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【超ショートショート】(51)☆SAY YES☆~僕は誓う?私は誓った!~

あの頃、
何で自然消滅したのだろう。

君は、あんなに、
僕を好きだと、
飽きもせず、
毎日電話をしてきては、
愛の告白の連続。

「お前、話すこと、それしかないのかよ!」

という僕の忠告も、
全く耳に入らず、
また愛の告白を続けた。

君が、
大学受験で、
希望の大学だけ落ちて泣いていたとき、
僕は仕事で、側にも、電話にすら、
出てあげることができなかった。

君が、二十歳になる誕生日。
僕は君の好きなショートケーキと、
君に似合いそうな、

「二十歳になったらほしい!」

と話していたプレゼントを持って、
君の家に行った。

(君のお母さん)
「あら、お久しぶりね!
今日はどうしたの?」

お母さんに事情を話すと、

(君のお母さん)
「せっかくお祝いに来たのに、ごめんなさい。
娘は、今ここに居ないのよ!
あの娘、希望の大学に落ちて、
滑り止めは受かっていたんだけど、
結局行かなかったの。
それで、勝手に留学を決めてきて、
今は海外なのよ!」

君の連絡先をお母さんに聞いたが、
君が

「彼には教えないで!」

だから、お母さんも教えてくれなかった。

僕はひとり、
2人分と2人分のショートケーキを
計4個のケーキを食べなきゃいけなくなった。

君はいつも、

「ケーキは、夜食べる分と朝食べる分と、
ひとり2個買うのが、私の決まりなの!(笑)」

そう話すから、
4個も買ってしまったじゃないか!


君が22歳になる頃、
僕は、コーヒー豆を切らしていることに気づいて、
仕事帰りに、いつものコーヒー屋さんに寄った。

(コーヒー屋の店員)
「あの~、」

「はい、え~と、いつもコーヒー豆ください。」

(コーヒー屋の店員)
「あの~、これ~、」

店員さんは、僕に1通の手紙を渡した。

(コーヒー屋の店員)
「先ほど、二十歳くらいの女性の方が、
あなたに渡してほしいと、私預かりました。」

「先ほどって、どれくらい前?」

(コーヒー屋の店員)
「かれこれ、1時間前になりますね。」

「あっそう。」

(コーヒー屋の店員)
「でも、その女性は、この1ヶ月ほど、
ほぼ毎日、お店にいらっしゃって、
長いときでは、開店から閉店時間まで、
パソコンでお仕事してるんでしょうかね?
パソコンや読書をしていらっしゃることが
多いです。」

(コーヒー屋のオーナー)
「あっ、海外帰りの彼女の話か?
あの娘は、誰かを待っている様子がしたから、
聞いてみたんだよ!
〈誰かと待ち合わせですか?〉って。
そうしたら、彼女が、
〈歳は33歳のイケメンで、(笑)
身長は私よりも高くて170cm以上で、
スーツがよく似合う、耳が小さな男の人、
ここに来ませんか?〉って。
彼女の話では、
その人の会社がこの近くにあることや、
このコーヒー屋でコーヒー豆を買うことを、
5~6年前に聞いたって話していたよ。」

「そうですか。」

(コーヒー屋のオーナー)
「知り合いなのか?君の。」

「はい、彼女です。
でも、僕らは歳が離れているので、
僕からちゃんと
〈付き合おう〉って言ったことがないんです。
昔、それでケンカしたことがあって、
でも彼女は、まだ中学生でしたからね。
本当に付き合うなんて、
僕には、まだ考えられなかった。
これは言い訳になりますが、
男として早く仕事を覚えて、一人前になって、
大人になって彼女を迎えに行くつもりでした。
だから、毎日急いで忙しかった。」

(コーヒー屋のオーナー)
「それ?彼女からの手紙じゃないか!(笑)
早く読んであげなさい!」

そう話すと、オーナーは店の裏に入ってしまう。

(コーヒー屋の店員)
「その手紙、オーナーが女性を説得して、
書かせたものなんですよ!(笑)
〈俺が責任持って君の彼に渡すから、
書いてごらん〉って言われて。」

手紙には、
君の連絡先が書いてあった。
そして短く、

「逢いたい」と。


僕らが正式に付き合いはじめて5年、
君のお母さんの勧めで、同棲生活を始める。

(君のお母さん)
「どうぞ娘をもらってちょうだい。
あの娘は、もう小学生の頃かな?
あなたに娘が初めて逢ったのは?
あなたと出逢った日から毎日、
何万回もあなたの話を聞いてるのよ。
あの留学もね、
あなたにふさわしい人になるために、
本当は無理して行ったのよ。
あなたの仕事が海外の人とも話すし、
何か助けてあげられる自分に
娘はなりたかったみたい。
でも、どんなに頑張っても、
歳だけは埋まらない、追い付けない。
大人になれない自分を娘は、
よく責めて泣いていたわ。
そんなに、あなたとのことが好きなのよ。」


僕は、君が留学中に話題となった、
ドラマ『101回目のプロポーズ』を、

「一緒に見よう!」

と言って、作戦をスタートされた。

君は恋人を亡くして、
数年後に出会う亡くなった恋人そっくりな男に、
すっかり惚れていたね。

でも、時々、

「あのロン毛の人も素敵ね」って。

でも、まだ次の日は、

「あのハンサムな高身長の人もいいわ」

君の好みが一切わからなくなるくらいに、
出てくる男性をみんなに惚れていく。

主人公の男性は、
「100回」もお見合いして振られ続けた、
全くモテない中年男性。

ドラマが進むにつれ、
君は、主人公の男性を応援するようになる。

そして、あの名台詞

「僕は誓う
50年後の君を今と変わらず愛してる」

僕は、このシーンにあわせて、
手紙と指輪を用意した。
おそらく、君は、
ドラマの真似だと怒ると思って、
先手を打って手紙を書いておいた。

予定の台詞が終わり、
僕も同じことを言ってみた。

「僕も誓う!
50年後の君を今と変わらず愛してる!
結婚しよう・・・してくれませんか?」

案の定、君は少し膨れた。
そのまま、何も話さないまま、
君はソファに寝てしまった。

よく朝、
僕が起きると、君は出掛けて居なかった。

テーブルには、
朝食と
僕の手紙とは違う封筒の手紙が置いてあった。
指輪は、そのテーブルに置かれたまま。

~~~~~
あなたへ

きのうは、とても急なことで、
戸惑ってしまいました。
あれは、本気の?
指輪があるんだから、そうだと思いますが。

それで、
私から伝えたいことがあるの。

私は誓った!
死ぬまであなたを今と変わらず、
愛するって、
最初に出逢ったあの日に決めたの。

だから、
だった50年とか言われても、
もう私、今日まで20年近く、
あなたのこと愛してるのよ!
あなたは気づいてないけど。

きのうは、怒ってしまってごめんなさい。
でも、とても嬉しかった。
ありがとう❤️
~~~~~


僕らが結婚して、
10年が過ぎる頃、
君が突然の病気。
治療の副作用で、
容姿に変化が起こることを、
心配し恐怖心を抱いていた。

(看護士)
「今日は逢いたくないそうです。」

「何かあったのですか?
具合が悪いのですか?」

(看護士)
「いえ、そうではないみたい。
今、副作用で、髪の毛が・・・」

「はい、承知しています。」

(看護士)
「そうですよね。患者さんにも話したんですけど、
あなたのことが好きで、
一緒になってもらったのに、
歳下のあたしがこんな姿になったのを見たら、
彼が悲しむって、とてもあなたが可哀想って。
あなたの横を歩く人がこんなんじゃって。」

「なんだ、そんなことか。
全く僕は気にしていません。」

(看護士)
「あなたはそうでも、彼女は女ですよ!
私も彼女の気持ち理解できるわ。」

「じゃあ、僕はどうしたら良いですか?」


翌日、
君の機嫌がいいことを看護士が教えてくれて、
やっと1日遅れの面会。

「具合は?大丈夫?」

(君)
「うん、今日はきのうより落ち着いてる。」

「あのさ、君に話してないことがあるんだ。」

(君)
「何?」

「僕さ、髪の毛が真っ黒でさ、
この歳で白髪が無いだろう?」

(君)
「それが、どうしたのよ!
健康自慢なら聞きたくないよ!」

「そうじゃなくて、
実は、白髪染めしてるんだ!」

(君)
「うふふ(笑)。知ってるわよ!
あなたが寝てるとき、生え際から白いものを、
時々見かけてるからね(笑)」

「なんだよ!知ってるのか。」

(君)
「なんのつもり?励まし?
私なら平気よ!
病気だから仕方がないないんだもの。
それに、
私みたいな人用のウィッグがあるらしいの。
今日、さっき作ってもらうことになったのよ。」

「そうか、良かったな。」

(君)
「でも、もし、こんな私が嫌になったら、
あなた、好きにしていいのよ。
こんなあたしじゃ、女の命を無くした女なんか、
もう女じゃないからね。
抱けって言われても抱けないでしょう?
だから、好きにしていいのよ。」


僕が早期退職して、
果樹園を始めた。

君は、果物が好きだから、
「果物農家に嫁げば良かった」って、
リンゴを食べればリンゴ農家に、
梨を食べれば梨農家に、
ブドウを食べればブドウ農家に。

君は、
すっかり女の命を取り戻し、
元気に僕が作ったシャインマスカットのブドウを
毎日、ご飯代わりに食べている。

(僕らの息子)
「お母さん、紹介したい人がいるんだ。
急なんだけど、今連れてきていて、
会ってくれないかな?」

愛する息子の願いを聞き入れ、
その恋人に会った。

その日の夜、
僕と君は、同じ事を思い出していた。

「何、考えてる?今。」

(君)
「今日、息子と彼女を見ていたら、
自分たちのことを思い出してね。
あなたと最初に逢ったあの日。」

「僕のこと、いつ好きになったの?」

(君)
「一目見たときよ!
ただカッコ良かった!
そのあと話したら、優しくて。」

僕は、
君が独身時代に買った硝子ケースを見ると、
ホコリもなく、きれいに並べられた、
僕らの想い出があった。

(君)
「これ?かけてみる?(笑)」

「久しぶりだな?(笑)」

CDラジカセから

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
愛には愛で感じ合おうよ
恋の手触り消えないように
何度も言うよ 君は確かに
僕を愛してる
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

「君は、この歌詞が好きなんだよな?」

(君)
「全部よ!でも、
この中でもここの歌詞が好きなのよ!
まるであなたみたいじゃない?
♪君は確かに僕を愛してる♪って、
ちょっと何様って感じじゃない?(笑)」

「そうかな?僕、そんな亭主関白じゃないよ。」

(君)
「心は亭主関白よ!(笑)。
でも、ここの歌詞は、
君が愛してくれなきゃ、
僕、自信もって生きられないって、
そう聴こえるのよ!
そんな弱さを隠して、でも私には、
その弱さを見抜かれてしまう、
あなたを放っておけるわけないじゃないですか!」

「・・・・・(笑)」

(君)
「それに、約束したでしょう?
あなたがドラマの台詞を真似して
プロポーズした時。
私、手紙書いたの、憶えていない?
〈死ぬまであなたを今と変わらずに愛してる〉って。」


僕らが出逢ってから今日で、
もうすぐ50年
僕がドラマの台詞を真似た
「50年」になった。

あの日の君と今の君。
僕は今の君が一番好きかもしれない。
ここまで、大変なことがたくさんあったけど、
それが、今思えば「絆」って、
思えるようになった。
僕らの「絆」が、これからも増えるように、
僕は君のために頑張りたい。
君は僕より長生きしてほしい。

(君)
「ねぇ?今、何か言った?(笑)」

「いや、何も(笑)」

(君)
「ねぇ?」

「うん?」

(君)
「手、繋いでもいい?」

「あぁ、こっちにおいで!(笑)」


(制作日 2021.7.24(土))
※この物語は、一部の曲やドラマの台詞を除いて、
フィクションです。

今日は、
1991年7月24日発売 シングル、
CHAGE&ASKA『SAY YES』
発売から今日で、「30周年」になります。

そこで、記念に『SAY YES』と、
『SAY YES』がドラマ主題歌を務めた
フジテレビドラマ『101回目のプロポーズ』を
参考に、
出逢ったあの日を忘れずに
僕を愛し続ける「君」と、
君の愛と駆け引きに時々翻弄される「僕」の、
恋物語を書いてみました。

今日は、書いてみると、
恥ずかしい感じがします。
『SAY YES』が私に持たせた想い出が、
そうされる、書かせたんだと思います。

CHAGE&ASKAに出逢ったあの日、
本当にカッコ良かった!
それに、少しキザでした。
心が浮くぐらい。

それは今も変わりません。(笑)。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~~

参考にした曲は
CHAGE&ASKA
『SAY YES』
作詞作曲 飛鳥涼 
編曲 十川知司
(1991.7.24シングル発売)
☆収録アルバム
CHAGE&ASKA
『TREE』
(1991.10.10発売)
★『SAY YES』Music Video★
https://m.youtube.com/watch?v=Q9qAyt0G-jM
★『SAY YES』ライブ映像★
https://m.youtube.com/watch?v=fbzikl8_NOs

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