狂犬病をまた考える①春のワクチン接種は "目安"
春ですね~!桜の開花宣言も聞かれるようになりました。日も長くなり、わんことのお散歩には絶好のシーズン。ウチはこの時期、早咲きの河津桜を見に行きます。柔らかい日差しのもと、かわいいピンク色をたっぷり楽しんできました。
この時期のあんまり嬉しくないモノ
ステキな季節ですが、この時期、わんこたちにはあんまり嬉しくないものがありますよね。
注射!
「狂犬病予防法(昭和二十五年法律第二百四十七号)」(以下、法律)によって、わんこ(だけ)に毎年ワクチンを打つことが義務付けられています。
住んでいる地域によっては、春に案内のハガキが来たりしますよね。でも、法律が注射の時期を決めてる訳じゃないんです。書いてあるのは”年1回”:
「春に打ちましょう」としているのは、“省令”と呼ばれるものです。(ご参考: いわゆる「動物愛護法」の改正に合わせて環境省が作った通称「数値規制」も省令です。業者が犬と猫を飼育するケージの大きさとか、いろいろ細かい規則ができました。)
「狂犬病予防法施行規則(昭和二十五年厚生省令第五十二号)」という省令があります。法律の施行に合わせ、細かいトコロを担当の厚生省(現在の厚生労働省)が規則として昭和25年に決めました:
"4月から6月"の意義(?)
で、どうして4月1日から6月30日なんでしょう?子犬は季節に関係なく生まれます。夏から冬に最初の注射を打つ子の方が多いはず…。
総務省が2014年に作成した文書に、厚生労働省の見解が書かれています:
要するに、「忘れないように」という余計な ^_^; 心遣いらしいです…。このタイミングについて、総務省は見直しの余地があるとしています:
ワクチンには必ずあるリスク
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のせいで、テレビなどでも見ることが増えましたが、ワクチンにはリスクが必ずあります。
狂犬病ワクチンは、開発されてからおよそ100年が経過しています。COVID-19のワクチンと比べれば、遥かに実績がある安全性も高いモノです。過剰な心配はいらないでしょう。
でも、私たち人間は、100%安全なワクチンを作れていないのも事実です。狂犬病ワクチンも、接種後に毎年
30頭ほどが重い副反応に苦しみ、
約10頭のわんこが命を落としています。
2021年度は、全国で約430万頭が接種を受けています。そのうちの"30"とか"10"とか…。数としては、確かに少ないと言えます。でも、それは単なる数字ではなく、1つ1つが"命"。そして、それに"我が子"が含まれない保証はありません。
タイミングは慎重に決めましょう
リスクはできるだけ少なくしたいものです。大切な家族の一員である愛犬の命と健康を守れるのは、私たち飼い主だけ。
狂犬病ワクチンについて、法律で決められているのは "1年に1回"。子犬が生まれて「お散歩デビュー」するタイミングはまちまちです。最初の注射を春先に打つ子もたくさんいます。なので、省令にはこうも書かれています:
この”3月2日”にはそれなりの根拠があると思いますが、それは別の機会にご紹介します。いずれにしても、少なくとも成犬の場合は春に打たなくても良いわけです。前回の接種時期や現在の体調について、信頼できる獣医さんとよく話し合うことをお勧めします。僅かであっても確実に存在するリスクをなるべく減らすため、
接種タイミングは
慎重に決めるのが安心
だと私は思っています。
健康上の理由で注射を延期した方が良い場合、獣医さんに猶予証明書を書いて頂くことができます。接種証明と同じように、地域の保健所などに提出します。法律上の規定がないため、法的に「これで、狂犬病ワクチンは打たなくても良いんだ!」とはなりません。でも、慎重に「今は」接種しない判断をし、それをキチンと報告しておくことは大切です。
70年以上昔と社会も科学も同じ?
ただ、国家資格をもった専門家である獣医師が正式に書いた猶予証明に、法的根拠がないっておかしいと思いませんか?次回は、その辺をご紹介します。
そこから、人間と犬の命を守るために、もっと安全で確実な方法を考えてみたいと思います。狂犬病予防法ができたのは1950年です。
70年以上が経って、科学は進歩し社会環境も変化しました。法律または省令に、"改善"すべき点はないのでしょうか?昭和25年の終戦直後のように、街なかに野犬がウロウロしているような地域はあまり無いのではないでしょうか?
さらに大切なことは、もっと人間の安全を確保し、もっとわんこたちを確実に守る方法が現代には存在しているんです。なのに、何故、"1年に1回" というワクチン接種だけを続けているのでしょうか???次回はそんなことを考えてみます。