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【超ショートショート】(214)~ポストのしあわせ~☆ASKA『巴里にひとり』☆

元日に届いた年賀状。
出していなかった人から届いていた。

お礼に急いで書かれたお正月の年賀状が、
今日も住宅街の片隅にたたずむ赤いポストに
たくさん集まってた。

集配に来るいつものおじさんは、
お正月休みで、代わりに、
若いバイトのお兄ちゃんがやって来た。

小さな女の子が、
ポストにやって来た時がある。

女の子は、いつも、
ポストの口まで、
お母さんやお父さんに抱っこされて、
手紙やハガキを出していた。

「そう言えば、毎年の暮れには、
女の子は田舎のおばあちゃん宛に
年賀状を出しに来るはず」
とポストは思った。

ポストは知らないが、
風の噂では女の子のおばあちゃんが、
年末に体調を崩し入院。
女の子はずっとおばあちゃんと
一緒にお正月過ぎまでいた。
そのため年賀状は、
女の子が郵便局のお姉さんになって病室に届けた。

それから、しばらく、
女の子は手紙を持ってポストに通うようになった。

集配のいつものおじさんが来たとき、
ポストはおじさんに女の子の事情は話し、
女の子の手紙の宛先を教えてもらう。

おばあちゃん宛だった。
女の子はおばあちゃんの元気付けるために、
お見舞いの手紙を出していた。

ポストは、手紙やハガキを食べるけど、
その内容も宛先も自分では読めなかった。

でも、
ポストは、
みんなが手紙やハガキをポストに入れた時、
とっても安心した顔になるのが好きだという。

ただひとり、
雨の日も風の日も、
暑い日も寒い日も、どんな日も、
寂しく街の片隅に立っているようだけど、
みんな、僕を頼りに、
会いに来てくれるのが嬉しい。

もう何十年も、
そんなしあわせな出会いを続けてきた。

また明日も、
誰かが僕を頼りに便りを
食べさせに来てくれるのを、
星降る夜から、
口を開けて待っている。

(制作日 2022.1.3(月))
※この物語はフィクションです。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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書いてから思い付いた曲
ASKA
『巴里にひとり』
作詞 G.Sinoue
作曲 G.Costa
訳詞 山上路夫
※ASKAさんがカバー曲
☆収録アルバム
ASKA カバー曲アルバム
『僕にできるのかこと~いま歌うシリーズ』
(2013.3.27発売)
※東日本大震災復興支援アルバム







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