見出し画像

【超ショートショート】(189)~コンビニ「Boot up」にて~☆CHAGEアルバム『Boot up!!』☆

夜だけ営業する、
ちょっと変わったコンビニがある。

コンビニの名前は「Boot up」

「Boot up」の意味は起動する。
そこから、コンビニのオーナーは、
「夜中に起動する人々を応援しよう!」
をコンセプトに、このコンビニを始めた。

さて今日は12月9日。
日本では夜中に真珠湾のドキュメントを放送中。
世界ではジョン・レノンを思い出す、
そんな夜の時間に、
さっそく、変わったお客さんたちが、
次々にやって来た。

「いらっしゃ~い」
とオーナーの挨拶に律儀に会釈をする、
スケートボードの板を持った若者が入店。

若者の耳には、昔の人が見れば、
派手めな補聴器・・・
今ならワイヤレスイヤフォン。

若者はひとり、
耳のリズムに〈Swing&Groove〉しながら、
飲み物のコーラとおにぎり2個とパン2個を買った。

「おにぎりあたためますか?」
とオーナーが尋ねると、
「えっ?おにぎり、あたためるんですか?」
と驚きの声で逆質問。
「えー、私のふるさとの北海道では、
コンビニでおにぎりを買うと、
おにぎりあたためますか?
と尋ねるものなんですよ!」
とオーナーが答えると、
「ウンウン」と納得した顔をして、
「袋は要りますか?」
には、
「要りません!」
とパンツのポケットから使い古しの
コンビニのビニール袋を出し、
買ったものを若者は丁寧に、
コーラを下に入れ、次におにぎり、
最後はつぶれないように、
パンを上に入れた。

若者と入れ違いに、
次のお客さんがやって来た。

真夜中にお腹がすいたのだろうか?
背中に〈No.3〉と書かれた、
黒いパーカーをフードで顔を隠すように、
コンビニに来た若い女性。

おそらく素っぴんの顔をごまかすように、
大きめのメガネとマスクをして、
アイスコーナーからお菓子コーナーへ、
次にパンとおにぎりを物色し、
思い出した本当に欲しかっただろう
化粧品コーナーへ戻り、
やっと会計で、
「すみません、唐揚げも1つください」と。

オーナーは女性であるお客さんを詮索するのは
悪いと思い、
「袋は要りますか?」
だけを尋ね、
「はい!要ります!」
とオーナーが商品を新しいレジ袋に入れた。

大きく膨らんだレジ袋をもらうと、
女性は、急ぎ足でコンビニを出て、
深くパーカーのフードをかぶり直すと、
夜の暗闇に消えた。

それから30分が過ぎた頃、
終電を逃して、
ここまでタクシーで帰ってきただろう
ほろ酔いのやや千鳥足の中年な男性が入店。

「いらっしゃいませ」
とオーナーが挨拶すると、
政治家の演説のような手の振り方をして、
オーナーに挨拶を返した。

足ものは千鳥ったまま、
グワングワンとひざをしならせ、
〈うたたね〉しようとするまぶたに抵抗しながら、
やっとこさ瞳を開いて、
お酒コーナーへ。

いくつかのお酒と
二日酔いざましのドリンクも買って、
焼き鳥と枝豆とヨーグルトとオレンジジュースを
カゴに入れレジへ。

「や~夜遅くまでお仕事は大変でしょう?
(しゃっくりをする)」
「いえいえ、
お客様もこんなに遅くまで大変ですね!
接待ですか?」
「いやね・・・仕事で会社の人と飲んだんだけど、
その店のお姉ちゃんさ(笑)
ぼくのこともっと知りたいって、
耳元で囁かれちゃってさ(笑)
それでお店抜け出して、
別のお店で終電まで飲んでいたんだけどさ(笑)」
「お会計は◯◯◯◯円になります!」
「あっ!結構安いな(笑)財布は・・・?」
「大丈夫ですか?レジ袋は?」
「あ~レジ袋に入れて!」
「はい!大丈夫ですか?」

そのほろ酔いの中年の男性は、
身体中のポケットを探したが、
財布がなかったようで、
今度は鞄の中を探した。

「あっ!あった!あった!財布(笑)
で、いくらだっけ?」
「◯◯◯◯円です」
「◯◯◯◯円ね・・・」

ほろ酔いも冷めるほどに、
財布の中身を見て固まる男性。

「あの~」
「はい!」
「あの~ね、このお酒返品できる?」
「返品ですか?」
「そう返品!もうこんなに酔ってるから、
いらないかなって思い直してさ」
「はい、わかりました。」

新しく会計をすると
千円札1枚でお釣りが出る金額になると、
男性は安心したように、
握りしめた財布から
千円札を1枚得意気に出した。

「レジ袋は、やっぱり要らない!」
と男性が話すと、
鞄におつまみを入れた。

「ありがとうございました」
とオーナーが挨拶すると、
また中年の男性は政治家のような
堂々した手の振り方で、
これから仕事に行く人のような
軽快な足取りでコンビニを出た。

明け方が迫る一番お客さんが少ない時間。
オーナーは、店の中を掃除したり、
商品の補充や発注に忙しく動いていた。

そんな時、
〈僕だけのピンナップガール〉が入店。

彼女は、
朝の報道番組で司会をする
あの有名な美人キャスター。
オーナーは、
彼女がアナウンサーになったときからの
ファンである。

この事実をオーナーは打ち明けられずに、
ただのお客さんとコンビニ店員として
長年接して来た。

ある日、彼女が対談番組に出るというので、
彼女が通うコンビニを取材したいと、
その番組の司会の落語家さんが、訪ねた来た。

そこで初めてコンビニのオーナーであることを
彼女は知り、さらに、
落語家さんの罠にはまるように、
オーナーが彼女の
長年のファンだと暴露されてしまった。

その放送からのきょうで1週間。
1週間ぶりに彼女がコンビニに来た。

彼女は、テレビ局に向かう途中、
最初に出会うこのコンビニで、
朝ごはんを買うのが日課。

今日はいつものおにぎりを買って、
オーナーに話しかけた。

「こないだのテレビ出演、
ありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ、
なんかすみません、
うまく乗せられてしまって(笑)」
「いいえ、いいんですよ!楽しかったですから」
「あっそうですか(笑)」

彼女は、
いつもの笑顔を残して、
コンビニの前で待たせているタクシーに乗って
テレビ局へ向かった。

コンビニの営業は、
朝のラッシュが終わる9時に閉店。

オーナーのピンナップガールの
朝の報道番組の録画を、
お昼間の晩酌とともに見ることが、
オーナーの唯一の祝福の時間。

ただ〈君に逢いたいだけ〉と、
ほろ酔いのオーナーはよく口にする頃
そのまま眠りの中へ。

そんなオーナーが風邪をひかないようにと、
毛布を掛けてあげるのは、
オーナーの妹の一人娘。
小学校が終わると、
妹の仕事が終わるまで、
オーナーのお兄ちゃんの家で過ごしていた。

「おじちゃん?大丈夫?」
と、おじちゃんがぐっすり寝たことを確かめると、
居間のテーブルの食器を全部片付け、
洗い物で出てしまう音に気を付けなから、
おじちゃんの世話をするのが、
妹の一人娘の遊びだった。

「あれっ!ここにあったお酒は?」
「おじちゃんお酒なんかなかったよ!(笑)」
「イヤ~、俺飲んだと思うんだが~」
「へぇ、何にもテーブルには、
私が来たときにはなかったよ!うふふ(笑)」

夕方、玄関から声がした!
「お兄ちゃん!お客さん!」
「誰?」
「ほら!あの美人さよ!」
「おじちゃんが好きな
ピンナップガールさん!(笑)」
「えっ、何で?ここに?」

妹とその一人娘は嬉しそうに、
その美人の来客を、
オーナーがいる居間へと招き入れた。

「こんばんは?突然すみません!」
「あっ!いいえ!今日は?」
「お礼に参りました!」
「お礼ですか?(嬉)」
「一緒にケーキでも食べませんか?(笑)」
「はい(笑)」
「私も!お母さんもいい?」
「えぇ、もちろん(笑)」
「お前たち静かにしてろよ!」
「(妹と一人娘は)は~い!(笑)」

(制作日 2021.12.9(木))
※この物語はフィクションです。

今日は、
2020年12月9日発売 アルバム
Chage『Boot up!!』
発売から今日で「1周年」

このアルバムを参考に、
ちょっと変わった
コンビニのお話を書いてみました。

画像1

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~

参考にしたアルバム
CHAGE
『Boot up!!』 
(2020.12.9発売)



 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?