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【超ショートショート】(80)~作家、紅茶を待つ間~☆36度線-1995夏-☆

1995年夏、
日本は東京にある秘密結社〈36度線〉が、
ひっそりと組織された。

彼らの活動目的は、
実にシンプルである。

~テロを未然に防ぐこと~

組織するメンバーは、
全部で6名。

彼らの素性は、
表向きのほかに、
メンバー同士でも秘密。

そのため、メンバーの名前は、
全て仮名。

田中太郎・佐藤華子・加藤武
小野こまち・山田剛
そして、リーダーの渡辺宏。

一般的にテロと言えば、
凶悪なモノと考える。
だが、この秘密結社〈36度線〉が扱うテロとは、
それに限らず、
世の中に広く一時的に流行るものも、
捜索対象なのだ。

彼らの元に依頼が入る。

~若者を中心に流行り出す飲み物を調べろ!~

海外の映画が使用された紅茶のティーバッグ。
若者は、その映画人気のほかに、
それを飲む俳優たちに魅力され、
同じものが飲みたいと世界中からの問い合わせで、
ある企業が商品化。

爆発的な大ヒットとなっていた。

だが、その一方で、
世界中の若者の間で、
奇妙な症状を訴えるものが増えた。

病院で身体中、くまなく検査するも、
数値は正常。
でも、医者は患者を見ると、
明らかな病気の症状を顕している。
でも、検査では以上は見つからない。

〈36度線〉のメンバーの、
小野こまちは、元々研究員。
彼女は、問題のティーバッグの分析をした。

すると、
未知なる物質を発見する。

小野は、この物質に
〔ゴビ95〕と仮名を付けた。

〔ゴビ95〕の特徴は、
ティーバッグの乾燥した状態なら、
何の変化も起こさない。

だが、80度以上のお湯に浸すと、
乾燥した茶葉の中から、
〔ゴビ95〕を含むアントシアニンが出てくる。

この状況で、紅茶を飲んでも、
〔ゴビ95〕はアントシアニンの核の中に
閉じ込められているため、
身体には無害。

ただ、一度は身体に取り込むと、
アントシアニンの色素が、
身体の至るところに残る。

もしそれが胃の中なら、
胃酸がアントシアニンの核を破り、
〔ゴビ95〕を野放しにすることになる。

〔ゴビ95〕は、
胃酸に強いという性質があるため、
身体の中で自由の身になった彼らは、
健康な臓器に侵入を繰り返し、
何かしらの作用を起こす。

それが表向きに症状として顕れる。

〈36度線〉のメンバーで、
田中、佐藤、加藤が、
ティーバッグを製造する企業に潜入。

なぜ
〔ゴビ95〕を混入するのかの調査を開始。

そして、残りのメンバー山田は、
〔ゴビ95〕の特効薬の研究、製造を開始。


2004年、
〔ゴビ95〕の正体が判明する。
それは、
人工的に作られた人造ウイルスだった。

このウイルスに課せられたことは、
人の免疫細胞を徐々に機能不全にし、
今まである些細な風邪でも重篤化させることだった。

1995年当時、
このウイルスに苦しめられたのは、
若い世代だけだった。

何故か?

若い世代の寿命のコントロールにあった。

潜入操作をした結果、
田中がこう話している。

「このプロジェクトは、国が主導しています。」

(リーダーの渡辺)
「だが、この調査依頼は国からだぞ!」

「そこが狙いなんです!
僕らに監視させ、ウイルスの状況を把握する。
僕らはただ、治験の観察者といだけかとも知れない。」

(山田)
「でも、このウイルスには変異が見られない。
変異させ過ぎた成れの果てのウイルスは、
この数年を見ても、自然消滅してきている。
治療薬も完成しているから、
そのうち撲滅できるぞ!」

◇◇◇◇◇◇◇

「先生!紅茶が入りました。」

「あっ!ありがとう」

「それにしても、
今どこへ行かれてたんですか?」

「まぁ、ちょっと。」

「それより、新刊のストーリーはどうなりましたか?」

「あぁ~、今考えているところだよ!」

「締め切りまで、あと1ヶ月!
今度そこ、締め切りを守ってください!
いいですね!」

「あぁ~、あぁ~、わかったよ!
とにかく、今は一人にしてくれ!
言葉を忘れてしまうではないか!」


作家の1日は、こうした試作を、
紅茶が飲めるまでの時間、
または、
コーヒーのドリップが最後の一滴まで落ちる時間、
無駄にせずにしているのだろう。

今度の新刊は、
ミステリーを狙っているのか?
それとも、
サスペンスを狙っているのか?

結局、作家にもわからない。

ただ、書き上げた世界が、
未来に何を語るのかを、
楽しみにしているだけだった。


(制作日 2021.8.22(日))
※この物語は、フィクションです。

今日のお話は、
2004年8月25日発売
CHAGE&ASKA シングル『36度線 -1985夏-』
あと3日で発売から「17周年」になります。

この曲は、
紅茶を入れる所から始まります。

そして、
いろんな景色を旅します。

そんなふうに、
今日は書いてみました。

作家さんは、何かをしながら、
何かを見ながら、香りながら、
思い出しながら、
創作をすると。

この『36度線-1995夏-』のMusic Videoは、
お台場のヴィーナスフォートで撮影。
まもなくこの建物もなくなります。
そのうち、歴史を伝える映像となるはず。
ぜひ、一度は見てみてください。

YouTube
【CHAGE&ASKA Official Channel】
『36度線-1995夏-』Music Video
https://m.youtube.com/watch?v=eaY4-tHehBI

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲
CHAGE&ASKA
『36度線-1995夏-』
作詞作曲 ASKA
編曲 
(2004.8.25発売)

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