【超ショートショート】(161)～火球のふるさとへ～☆CHAGE&ASKA『夢の番人』☆

夢のふちに立つ番人。

ここに来る前にもらった通行証を見せた。

「君の座席は、10号車の窓側25番A席」

通行証に添えられた

座席が書かれた切符をたよりに、

自分の座席を探して座った。

「すみません。

シートベルトをお願いいたします。」

座ってまもなく、

車掌さんにちょっと怒られた。

まず、電車では見たことがない、

飛行機のような腰のシートベルトと、

戦闘機で見かけるリュックのような

両肩のシートベルトがあった。

僕は言われた通りに、

シートベルトをした。

身体の自由が完全に奪われる、

そんな拘束を感じていると、

発車のベルが鳴った。

だが、

僕は行き先を聞かされていなかった。

番人に渡された切符を、

胸ポケットから取り出し、

行き先を確認。

「行き先・・・」

窓の外を雲が流れていく。

地上から離れているのがわかる。

発車から5分過ぎ、

車内アナウンスが流れてきた。

「本日は、火球新幹宇宙号にご乗車いただき、

誠にありがとうございます。

行き先と到着時間のお知らせですが、

お客様お一人お一人異なりますので、

お客様の到着駅が近づきましたら、

車掌がご案内申し上げます。

それまでは、ごゆっくりお過ごしください。」

発車から30分が過ぎた頃、

車内アナウンスが

シートベルトの解除許可を伝え、

やっと自由の身になれた。

発車から3時間過ぎた頃、

車掌がやって来た。

僕の駅が来たのかと思っていたら、

隣の座席の女性に声をかけた。

女性は、そのまま車掌の案内で、

電車のドアへ歩いていく。

女性が案内されてから10分が過ぎた頃、

電車は止まらない。

先ほどの車掌が車内の見回りに歩いてきた。

「先ほどお連れになった女性は？」

「もう降りれてました。」

「降りたって、

電車は止まらなかったですよ！」

「そうですね(笑)」

車掌は僕からは不敵に見える笑顔で、

また車内の見回りを続けた。

発車から、まもなく24時間と30分が過ぎた。

僕の目的の駅はまだまだのようだ。

今、10号車に乗客は、発車の満席から、

やっと半分。

僕はどれくらいこの電車に乗っているのだろうか？

すっかり飽きてきた頃、

窓の外には地球が見えてきた。

「あのすみません、あれは地球ですか？」

と車掌に尋ねると、

「いいえ、似ていますが違います。」

僕はもう一度窓の外の地球を見た。

「あの、お客様。

まもなくお客様の目的の駅でございます。

降りられる支度をお願いいたします。」

と車掌が急かす。

僕の目的の駅は地球らしいと、

電車のドアの前で喜んでいると、

「あれは地球ではありません。

お客様はあの青い星で、

新しい生活をスタートさせるのです。」

と車掌が話した。

僕は夢を見ているだけだから、

朝起きれば、全部夢のお話と信じていた。

車掌からパラシュートを渡された。

僕がパラシュートを装着したのを見届けると、

車掌は電車のドアを開き、

僕をカウントもなく、

地図と腕時計を確認し、

僕を突然、突き落とした。

鈴の音が聴こえてきた。

「大丈夫ですか？起きられますか？」

パラシュートの着地に失敗したのか、

降下中に意識を失ったのかはわからないが、

間違いなく意識は失ってここにいるらしい。

僕は、声をかけてくれた人を見た。

夢のふちで出会った番人だった。

「ここは地球ですか？」

と僕がその番人に尋ねた。

「ここは火球ですよ！地球って何ですか？」


(制作日 2021.11.11(木))
※この物語はフィクションです。

今日は、
2020年11月11日発売 DVD
CHAGE&DVD『Red Hill』
発売から今日で「1周年」。

このDVDは、
アルバム『Red Hill』の数曲の
Music Videoを収録。

その中の一曲
『夢の番人』をヒントにしました。

また今日の話題でもある
西日本で見られた火球(流れ星)を
お話に入れてみました。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲
CHAGE&ASKA
『夢の番人』
作詞作曲 飛鳥涼
☆収録アルバム
CHAGE&ASKA
『Red Hill』
(1992.11.7発売)

YouTube
【CHAGE&ASKA Official Channel】
CHAGE&ASKA DVD『RED HILL』発売告知映像
https://m.youtube.com/watch?v=8Yw1fXtgh4w