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ユーザー価値とビジネス価値の関係性

こんにちは。プロダクトマネージャーのひまらつです。

プロダクトを考える上で重要な要素に「ユーザー価値」と「ビジネス価値」があります。これらの関係性について考えてみたので、自分の整理をまとめてみます。

プロダクトマネージャーの仕事は何か

以前に別の note で書きましたが、プロダクトマネージャーの仕事は「プロダクトを成功に導くこと」です。そしてプロダクトの成功とは「ユーザー価値」「事業収益」「ビジョン」の3つを達成することです。

3つの円の重なりの最大化を目指す
プロダクトマネージャー0.5年目の教科書 より)

これらの要素のなかで、ビジョンだけは少し毛色が違います。長期的な方向性を示しておりユーザー価値や事業価値のように短期では測れません。
インターネットを見ると、ビジョンは一つ上の概念にして、以下の図のように表現されていることが多いようです。

ユーザー価値とビジネス価値をバランスよくのばし、ビジョンを満たす
(※ビジネス価値 = 事業収益)

ユーザー価値とビジネス価値をバランスしながらサービスを成長させ、ビジョンの達成へ向かうことが表現されています。
今回はこの「バランスしながらサービスを成長させる」を深く考えてみたいと思います。

売り上げは課題解決の対価

バランスの前に、まずはユーザー価値とビジネス価値の関係を考えてみます。
名著「プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける」の中では、「まずユーザーに価値を提供する、その対価として売り上げが得られる」と書かれています。

ユーザーに価値を提供した分だけ対価を得られる

ユーザーに価値を提供した分だけ売り上げがもらえるという整理です。では、このユーザー価値はどう生まれるのでしょうか?

課題と解決策の重なりが「価値」

ユーザーは課題を抱えていて、それを解決するためにプロダクトを使います。そして、プロダクトが解決できた課題の量が価値になります(上記の円が重なる部分)。
ユーザーの課題を的確に捉え、それをたくさん解決できるほどユーザー価値はあがり、売り上げも増えていく流れです。

価値が生まれてない例

価値が生めなかった例も見てみましょう。
左の「見当はずれ」では、ユーザーの課題とは関係ないものをリリースしています。ユーザーの悩みは消えてないので、このサービスには対価は支払われません。

右の「too much」はどうでしょうか。こちらは少し重なる部分はありますが、課題に対して解決策が大きすぎます。リリースした機能は立派かもしれませんが、ユーザーの課題とは関係ない作り込みになるため、生み出す価値は小さいでしょう。

これは極端な例ですが、実際の現場でもこういった失敗をやってしまうことがあります。ユーザーを勘違いしていたり、自分の思い込みを強く信じてしまったり。できるだけバイアスを除き、ユーザーを軸に考えることで失敗を減らせると思っています。

ここで紹介した価値の話は馬田さんが書かれた本「解像度を上げる」に教わった考え方です。それ以外のパートもすべて面白いので、未読の方はぜひ読んでみてください。

ユーザー価値とビジネス価値の関係

話は戻ります。ユーザー価値とビジネス価値の関係についてです。
ここまでの話で、ユーザー価値とビジネス価値は天秤というより、相互に関係してそうなことがわかりました。それを踏まえて以下のように表現してみます。

ユーザー価値とビジネス価値の関係を改めて考える

ユーザー価値があり、その内側に一回り小さい円としてビジネス価値があります。ビジネス価値が一回り小さいのは、「ユーザー価値を与える → 対価としてビジネス価値をもらう」の順なので、1ステップ遅れることを表現しています。
「ユーザー価値とビジネス価値のバランス」と表現するときの「バランス」とは、この2つの円の比率のことではないでしょうか。

2つの価値のバランスを欠いた例

バランスを欠いた例を挙げてみます。
左の「慈善事業」は、ユーザー価値に対してビジネス価値が極端に少ない状態です。ユーザーは無料で便利なものを使えてハッピーですが、売り上げが追いついていません。この状態が続くと事業としては立ち行かなくなり、最終的にはユーザーもサービス提供者も不幸になります。

右の「誇大広告」は逆で、ユーザー価値を大きく上回るビジネス価値を享受しています。まだプロダクトが未熟なのに広告で無理やり伸ばすとか、そういった例が当たるでしょうか。短期的には順調に見えるかもしれませんが、ユーザーの期待に応えられない場面が増えていき、長期的には苦しくなるでしょう。

ユーザー価値を高めてビジネス価値を牽引する

ユーザー価値を拡大し、ビジネス価値の円を引っ張る

私の考える良い方向性は、ユーザー価値を伸ばし、それに引っ張られる形でビジネス価値が伸びることです。
そのためにはユーザー価値を着実に伸ばす必要があり、ビジネス価値がついてくるようにプライシングを練ることも必要です。一筋縄ではいきませんが、追い求める方向はこれなのかなと思っています。

Product-Led Growth(PLG)との関係性

ところで、PLGという言葉はご存知でしょうか。プロダクトの成長戦略の1つで、ZoomやSlackなどがPLGで伸びた企業と言われています。

PLGは以下の特徴を持ちます。

  • フリーミアム:最初は無料で使え、何らかの条件を超えると有料になる

  • バイラル:人から人へ、クチコミでユーザーが広がる

営業担当がセールスをするのではなく、個人のユーザーにまず気に入ってもらって広げるという性質で、ZoomやSlackのように知り合いと使うと効果が増大するプロダクトでは強力な戦略です。エンドユーザーが力を持つ今の時代にとても馴染む方法だと思います。

TwilioはPLGという名称が生まれるより前からPLG的な方法で成長してきた会社ですが、記事の中で以下のように言っています。

"We love developers, and it’s a long game for us. If you don’t ever spend a penny on Twilio, but you’re a successful developer, we consider that a win.”
And those developers who use Twilio for free and see a lot of value from it, but don’t or can’t pay at the moment? They might move to a new role, or a new company, and then they’ll commit to paying.

(日本語訳)
「私たちは開発者を愛していますし、長い目で見ています。もしあなたがTwilioに1円も使わず、開発者として成功したなら、私たちはそれを勝利だと考えています。」
Twilioを無料で使っていてそこから多くの価値を見出しているが、今はお金を払わない、あるいは払えないという開発者たちはどうでしょうか?彼らは新しい役割や新しい会社に移って、それからお金を払うかもしれません。

How Twilio Does Product-Led Revenue より
(日本語訳は筆者)

目先の収益化よりも、ユーザー価値を追求することで長期的なリターンを信じているポリシーが紹介されています。
「ひたすらユーザー価値を高めましょう」はビジネス価値を無視するということではありません。最大化されたユーザー価値が、いずれビジネス価値を牽引してくれるという長期的な期待があるのです。

私がPdMをしているサービスもPLGです。「ユーザー価値がビジネス価値を牽引する」というのは、特にPLG戦略にはマッチしそうですね。

おわりに

ユーザー価値とビジネス価値の関係について色々と考えてみました。ユーザー価値はどう生まれるのか、それがどうビジネス価値につながるのか、気になっていた内容を整理できました。

「ユーザーファースト」という言葉は昔からお気に入りでしたが、PdMになってからは守備範囲が広がり捉え方に迷う場面もありました。今回の整理で改めてユーザー価値の重要性がわかった気がします。

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