呪術廻戦と僕
三年くらい前、入院していた。
三人部屋に知らないおじさんと僕の二人だけ。
診察と食事以外にすることもなかったので、ネットで呪術廻戦を取り寄せて読んでいた。
狭い病室だから本を置く場所は限られる。
数日おきに見舞いに来る家族に三冊ずつ持ってきてもらい、
病室の引き出しにしまっていた。
読み終わったら次の三冊を持ってきてもらった。
当時の僕は心を病んでいたのであまり何かを楽しむ余裕はなかった。
とは言え、入院生活は退屈なので何かをして気を紛らわせたかった。
食事は決まった時間と午後三時にしか取れなかったので好きに何かを食べる事は出来なかった。
かと言って誰かと会話をするのも気が進まない。
小さな図書室みたいな部屋から好きに本を二冊借りて読むことも出来たけれど真新しい本や読みたい本はなかった。
そんな時、少し前からジャンプで連載中の呪術廻戦に白羽の矢が立った。
元々本を読むのは好きだった。
バトル漫画は好きだし、呪いに纏わる設定もなかなか凝っていてすぐに惹き込まれた。
アニメも観た。
映画も観た。
ユニクロのコラボTシャツも買った。
退院した後訪れたメイド喫茶では
偶然にも推しのメイドさんが呪術廻戦のファンだった。
僕の日常が少しずつ呪術廻戦に満たされていった。
今日、公式から発表があった。
完結まで残り五話。
残り五話。
晴天の霹靂だった。
もっと時間がほしい。
確かに最近は休載が多くなっていた。
作者の体調が心配だった。
そうか。
寂しいけれど。
芥見下々先生が決めたことなら僕は受け入れようと思う。
お身体を大事にして欲しい。
九月三十日。
その日まで。
僕は精一杯楽しませてもらうつもりだ。
ちょっと早いけど。
ありがとう呪術廻戦。
それしか言う言葉が見つからない。
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