妊娠にまつわる小話



二〇二〇年といえば、新型コロナ。まったく影響を受けなかった人はいないと思う。

 私立大学で業務委託の仕事をしていたあたしも例外ではなく、春休みの延長やらオンライン授業やらの影響で自宅待機となる日が多かった。
幸いなことにお給料はいただけたから、当面の生活の心配はなく、ソファに転がりながらコロナ関連のニュースを眺めて過ごしていた。

 テレビでは、各国のコロナ対応もしばしば取り上げられていた。色々見たはずだが、印象的だったのは「女性がリーダーを務める国のコロナ対応が優れている」とかいう話で、それ自体が本当なのかどうかはあたしにはわからないのだけれど、世の中にはすごい女性がたくさんいるのだなあとあたしは受け止めていた。
特にニュージーランドのアーダーン首相はあたしと同年代、身長もさほど変わらないのに一国の首相で、この有事の舵取りをし、さらには首相になってから出産した子どもの育児もしているのだという。色々な人生があるなあ。

 その頃、あたしは不妊治療真っ最中であった。結婚から三年。夫と出会って五年。女に生まれて三十六年経っていた。


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