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人間になりたい日記#185「キム・ジョンギさん」

2022年10月11日 キム・ジョンギさんのこと

 先々週のラジオで「ポルトガルでキム・ジョンギさんに会えて嬉しかった」と話しました。
 その嬉しいの中には、これからいろんな時間を一緒に過ごして、もっと仲良くなれる楽しみも含まれていました。

 初めて会ったジョンギさんはずっと笑っていて、絵を描く小学生の男の子みたいな人でした。
 私たちより一日遅れてポルトガルにやって来て、一日早くほかの国へ旅立って行ったジョンギさん。
 ポルトガルで一緒にいたのは三日間でした。

 ホテルが同じだったので、朝食や夕食で偶然何度かご一緒しました。
 寺田克也さんと同じスペースでライブドローイングをしていて、二日目にはふたりでコラボレーションしてTHUのモチーフであるユニコーンの絵を描いていました。
 大きな絵をたったの1時間で描き上げてしまったそうで、私はその間アーティストのYukoShimizuさんとイラストレーターのAiさんたちとフェリーに乗ってSetúbalへ遊びに行っていたので、会場に帰ってきて完成している絵を見た時はとても驚きました。

 そんな風にしてふたりとも朝から晩まで絵を描いているのに、時間ができると絵を描いてしまうようで、食事の時間も紙ナプキンにふたりで絵を描きつけていました。
 ジョンギさんも寺田さんも英語はカタコトだけど、絵を描いていると無言でもわかりあうところがあるようで、私がふたりの関係を勝手に言っても仕方ないのですが、親友のような感じが、そばで見ていて伝わってきました。

 ジョンギさんはいつも所属している会社・superaniの人たちと一緒にいて、社長のヒョンジンさんや、アーティストのドンホーさんとArmel Gaulmeさん、通訳の女の子や、カメラマンの男の子、ずっと冗談ばかり言ってるフランス人の出版社のおじさん(彼は私が英語が得意ではなくて、もたもたとしか話せないとわかっているのに、ずっと話しかけてくれた)たちと移動していて賑やかそうでした。
 寺田さんとの付き合いは10年ほどになるそうで、ふたりはこれまでもいろんな国で会っていましたが、いつも寺田さんはひとりで移動していたので、私とふたりでいる姿が見られて嬉しいと、最後の日にレストランでみんなで食事をしている時に、通訳の女の子を通じて話してくれました。

 レストランからホテルに帰る時、私と寺田さんが手をつないでいたら、ジョンギさんがこちらを指差して転びそうになるくらい爆笑していて、本当に小学生の男の子みたいで面白かったです。

 レストランでの食事を終えてお別れになるはずだったのですが、翌朝ホテルの朝食で偶然一緒になって、さらにその後部屋に戻ってから会場へ向かう時にエレベーターから降りたら、ちょうど帰りのフェリーに乗る前のジョンギさんにばったり会いました。
 お別れしたのに何度も会うので少し恥ずかしかったですが、その時にはまさか10日後に亡くなるなんて思ってもみませんでした。何かのタイミングが、私たちを何度も会わせてくれたのかもしれません。

 ウェディングドレスを着た私と、タキシードを着た寺田さんのイラストを描いて画集を送ってくれたこと、お礼ができていないままでした。
 人が亡くなることが、こんなに取り返しのつかないことだと思っていなくて、今週はずっとジョンギさんのことを考えていました。

 次はソウルで会いましょうねと言ったのに。
 たった三日間、もしポルトガルに行かなかったら、こんな気持ちになることもなかったのにと思ったけれど、ジョンギさんと過ごした時間がとても楽しかったから、やっぱり最後に会えてよかったと思っています。

『姫乃たまの「ラジオ消した?」』#185「キム・ジョンギさん」
Radiotalk▶︎https://radiotalk.jp/talk/885115
Spotify▶︎https://open.spotify.com/episode/1xJr3d4jF5WKWEbaPkf2f1?si=WDpWb4mzTGqSBGZY-NEgMA
Apple Podcast▶︎https://podcasts.apple.com/jp/podcast/185-%E3%82%AD%E3%83%A0-%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%AE%E3%81%95%E3%82%93-from-radiotalk/id1525068219?i=1000582281445

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