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【超ショートショート】(252)~東京は静かな鳥になる~☆ASKA『東京』☆

東京にはたくさんの人が集まってくる。
みんな何かを求めて来るようだ。

夏のお昼、
天気予報の通りの35度の灼熱東京。
そんな頃、外出する東京人がいた。

駅までの道は、
真っ昼間にもかかわらず、
人っ子一人も歩いていなかった。
ただ、
遠くの道路を陽炎が近づけば離れ、
また近づけば離れと東京人から逃げていった。

東京人は慣れたように歩く速度は全国一速い。
せっかちというよりも、
駅と駅が近いが、地下鉄の駅は深い。
だから地上を歩いたほうが早いとなって、
また今日の35度の炎天下のランチ時、
ビジネス街は
そんな東京人が慌ただしく歩いている。

一人の東京人が、
学校で職場で、
ずっと聞いてきた言葉があった。

「どこ出身?」

その話の結論とも言うべき、
行き着く先の答えのゴールは、
純粋な東京人がほとんどいないことだ。

必ず家族の誰かが地方から上京している。

東京人には想像もできない上京物語は、
上京した人の数だけ存在する、
ごくふつうの物語。

その逆の物語を知っている人は、
おそらく純粋な東京人しかいないだろう。

誰もが集まる東京は、
東京人の唯一のふるさと。

そのふるさとで
会えないはずの多くの遠くに住んでいた人に
会える。
しばらくすると、みんな遠くへ帰って行く。

もう何度見送ったのだろう。

人との繋がりが希薄だと言われる東京は、
いつ別れるかわからない人たちと
仲良く繋がることが怖いだけなのだ。


また一人、
東京駅で見送りする人がいる。
それはただの見送りではなかった。

東京人の彼は東京で仕事に追われていた。
それに耐えかねて地方の実家に帰った彼女は、
東京人の知らない間に、
地元人とお見合いし、
結婚することになる。

彼女の最後の捨て台詞は、
「あなたは私を見てなかった」

こうして、東京人は、
ふるさと東京に残される孤独を増やして、
人との繋がりを希薄へと運ぶ。

いつから、
この街、東京で、お祭りが消えたのか?

夏になれば、
小さな公園や団地で夏祭りをしていた。

夜になれば盆踊りの音楽が
夜のそよ風に運ばれて、遠くまで響いていた。

それも、もう遠い昔のこと。

今は、静かな夏の夜。

遠く遠くから聞こえてくる花火の音さえも
遠慮気味に静かにこだましている。

東京って、
誰かにとっては夢の場所、
誰かにとってはふるさと、
誰かにとっては通過点。

明日の夏の日のお休みは、
誰もがふるさとへ帰る。

東京は、しばらく閑古鳥になるのだ。


(制作日 2022.2.20(日))
※この物語はフィクションです。

2017年2月22日発売
ASKAアルバム『Too many people』
まもなく発売「5周年」になります。

今日のお話は
収録曲『東京』の曲タイトルをヒントに、
東京がふるさとの人の思いを書いてみました。
夏に大型連休があっても、
東京がふるさとの人にとっては、
特別帰る場所はいつもない。
だから、その混雑ぶりも知らない、
ただテレビで見る、
ちょっと寂しく、うらやましい、
でも、やっぱり東京がふるさとっていいかな。
という風に書いてみました。


(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲
ASKA
『東京』
作詞作曲編曲 ASKA
☆収録アルバム
ASKA
『Too many people』
(2017.2.22発売)
YouTube
【ASKA Official Channel】
『東京』Music Video
https://m.youtube.com/watch?v=GeVCgkXm6cg

 



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