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【超ショートショート】(31)☆birth☆~僕の願いと生まれ変わる場所~

僕が、
こんな身体になったのは、
いつだったのか・・・。

子どもの頃は、
自分でも遊んだり、
ご飯を食べたり、
トイレにも行けた。

それが、
ある日から、
僕の身体は、
まるでロダンの考える人のように、
なぜか固まって、
自力では動かせないのだ。

どうやら、
神経っていう身体の中の連絡網が、
途中で途切れてしまって、
もう治らないという。

だからなのか、
僕が一生懸命に話していても、
言葉が話せず、
「背中がかゆい!」
と言っても、
「トイレに行きたい!」
と言っても、
「何?何?どうしたの?」
と言われておしまい。

僕の身体が、
大人の身体に近づいた頃、
病院じゃないけど、
施設っていう所に住むことになった。
自分の家には、
時々帰れるとも聞いていた。

施設には、
僕みたいな人がたくさん居て、
少し驚いたよ!

はるちゃんっていうお姉さんが居てね!
僕のお世話をしてくれた。

はるちゃんは、
ある音楽家が好きって話してくれた。

「僕も好き!」
と話すと、
「好きな曲あるの?」
とはるちゃんが質問するから、
家から持ってきたCDを見てくれるように、
お願いしたんだ。

(はるちゃん)
「あぁ~ぁ!(笑)。
このアルバム持ってるよ!(笑)。
で、どの曲が好きなの?」

「ばァ〰️ジュ!」

(はるちゃん)
「ば~?(笑)」

「ばァ〰️ジュ!!」

(はるちゃん)
「あっ!わかった!
“birth”ね!そうでしょう?」

「うん(笑)」

僕は、
施設に来る前に、
何度か音楽家のコンサートに、
母と父に連れられて見に行った。
歌声がとてもカッコ良くてね!
僕が、
もし普通に大人になれたら、
その人みたいになるのが夢だった!
もちろん、今も諦めていないよ!

(はるちゃん)
「今度、地元でコンサートがあるから、
見に行く?」

「うん(笑)」

僕は、はるちゃんに連れられて、
コンサートを見に行った。
僕のように、
もう寝たきりの人間でも見れるようにと、
特別な場所をいつも用意してくれる、
とてもいい人(音楽家)。

開演中、僕はじっとしていられず、
ベッドから落ちそうになる身体を、
はるちゃんは必至に守ってくれた。


僕には、
一つの願いがある。

もし、1日だけでも、
コンサートの日だけでも、
普通の身体に戻って、
お客さんやはるちゃんと一緒に、
拍手したり、笑ったり、
歌ったり、立ったり座ったり、
手を振ったり、目を合わせたり、
出来たらっと。


僕は、いつも、
大好きな音楽家の歌声を聴いてると、
何でも出来そうな気持ちになるんだ!
身体だって動かせそうな。
だから、コンサート中、
その実験をするんだ!
すると、
はるちゃんは気づいてないけど、
手がちゃんと動くんだよ!
これ、本当だから!

(制作日 2021.7.5(月))
※この物語はフィクションです。

今日のお話は、
これまでCHAGE&ASKAや
ASKAさんのコンサート会場で、
お見かけする人を、
ちょっと思い出して書いてみました。

昨夜、
あるドキュメントを見て、
その人は、
和田アキ子さんの音楽が好きで、
いつもお兄さんにかけてもらっていました。

音楽は、
あらゆる境を越えて、
多くの人に共感や癒しや慰めや・・・、
途轍(とてつ)もないエネルギーを
抱かせ、湧かせ、夢を見せてくれる存在。

コンサート会場で、
その喜びに揺れる身体を見る度に、
いつもこっそり泣いてしまいます。

本当に好きだから、
普通の人よりも外出が大変でも、
コンサートに来る、
その情熱。

その情熱を、
引き出してくれる音楽家は、
やっぱり凄いなって思う。


今日、参考にした曲は、
ASKA『birth』
birthとは、「生まれる・出生・誕生」

今回の主人公の「僕」が、
この曲のどこに共感し感動したのか?

人は生きながら、
何度も生まれ変われると、
もし願ったのならば、
「僕」が生まれ変わる場所は、
コンサートだったのかもしれません。

人の心が変わる時、
きっかけは音楽っていうことは、
これからも変わらない。

だから、
コンサートも新しい曲も、
絶えず音楽家は産み出す
宿命と使命を受けた人なのかもと、
時々思います。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲は
ASKA
『birth』
作詞 ASKA/松井五郎
作曲 ASKA
編曲 澤近泰輔
☆収録アルバム
『SCENE Ⅲ』
(2005.11.23発売)
~~~~~~~
『birth』の歌詞(一部)

誰だろう 僕を抱く人は
なんだろう 心満たすものは
月の光が 一枚の帯のように
約束に向かう夢を 僕は見ていた

愛が愛に抱かれたら 僕は僕をくりかえす
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