【中学受験日本史】1. 石器時代

わしの名は乙事主(おっことぬし)。日本の西の端の方にある、鎮西(ちんぜい)(今でいう①地方)に住む大猪(おおいのしし)だ。

今日は私の祖先の話をしようか。
わしらは、太古の昔から日本といまの人間どもが呼ぶ陸地で暮らしてきた、古き神の一族だ。
(いきなり脱線するが、わしのモトカノのモロも、種族はヤマイヌ②と、わしらとは異なるものの、やはり太古の昔から日本に住む古き神の一族だ)。

わしらは実はな、昔から人間どもと仲が悪かったわけではない。今では日本列島と呼ばれる陸地に住んでいた、動物を狩ったり(狩猟)木の実を拾ったり(採集)魚を取ったり(漁労)する、人間どもの祖先③とは、うまいこと共存しておった。それは彼らが、我々古き神にちゃんと崇拝(すうはい)の念をもっていたからだ。

わしら種族にとって大変な天変地異⑤が起こったのが(⑥)前のこと。
なんかやたらと太陽ギラギラ、めちゃくちゃ暑くなり始めた。来る日も来る日も、何年も何年もずーっと茹(う)だるような暑さでな、わしら分厚い毛皮を持つ種族は、それはそれは大変で、暑さに耐えられず、人間たちに頼んで自分の毛皮をそってもらったものも現れたほどじゃ。その中には、うっかり獣になりさがってしまい、まんまと人間に食われてしまった愚か者すら現れよったわ。

(日本の新石器時代の遺跡から、豚の骨も出土している。)

この部分は史実です

何年もの間、灼熱(しゃくねつ)の太陽をゼイゼイいって耐えしのいでいたら、どういうわけか、海がどんどん陸の深いところまで押し寄せ始めた。年々海が陸をどんどん侵食してきて、しまいにどっちを向いても水浸し(みずびだし)、まあめっちゃ びびったわ。

(この時代、平野部の奥の方まで海であったため、モースが発見した⑦貝塚をはじめとして、現在の内陸部で多くの貝塚が発見される。)

この部分は史実です

わしがいままで「日本列島と人間どもが呼ぶ陸地」と、もってまわった表現で自分がいま生息している地域を呼んできたのは、実をいうとな、1万年前の日本列島は、世界で最も広大な(⑧)大陸と陸続きだったのじゃよ。
同じく古代の神であったナウマンゾウの一族も、ノシノシとよく大陸から遊びに来ておったものじゃ。まあ、ナウマンゾウは、熱くなりすぎたのと、太古の神に崇拝の心をもたぬ不遜(ふそん)な人間どもに狩り殺されて全滅したらしいのじゃがな、気の毒に……。

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さて話を戻すと、そんなこんなで⑧大陸と日本列島との間に⑨海ができた。おかげで、のちの時代の人間どもの遣唐使たちは、この⑨海の荒波を羅針盤(らしんばん)越えねばならず、日本への生還率が半々だったわけじゃな。
そして日本列島の⑨海側には、冬のたびにどかっ!と大雪が降るようになったのじゃ。
わしらはその昔は、わしの棲み処(すみか)の鎮西のある①地方からずっと、今の人間どもが⑩地方と呼んでいるところや⑪地方と呼んでいる大きな島まで問題なく歩きで移動することができたのじゃが、いまは鎮西のある①地方から、⑩地方までたどり着くためには、荒波の⑪海峡を泳いでわたらねばならぬ。つまりはこの気温が上昇した時代に、⑫海まで生まれたっちゅーわけやな。ちなみに⑪海峡を渡るのに、人間どもは、平家が滅びた壇ノ浦から鎮西のある①地方まで、海の底のトンネルを通る山陽新幹線で渡ることができるそうじゃ。

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わしゃ体がでかいので、泳ぎは得意ちゃう、億劫(おっくう)でかなわぬわ。人間どもに媚びるのは悔しいが、山陽新幹線のチケットこんどとったろか、乙。ン、何、わしキャラ変しとる?いやーそんなことないで、こういうしゃべり方じゃないと、立派なユーチューバーになれぬと思っておるだけじゃ。

あーそうじゃったそうじゃった、もっと大切なことがあるんじゃった。おい、若いの、わしももう歳が歳じゃで、忘れそうになったら突っ込んでくれかの。
この天変地異によって、我々にとって、もっと致命的な事態が起こった。

わしらの生息してきた日本の太古の森が半分くらい水没(すいぼつ)してしまい、住むところがなくなり、食べ物の草木も海に沈んでしまったのじゃよ。わしらの太古の森は、今の日本の山と異なって、ブナなどの⑬大木からなる、鬱蒼(うっそう)たる暗い森じゃった。おおよそ人間どもを寄せ付けぬ深い、ふかあい森じゃった。今の日本の山に人間どもがちょぼちょぼと生やした、あの木⑬はな、わしらは森とは呼ばぬ。せいぜいが林じゃな。

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この後、さらにわしらを絶体絶命の窮地(きゅうち)に追い込む天変地異がもう一度起こる。約7300万年前、九州の鬼海カルデラが、「今もう一度この噴火があったら世界終ー了♪」というほどのすさまじい大噴火を起こし、ワシらはその大半が死によったのじゃ。わしらが長らく仲良くしてきた、鎮西のある①地方に住む、古き良き人間どももほぼほぼ死に絶えた。

この部分は史実です


この天変地異以降、わしら種族はみな、火が大嫌いだ。
おかげで今のわしらをみよ、数は少なくなり、みんな小さくバカになりつつある。そして、その小さくバカになった なれの果てが、昭和30年代まで生き延びて所沢の鎮守(ちんじゅ)の森に棲んで子供たちと遊んでおる、トトロとか人間どもの子供に呼ばれて浮かれとるお調子者の種族じゃ。情けない話じゃが、あんな情けないのでもな、日本の古い神の末裔(まつえい)なのじゃ。そして、わしら古代の神に尊敬の念を持つ③から器のつくり方を学んで⑭、自分の洞(ほら)の中に置いているのだ。

  1. 乙事主が住む鎮西(ちんぜい)①は、何度か日本史に登場する地名です。現在の何地方に存在すると考えられますか。

  2. モロの属するヤマイヌとは、昔の日本では神とされたニホンオオカミ(狼(おおかみ)=大神)ですが(狼を祭る神社が日本にはある)、明治時代に絶滅しました(youtubeニホンオオカミの復元と展示)。なぜ絶滅したのか、はっきりしたことは解っていないようなのですが、人間の活動が悪影響を及ぼした可能性があると考えられています。ニホンオオカミがなぜ絶滅したか、自分なりに推理しなさい。

  3. ③の太古の、日本人の祖先は何と呼ばれていますか。

  4. 「天変地異」とはどのような意味か、文章から推測して、自分の言葉で書きなさい。

  5. グラフは世界の平均気温の変化を示しています。グラフから、⑥がおおよそ何年前に当たるかを埋めなさい。また、このように、暑さによって、海面が上昇する仕組みを自分の言葉で説明しなさい(難)。

  6. ⑦~⑫の空欄を、全て埋めなさい。

  7. ブナなどの大木からなる、うっそうとした、シシガミの森のモデルになった森林が、鹿児島以南の島に存在します。太古の樹木が数多く残るといわれる、世界遺産にも登録されている、この島の名前を答えなさい。
    https://yakukan.jp/wp-content/uploads/2024/03/spot-jomon-sugi-cedar-02.jpg

  8. 現在私たちが山に行くと目にすることのできる⑬の林は、主に二種類の木からできています。住宅を建てる時の木材としても活用されているこの木は、何と何ですか。ヒント:片方は花粉症の原因になっています。

  9. ⑭の器のことを、何といいますか。またどうしてこのように呼ばれていますか。

【中学受験日本史】のその2はこちらじゃ。

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