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【超ショートショート】(200)~穴のあいたポケットの夢~☆CHAGE&ASKA『クルミを割れた日』☆

僕のポケットは、いつの頃からか穴があいたまま。
だから、お菓子をポケットにいれても、
家に帰ると無くなっているんだ。
それで、いつもいつもお母さんに怒られる。
「ちゃんとポケットに入らないから」って。

僕の穴のあいたポケットのズボンは、
買ってもらったばかりの頃、
お友達も女の子も先生も、
「ぅわっ!カッコいい!」
と誉めてくれた。

それから僕は毎日、
そのズボンを誉められたくて、
はいていた。

空柄のTシャツを着た日、
僕は初めて夢を話した。

「僕は将来ミュージカルに出るような
ビックな人になりたいです!」

こう話した後、
先生も友達も女の子も、
みんなが笑った。

「僕の夢はそんな面白いのかな?」
そう思って、ちょっとだけ嬉しかった。

でも、
後で友達も女の子も僕に話した。

「ミュージカルなんて似合わないわ!」
「お前が歌うってムリだろう!」

みんなが笑った理由がわかると、
僕はとても悲しくなり、
ポケットに手をしまった。
僕の手は、グーチョキパーのグーの手をして、
何度もポケットの中を殴っていた。

公園のとなりにある教会の鐘が鳴ると、
家に帰れとお母さんに決められていた。

僕は、
ポケットを殴った日、
その教会に行ってお願いをした。

「あの、夕方の鐘を鳴らすのを
止めてくれませんか?」

教会の人が「どうして?」と尋ねるので、
僕は本当のことを話した。

「今日、僕が将来の夢を話したら、
みんなにそれはムリだと笑われたんです。
僕、それが悔しくて、悲しくて、
ズボンのポケットに手を入れて殴ったら、
ポケットに穴があいてしまって・・・
もし、今日の鐘が鳴ると
家に帰らなくてはならないけど、
お母さんにも怒られてしまう。
それが怖いんです。」

教会の人は、
「どんな夢を語っても夢は夢じゃないか?
語ってはいけない夢はないんじゃないかな。
それに、君の夢を笑った人にも夢はあるはず。
もしその人たちもいつか夢を語れば、
君を笑ったように誰かに笑われるはずだよ!
ここは教会で、神様がいる。
それは君にもわかるかな?」

「うん」

「神様はこう話すんだよ!
人にしたことは自分に返ってくる。
だから、私はね、神様の言葉を子供たちに
こう話すんだ!
~~~~~
人のモノを取れば、
君の大切なモノが取られる。
人をバカだと笑えば、
君も人からバカだと笑われる。
人に優しくしたならば、
君も優しくされる。
~~~~~
そうやって、人にしたことと同じことが、
自分に返ってくる。
だから、君の夢を笑われても
君が悲しむことはない。
君がすることは、
人にされて嫌だったことはしないこと。
それから、君は夢を叶えること。」

「夢を叶える?」

「そうだ!今は夢のことでも、
君がその夢を本物にすれば、
もう人からは笑われない。
それに、訳もなく誉められるだろう。」

「でも、夢の叶え方がわかりません。」

「それはね、夢を忘れずに努力すること。
それに、
たくさんの人に夢を話してもいいんだよ!」

「でも、それは恥ずかしい」

「だからだよ!恥ずかしさを越えないと、
夢へ一歩も近づけないよ!」

「近づく?」

「例えば、スポーツ選手で、
恥ずかしいって隠れている選手はいる?
舞台の人で、お客さんの前に立つから
恥ずかしいって舞台から逃げる人がいる?」

「いない」

「大人になるってことも、
夢を叶えることも、
この恥ずかしさを乗り越えることから
始まると思うんだ。」

教会の人は、
夕方の鐘が鳴ると、
僕に一枚の紙を渡して、
「もし時間があったら、
教会で歌の練習会があるから見学においで。
お母さんにもお話して、
〈お金はかかりません〉と話すんだよ!」

「何で?」

「人によっては教会というだけで、
お金を取られると思う人もいるから、
君のお母さんがそうかはわからないけど。
君の夢の手伝いが私にできるなら、
この歌の練習会に君を誘うことだと思ったから」

僕は、家に帰り、
今日あった出来事すべてを
お母さんに話した。

「教会の歌の・・・」

「本当にタダならいいわよ」

僕は翌日、初めて教会の歌の練習会に参加した。
そして、すぐオルガンの演奏が始まり、
僕も歌えと歌詞カードを渡されて、
小声で歌った。

するときのうの教会の人が、
「よく歌えたね!
少しずつ声を出してみようか?(笑)」

僕はなんだか嬉しかった。
小声で歌詞を間違って歌ったのに、
みんなの前ですごく誉めてくれたこと。

次からの僕は、
恥ずかしさを忘れ、
歌うと誉められる、その楽しみのために、
音程の外れた、歌詞間違いの大声で、
歌った。

そうしたら、
「まぁまぁ、落ち着いて、
まずは周りの人の声に合わせてごらん。」

教会のステンドグラスに夕日があたり、
歌う僕らをスポットライトのように
照らしてくれるのが、
僕はとても気に入っている。

教会の歌の発表会の日。
僕は初めてミュージカルの舞台に立つように、
教会のステージに立った。

僕らが歌うと、
お客さんが、先生が友達や女の子が、
拍手をくれた。

発表会が終わると、
女の子が僕の所に来て、
「素敵だった!」って、
僕の夢を笑った女の子が話した。

僕は、またポケットに手を入れて、
穴のあいたポケットの中で
ガッツポーズのグーをした。

そしたら、
余計に大きな穴が開いてしまった。

夢を叶えるって、
たくさんの穴をポケットに
開けて行くことかもしれないと思った。

だって、
ガッツポーズした時のズボンは、
まだ新しい、
買ってもらったばかりのズボンだから。

「またお母さんに怒られる~(震)」

僕が本当に乗り越えるべきことは、
お母さんなんじゃないかと、
教会の人とお父さんが教えてくれた。

僕は、自分の夢を応援してくれる人たちの所へと、
大きくなったら、旅立とうと、
教会の神様にお話すると、
夕方の鐘で、誉められたように、
勇気がわいてきた。

恥ずかしさと怖さを越えた
ポケットの穴の向こうには、
一体どんな夢が待っているのだろうか?

(制作日 2021.12.20(月))
※この物語はフィクションです。

今日は、
200作品目ということで、
記念になるようなお話をと考えたのですが、
そうすると難しくて思い付かなくなるので、
いつも通りにしました。

今日はCHAGE&ASKA『クルミを割れた日』を参考に、
お話を書いてみました。

それから、
先日『徹子の部屋』に、
2020年パラリンピック閉会式でピアノを演奏した
西川悟平さんが出演。
たまたま見ていまして、
とても勇気を抱かせる
プロのピアニストになるまでのストーリー。
15歳でピアノの始めた頃は、
周囲から否定されたそうです。
また、夢を語ることもなかったようでしたが、
ある外国の先生に出会ったことで、
本当の夢をやっと語れたこと。
生意気とお話されていましたが、
生意気でも夢を語ること、
本当に自分がしたいこと、
なりたいことを話すことは、
周りの人に笑われても、
自分自身にとって、
行くべき道を定められるように感じました。

日本だけなのかはわからないけど、
日本はとにかく否定から何でも始まる。
そのため、本当にやりたいことを
みんな我慢してきたんじゃないかと。
その一番の否定者が母親になりやすいと、
自分の経験からも感じています。

もっと、
子供を信じ応援できる世の中であり、
母親であってほしいと思います。

また、
子供に限らず、やりたいことがある大人も、
応援してもらえる
世の中になってもらいたいと思います。

☆☆追記☆☆
でも一番自分のことを否定しているのは、
自分かもしれない。
いろんなこれまで劣等感に、
いつも返って、
やっぱりダメだとか思ってしまうのだと思う。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~

参考にした曲
CHAGE&ASKA
『クルミを割れた日』
作詞作曲 ASKA
編曲 十川ともじ
☆収録アルバム
CHAGE&ASKA
『TREE』
(1991.10.10発売)

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