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軽音①《始まりは…》

中学1年生の時のこと。ある放課後クラスメートのMちゃんに「図書室行けへん?」と誘われて行った。

小学生のときは「東海道中膝栗毛」(十返舎一九)を読んで弥次さん喜多さんが起こす旅の珍道中にワクワクしていたわたしでしたが、成長して思春期を迎えセーラー服の乙女となり(?)ヴェルレーヌの詩集に「なんてステキ…♡」と夢中になりました

秋の日の
ヰ゛オロンの
ためいきの
身にしみて
ひたぶるに
うら悲し(上田敏 訳)

うっとり、、、

けど、せっかくロマンチックな気分に浸っていたのにわたしの選んだ世界ではどうしてもおもしろいことが起こるようになってるらしく静かなはずの図書室でなぜか突然激しい戦いが始まった

わたしたち1年生女子vs.先輩たち3年生男子のスリッパ戦争である

図書室のバカでかい机を倒してお互いの陣地の盾にし、武器は図書室の緑のスリッパ。

それをひたすらキャーキャー言いながら敵の陣地めがけて激しく投げまくるというアホみたいなゲームです

さっきまで優雅におフランス詩集の世界に浸ってたとは思えない勢いでわたしもいつのまにかキャーキャー言いながら先輩男子に向けて必死でスリッパ投げてました

先輩たちはさすがにキャーキャーは言ってなかったけどゲラゲラ笑ってとっても楽しそうだった

図書室を放課後の居場所にしていたその先輩男子たちは家から持ってきた醤油や飲み物やお菓子を図書室の屋根裏に隠していた

イケメン(じゃない人もいた)で秀才でユニークな2学年上の先輩たちがとても自由に見えて憧れたわたしとMちゃんは先輩たちのグループに入れてほしくて毎日毎日顔を合わすたびお願いした

1年の校舎の窓から3年の校舎に向けて大声で「センパーイ!お願い!入れてくださーい!」と叫んだ時は「自分らなにゆうてるかわかってんの?!その言い方は誤解を招くからやめろーーーw!」と返されたけど当時はぜんぜん意味がわからずMちゃんと「なんの誤解やろね?」なんて子供なわたしたちだったのでしょうか!笑

最初はてんで相手にしてくれてなかった先輩たちもわたしたちのあまりの熱心さ(しつこいとも言う)に根負けしある日1枚の紙を渡してきたのです

そこには『我がカンパニーに入るにあたっての条件』みたいなことが中学生とは思えないお洒落な字体で箇条書きに書いてあり、1番下にはわたしとMちゃんの署名欄があって印を押すようになってました

😍えー?!なんか本格的!すごい!大人!ますますステキ!キャー!(←ただの厨二)😍となったわたしたちは、普通の印では面白くない。我らの熱い気持ちを表すためにここはいっちょ血印といこうではないか!(←ただのヤバい人)

親指を安全ピンでちょっとだけピッと刺して出た血で名前の横に印を押しました

それを持って図書室に行くと先輩たちは「これ、血ちゃうん!お前らアホやろw!」ドン引きしつつもめっちゃ笑ってくれて、めでたく仲間に入れてもらえたのでした

地味〜な保健委員のわたしと、学年成績3番の生徒会長のMちゃんがまったく似合わない血印なんて押して仲間に入れてもらった先輩たちとたのしく図書室で過ごした日々は今思えば先輩たちが卒業するまでのたった1、2カ月間のことだったのよね 。でも短かったからこそ鮮やかな思い出となって残ってるのかもしれない


さて、ここまで1ミリも軽音のけの字も出てきてませんが、実はこの時の先輩男子の中の1人がのちの高校の軽音部の先輩のNさんという人で、わたしの人生に初めてROCKが登場するきっかけとなった人なのでした

あの日Mちゃんが図書室に誘ってくれたから先輩たちと出会えた。

アホみたいなスリッパ戦争のおかげで先輩たちと仲良くなれた。

そしてその結果わたしは中2の時にROCKと出会い電撃ショック受けて進路が決まった

どんなことも繋がってるのだと思うとありがたいしほんとおもしろい!


ということで軽音②《再び あだ名》に続きます!





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