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下肢切断者の機能予後

タイトル
下肢切断者のリハビリテーション効果と予後 - 影響する因子の検討

著者名
猪飼哲夫、植松海雲、般祥沫、橋本圭司、宮野佐年

雑誌名
リハビリテーション医学

公開年月日
2001年2月

研究の問いや目的

本研究の目的は、過去9年間にリハビリテーションを受けた58名の下肢切断者におけるリハビリテーション効果と機能的予後を評価することです。特に、年齢切断レベルがリハビリテーションの成果に与える影響を詳細に検討することを目指しました。これにより、リハビリテーションの効果を最大化し、切断者の生活の質を向上させるための具体的な指針を提供することを目指しています。

研究や実験の方法と結果

方法
- 対象者:本研究の対象は、東京都リハビリテーション病院に入院し、リハビリテーションを受けた下肢切断者58名です。対象者は年齢(60歳以上60歳以下)および切断レベル(大腿切断下腿切断)に基づいてグループ分けされました。
- 評価方法:退院時のADL(Activities of Daily Living)スコアを測定するために、FIM(Functional Independence Measure)を使用しました。また、退院後の予後についてはアンケート調査および電話インタビューを通じて評価しました。
- 義足装着率と歩行獲得率の評価:義足装着率とは、義足を装着している患者の割合を指し、歩行獲得率とは屋内で50メートル以上の歩行が可能な患者の割合を指します。

結果
- 退院時の評価:退院時において、片側大腿切断者と片側下腿切断者のADLスコアおよび歩行獲得率に有意な差は見られませんでした。具体的には、片側大腿切断者のADLスコアは80点に近く、片側下腿切断者と同等の歩行能力が確認されました。
- 年齢による影響:60歳以上の高齢患者では、歩行獲得率が60歳以下の若年患者に比べて有意に低いことが明らかになりました。特に、片側大腿切断者においてこの傾向が顕著であり、高齢者の歩行獲得率は大幅に低下していました。
- 退院後の予後評価:退院後の予後に関するアンケート調査の結果、切断レベルによる義足装着率、歩行能力、ADL依存度に有意な差は見られませんでした。しかし、高齢患者は義足装着率が低く、ADLの依存度が高い傾向が確認されました。また、併存疾患の有無は機能的予後に有意な影響を与えませんでした。

研究や実験の結果から得られる影響

本研究の結果から得られる影響として、適切なリハビリテーションと義足の使用により、片側大腿切断者でも片側下腿切断者と同等のADL自立が期待できることが示されました。特に、年齢が下肢切断者の機能的予後に重要な影響を与える要因であることが明らかになりました。高齢患者はADLの自立度が低く、歩行能力も低下するため、リハビリテーションプログラムの設計において年齢を考慮した個別のアプローチが必要です。また、切断レベルや併存疾患の有無が機能的予後に有意な影響を与えないことから、リハビリテーションのプログラムは全ての切断者に対して包括的に提供されるべきであることが示唆されます。

この論文の結論

下肢切断者のリハビリテーションにおいて、年齢は機能的予後に大きな影響を与える重要な要因であることが確認されました。高齢患者はADLの自立度が低く、歩行能力も低下するため、特に高齢切断者に対しては年齢に応じたリハビリテーションプログラムが必要です。また、適切なリハビリテーションと義足の使用により、片側大腿切断者でも下腿切断者と同等の機能回復が期待できることが示されました。今後、血管障害による高齢切断者の増加が予測されるため、より機能的で装着しやすい義足の開発が望まれます。本研究の結果は、下肢切断者のリハビリテーションプログラムの改善と、患者の生活の質の向上に寄与する重要な知見を提供しています。

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