びる冷たいシャワー(通称:地獄のシャワー)もどきどきしたなあ。
一度肩まで浸かってしまうと、これがすごいもので、始めに感じていた冷たさはなくなり、体に薄くて温かい膜が張ったように感じる。(特に、1回目の水風呂はめっちゃ冷たいが、2回目の水風呂は驚くほど冷たさを感じない。)


今回はこれを2セットして、だいたい15分くらいだった。(休憩はしていない……)
最後に温泉にちょっとだけ入った。


急いでいてもリラックスできる


感想としては、上がったあともめちゃくちゃホカホカしていて、良かった。
水風呂後にきちんと休憩をしなかったので、俗にいう「ととのう」というのとは違うのかもしれないが、体が芯から温まり、なんだか元気になったような気がする。

あと、水風呂の中で感じたのが、
高温の場所と、低温の場所にはいって体がびっくりして、温度に高低差に振り回されている感覚があるのだが、その振り回されて残った芯みたいなのが、体の軸だな〜ということ。
言葉にすると難しいのだが、金属の棒が弾かれて揺れているうちに揺れが小さくなっていく感じ。その間に疲労やストレスが振り落とされて、まっさらな体になったような感覚、といえばいいだろうか。

とにかく、短時間ではあったが、非常に良い気持ちになった。

奥が深そうなサウナの世界



サウナについて調べていると、今回私がやらなかったこと、試したいことがたくさんあった。

・空いていたら、サウナ室で寝てみる(座るより効果が高いらしい)
水分補給をする(してなかったので若干ふらついた)
・休憩して「ととのえる」
外気浴をすると尚良し


就業後に入れるという贅沢と、ほとんど貸し切りというノンストレスな状況でサウナにも温泉にも入れてしまう幸福を噛みしめつつ、
これからも貪欲にサウナを楽しんでいきたいと思う。

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