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幸せな「犬生」のために:無秩序な繁殖と遺伝性疾患

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大切な家族の一員である愛犬たちには、できるだけ健康で幸せに過ごして欲しいと願うのが愛犬家でしょう。モラルに欠ける繁殖業者の無秩序な繁殖によって、その願いが打ち砕かれることが少なく…
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2021年11月の記事一覧

第9章:「秩序ある繁殖」

前回ご紹介したように、「単一遺伝子疾患」については検査による診断ができるようになってきました。犬種ごとに発症しやすい病気の傾向も、ある程度は分かっています。検査を行って遺伝子変異のない犬を繁殖に使えば、そうした遺伝性疾患をもった子犬が生まれることは避けることができます。 一方、「多因子疾患」の場合は原因が一つに限定されないので複雑です。 大型犬に多い関節の遺伝性疾患ラブラドール・レトリーバー(ラブラドール)など大型犬に多い病気に、「股関節形成不全」があります。太ももの骨「

第8章:遺伝性疾患は無くせるのに

前回は、繁殖業者やペットショップが徐々に始めた遺伝子検査についてご紹介しました。その一方で、分かっていながら放置され、まん延している遺伝性疾患の代表として膝蓋骨脱臼、俗に言うパテラを例として挙げました。 念のため、少し「遺伝性疾患」について調べてみました。誤解も多いようなので… パテラなどの骨格の形成不全も 遺伝による病気 で良いんですよね? ↑平蔵は首やひざだけでなく、肩にも問題があり「肩関節不安定症」の治療のため、子犬時代の半年間、装具(ブレース)を着けて過ごしまし

第7章:防げる遺伝性疾患がまん延

前回は、徐々に改善されている遺伝性疾患があることをご紹介しました。一方で、放置され、あり得ないレベルでまん延に向かっている病気もあるのが実情です。今回は、犬たちを苦しめている、そうした遺伝性疾患について触れます。 小型犬は膝が悪いのが「普通」?特に小型犬で、「膝がゆるい」と言われる「膝蓋骨脱臼」が増えています。俗に「パテラ」と呼ばれ、膝の「お皿」がずれてしまうこの病気については、ペット保険の多くが補償の対象から外しています。明らかに頻発しているのが分かります。 ある大手ペ

第6章:愛犬たちにもリスクのある遺伝性疾患

前回まで、人間が手を加えたことで、犬が「種」として例外的に多様化してきたことをご紹介しました。いわゆる「品種改良」には良い面もありますが、健康を損なう負の側面も多いことが分かっています。これまでは、イギリスのエピソードが中心でした。今回からは、私たちが経験することもあり得る(というか、すでに経験している)遺伝性疾患についてご紹介します。 犬種ごとの傾向第4章で触れたダルメシアンの尿路結石(リンク参照)以外にも、犬種によって発症しやすい遺伝性疾患があります。埼玉県獣医師会のウ