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【超ショートショート】(182)~アンティークカメラ~☆ASKAオンラインライブ『グラミー賞ノミネート希望Acoustic Live』より☆

決して触れてはいけない
年代物のアンティークカメラがあった。

一人の男が、
とある骨董市で手にしたアンティークカメラ。

まるで新たなターゲットを見つけたかのように、
そのカメラを買ってしまった、
写真の趣味もない男。

男の家は、趣味のいいインテリアで、
整理整頓されたきれいな部屋。

男の仕事は、インテリアデザイナー。
自分の自宅もショールームとして使っていた。

遥々海外からインテリアの相談に来た、
日本人夫婦。
イタリアで、日本食レストランをしたいと、
内装を和風にしたいが、
どうしたら良いかと訪ねてきた。

男は、レストランのメニューから、
程よく和風テイストの新しいインテリアデザインを
すぐに夫婦に提案。
夫婦もすぐに気に入り、
そのまま内装工事をすることになった。

夫婦がイタリアへ戻り、
現地の完成したレストランの内装の写真を
送ってくれた。

それからレストランは、
現地でも話題になるような
イタリア一美味しい店として繁盛した。


ある日の夜、
地震でもないのに大きく家が揺れた。

その揺れに驚くように、
骨董市で買ったアンティークカメラが
床に落ち、フィルムのふたが開いた。

中には、使いかけのフィルムがあった。

翌日、男はそのフィルムを現像するため
カメラ屋さんに行った。

カメラ屋の旦那は、
古い懐かしのフィルムを見て、
嬉しそうな笑みを浮かべて、
「明日の仕上がりです!」
と話すと予約の伝票をくれた。

翌日、
現像が出来上がる頃に、
男はカメラ屋へ。

カメラ屋の旦那は、男が店に来るなり、
きのうの笑みがなく、
とてもひきつった怖い顔をして、
男を見た。

「あの、
このフィルムはどこで手に入れましたか?」

「◯◯神社の骨董市です。」

「あぁ~あそこの~」

「何かあるんですか?」

「・・・いやね・・・(考)」

「あの~」

「・・・」

「きのうお願いした現像は?」

「・・・はい、できていますよ、ここに」

「ありがとうございます。お会計は?」

「お会計はね・・・」

カメラ屋の旦那は、
なかなか現像した写真を男に渡さない。
ずっと怖い顔をしながら何かを考えている。

「あの~お会計は?」

「お金はいらないよ!」

「いや、それは困ります。
ちゃんとお支払しますから」

「じゃあお金の代わりに、
このフィルムが入っていた
カメラを見せてくれないか?」

男は急いでアンティークカメラを取りに帰った。
そして、
再びカメラ屋へ行った。

「これがそのカメラです!はぁーはぁー(汗)」

カメラ屋の旦那は、
アンティークカメラを隅々まで見ると、
ようやく男に現像した写真を見せた。

「この人たち・・・」

男が写真を見ながら、そう呟いた。

「その人たちは、私の親戚夫婦だ」

「親戚?」

「あぁ~そうだ。
私が子供の頃、その夫婦はイタリアに行って、
日本食レストランを開いて財を築いた。」

「子供の頃?」

「そうだ。
そしてこのカメラは夫婦のモノだった。」

「・・・」

「私が子供の頃に、
どうしてもこのカメラがほしいと言って、
夫婦におねだりしたんだ。
でも、せっかくもらったカメラだったのに、
うちに泥棒が入り、カメラも取られてしまった。」

「・・・」

「この写真は、私がこのカメラで撮影した
最後のフィルムなんだ。」

「そうですか」

「もうこの夫婦もこの世にいなくて(涙)」

「へぇ?!」

「もう何十年も昔のことだ(涙)」

「でも僕、この夫婦に会いましたよ!
日本食レストランの内装を依頼されました。」

「そうか、それは不思議な話だな」

男は、カメラ屋をあとにした。
旦那のカメラだったアンティークカメラは、
男が旦那にあげると言ったが、
男に持っていてほしいと、
半ばお願いされて、
アンティークカメラと現像した写真を持って
自宅に帰った。

翌日、
カメラ屋のある商店街を歩いた。
カメラ屋はどこにもなかった。

商店街の肉屋で
いつもの焼き肉弁当を買うついでに、
カメラ屋について尋ねた。

「あのカメラ屋さんね」

「きのう僕、写真を取りに行ったんですけど」

「きのう?」

「はい」

「きのうも一昨日もカメラ屋はないよ!」

「ない!?」

「あの旦那は、
ずいぶん前に居なくなってるはずだよ!」

「何で?」

「何でって、病気か何かだろう。」

「店は?」

「店も旦那が居なくなってから
すぐに取り壊されて」

「取り壊し?」

「そうだよ!
でも常連さん、変な質問しますね(笑)」

男はきのうまで出来事をお肉屋に話した。

「そう言えば、常連さんの顔のホクロの位置が、
カメラ屋の旦那と同じ所にあるわ」

「へぇ?」

「不思議ね!ひょっとして、
常連さんの遠い親戚かもね。」

「いやいやいや、冗談よしてください。
よし子さん(笑)」

「これが冗談じゃないのよ!常連さん(笑)」

お肉屋のよし子さんは、
店の奥に飾れていた商店街の仲間撮影した
集合写真を男に見せた。

「これ、常連さんじゃないかしら。」

「・・・そうですね、僕です」

「ということは?(笑)」

男とカメラ屋の旦那が、
どんな繋がりなのかは、
よし子さんも教えてはくれなかった。

だが、男が
アンティークカメラを手にしたことは、
偶然ではなかった。

(制作日 2021.12.2(木))
※この物語はフィクションです。

今日のお話は、
思い付くきっかけとして、
12月2日夜8時から配信された
ASKAさんのオンラインライブ。

このライブのセットリストに触れながら、
ついその曲ごとの想い出を振り返る。

その様子を書いてみたつもりです。

今を生きる人が、
歴代の名曲を歌うと、
歌声は今なのに、
名曲が当時のアンティークな想い出へと誘う。

名曲がアンティークなわけではなく、
名曲を聴いた自分の想い出が、
アンティークとも言えるほど、
セピア色に感じている。

どこか懐かしく、
どこか楽しく、
胸があたたかい。

自分たちが聴いてきた、
それぞれの世代の名曲は、
人間の肉体が色褪せていっても、
名曲は永遠に色褪せない。
つまり歳を取らない。

ASKAさん
『歌の中には不自由がない』
という曲のように、
歌は変わらない。
変わるのは人間のほうなんだと思います。

ASKAさんのオンラインライブを見ながら、
セットリストの1曲1曲の解説を考える自分ってと、
自分の中にCHAGE&ASKAやASKAさんの
アンティークなフィルムが、
こんなにもあることを、
あらためて気づいたような気がします。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/


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