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脱走犯

似たような色が
1、2、3、4、5
何度数えても1つ足りない

部屋を隅まで
作業場の奥まで
庭の端まで
探してみても見つからない

こんな時は心が凍る
時が止まる
味がなくなる

自分だけが
無味無臭不動の世界で
ただ壁を引っ掻き
足掻いている気になる

無駄だと思っても
同じ作業を繰り返す
陽が翳り
すっかり落ちても
ピクリと動く影を
目の端で探す

やがて夜が心底から暮れ
諦めきって滲む目の先に
ゆらり
亡霊のように
淡い色のついた影が浮かんで
やっと私の時間が戻る

ひとしきり
自動演奏ピアノみたいに
勝手に出てくる罵詈雑言が
止んだ時
握り潰す程抱き締めて泣いた

馬鹿野郎が。

結局そいつはどこ吹く風
腕の中で満面笑顔
きっと絶対またやる顔だ

お前のことだよ
泥足脱走犯
大人になっても顔も心も
子供のままの
無邪気な末っ子

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